非職業的技師の覚え書き

JK1EJPの技術的検討事項を中心に記録を残します。

室内ロングワイヤーアンテナはSWR1.0の夢を見るか(6)

2023年2月より、室内LWアンテナx10Wの性能確認のための交信を週末に実施しています。前回、国内CW交信の実績をまとめました。今回は、DX CW交信の約5か月間の実績をまとめます。

DX交信実績

室内LWアンテナx10Wにより、下記の32エンティティと6月までに交信できました。電子QSL(LoTW)が得られているのは26エンティティです。

室内LWアンテナに強く入感するコンテストステーションを中心に交信できました。今後は新しいエンティティのためにベアフット局(裸足局?=リニアアンプ無し=それでも100W!)と交信する必要が増え、EUを除く新エンティティを得ることが徐々に難しくなって行くと予想されます。EUは国が多く、局所的なパスが開ける毎に異なるエンティティとつながる印象です。そこが599BK方式でも、電波の不思議を感じさせる面白さです。サイクル25のピークに向かう今後数年でDXCC100に到達できるでしょうか・・・。

CQ WPX到達度

LoTWのCQ WPX Accountの集計が分かり易いため、下記に示します。左のバンド別の集計で、40mバンドと30mバンドは全てJA局との交信によるプリフィックス数です。20m以下のバンドはJA局およびDX局との交信が混在したプリフィックス数です。

JA局のプリフィックス数が多い利点を生かして、DXCC100到達よりもCQ WPX300到達の方が速いかもしれません。

WAC到達度

6大陸(AS、OC、EU、AF、NA、SA)と交信すると得られるWAC (Worked All Continents)アワードを、室内LWアンテナx10Wの最初の目標にしていました。AN(南極)が要件に入っていないため、達成の可能性はあると考えていました。

お膝元のAS(亜州)と接するOC(大洋州)、NA(北米)、EU(欧州)は、DXコンテスト参加により比較的容易に交信できました。課題はAF(阿州)とSA(南米)でした。上記CQ WPX Account集計右側が大陸別プリフィックス数になります。最後まで残ると予想していたAF(阿州)は「僥倖」があり、1局だけですがConfirmedできました。残るはSA(南米)となりました。

AF僥倖の経緯は以下の通りです。コンテストに参加しても、室内LWアンテナの耳にAFは一向に聞こえてきませんでした。WACは無理か・・・と考え始めたある日、9J(Zambia)が強く入感しました。Zambiaに行ったことはありませんが地誌を調べたことがあったため、HamLogのZambiaヒットで直ぐにAFのエンティティであることに気付きました。アフリカ大陸南方中央に位置する海岸線を持たない国です。地誌を調べた思い入れもあり是非交信したいと思ったのですが、世界中から呼ばれるため、室内LWアンテナから出て地球を半周する10Wの微弱電波に順番が回ってくることはありませんでした。

良いコンディションが続いていたのでしょうか・・・、日を経ずしてCT9(Madeira Is.)が入感しました。プリフィックスから最初はPortugal(EU)かと思ったのですが、調べてみるとPortugal自治州のMadeira Is.はAF大陸に属する別エンティティでした。日本からの大圏地図によるとMadeira Is.はPortugalの先の大西洋上に位置しますが、緯度はモロッコカサブランカ辺りと同じになるようです。アフリカど真ん中のZambiaとは異なりますが、AFには変わりありません。

Portugalとも交信実績が無かったためEUのCTであったとしても交信したいところですが、AFのCT9ならWAC達成のために是非交信したいエンティティです。しかし、Madeira Is.からはEUがローカルで、障壁のない大西洋の向こうはNA東海岸です。CT9も世界中から呼ばれるため、Zambiaと同じく順番が回ってくることはないかな・・・と諦めかけていました。

ここからが僥倖です。JAが数局交信に成功したところで地球の裏側のJAとパスが開けていることにCT9ABV局が気付いてくれたのでしょうか・・・、途中からフェードアウトするまでJA指定のCQになりました。最後のチャンスと呼び続けていると、遂にリターンコールがありました。ビックガンの陰に隠れながらも、室内LWアンテナx10Wの電波がちゃんと届いていたようです。しかし、このアンテナには耳の性能にも課題があり、サフィックスが正しいことはしっかりと聞き取れたのですが、プリフィックスの「K」がQSBに沈んでしまい、ちょっと確信が持てない終わり方になってしまいました。「まさかJK1がJA1にミスコピーされていないだろうなあ・・・」と悶々としていると、LoTWに吉報が届きました。

Club Logでも確認できました。最初はOQRS不可だったのですが、数日してOQRS受付可に変わりました。おそらく、OPの方が本国に戻られたのだと思います。LoTWでConfirmedできているのですが、1st AFの記念に下記のQSLカードをリクエストしました。AFを感じさせる配色です(個人的感想です)。コロナ禍対応のお二人の前に写っているのは、おそらく島の産業のひとつであるマデイラ・ワインかな・・・。

交信の記念にマデイラ諸島について調べてみると、良く知られた二人のポルトガル人の出身地であることが分かりました。一人は歴史上の人物のクリストファー・コロンブス、もう一人は現代のサッカー選手クリスティアーノ・ロナウドです。以前、ロナウドが実家に帰って家族と過ごしている様子をTVで放映していましたが、マデイラ諸島でロケしたのかもしれませんね。

追伸:WAC完成

7月に入ってからのIARU HF Contest(2023/7/8~9)にて、SA(南米)3局の信号を室内LWアンテナでも確認できました。WAC完成のための貴重な機会と捉えて、果敢無謀にパイルに参加しました。しかし、SAからの高速打鍵のCW信号は大陸伝搬特有の残響のようなQSBを伴い、リターンコールの確認に苦戦しました。こちらからの微弱CW信号では「E」がノイズに埋もれてしまい、「EJ」が「J」や「EO」にコピーされる例があるため気が抜けません。その際には「E-空白-J」を送信しますが、これで上手く行くケースと、却って混乱を招くケースがあり、未だベストプラクティスを見いだせていません。

それでも挑戦の甲斐あり、PV2(BRAZIL)との交信をLoTWでConfirmedできました。2月初旬に室内LWアンテナを架設してから、約5か月強の週末運用で達成できました。早速、LoTWのQSO Detailの画面コピーをExcelリストに張り付けて、JARLに代行申請を依頼しました。

このコンテストでは、6大陸の中で唯一AFの局のみ確認できませんでした。もし、AFの局とも交信できていればOne-Day WACも可能でしたが、やはりAFとの交信には「僥倖」が必要なようです。

AN(南極)

7大陸目のANはWACの要件に入っていませんが、昭和基地の8J1RLとも何時か交信したいところです。室内LWアンテナの指向から鬼門と思っていたVK(Australia)との交信実績も少しづつ伸びて、南東部のVK3(Victoria州)まで届きました。次の目標は南東海上のVK7(Tasmania州)、そしてその次はいよいよANです。

8J1RLの信号を聞いたことはありませんが、他国の南極基地(Vostok?)の信号が入感したことはありました。当然、パイルになっており交信は出来ませんでしたが、可能性がゼロでないことは確認できました。

DX記念局との交信

前回、国内の記念局との交信について言及しましたが、DXにも記念局があります。室内LWアンテナx10Wで交信可能なDX局は主にコンテストステーションになりますが、DX記念局とも交信の機会がありました。

上記CT9ABV局と交信できた日はEU方面のパスが開けていたようです。CT9ABV局交信と前後して深夜早朝にEUの記念局と続け様に交信することができました。なお、交信成功以上に失敗(交信未達)の記録も重要なため、手書きログを残しています。

国内のように記念局専用のプリフィックスは無いのですが、一風変わったコールサインが目印(耳印)です。特に、コールサインに2文字以上連続する数字が含まれている場合は、国内記念局と同じく、記念行事の開催年や経過年数(周年)を表す記念局のコールサインの可能性があるようです。

DB23SOWG

QRZ.comを調べると以下の情報がありました。

Special Event Call operated by DARC Team SES

Special Olympics World Games 2023 in Berlin,  SDOK: SOWG23

https://www.qrz.com/db/DB23SOWG

ドイツのJARLに相当するDARC(The Deutscher Amateur Radio Club e.V.)の記念局のようです。「オリンピックはパリのはずでは・・・」と短絡的に考えながら調べると、「2023 年スペシャルオリンピックス夏季世界大会」が2023年6月13日~25日にベルリンで開催されていたことを知りました。

JARL記念局と同様にQSLカードはビューロー経由で送って頂けるようです。

II1ITR

コールサインに「I」が3文字も含まれており、高速打鍵では目(耳)が回りそうです。QRZ.comを調べると以下の情報がありました。

After being “ON AIR” in 2013 and 2018, the “Red Tent Team – II1ITR” maintains its own identity and continues over the years to keep alive the memories of 95 years ago event, which has proved how significant radio and radio amateurs are.

The Award is established on the occasion of the “95th Anniversary of the Red Tent”.

https://www.qrz.com/db/II1ITR

イタリアのTEAM - LA TENDA ROSSA(赤テントチーム?)が、ある出来事の95周年記念局を運用しているようですが、これだけでは詳細は不明です。95年前にradio amateursの重要性を証明した何があったのでしょうか?

簡単には検索できませんでしたが、wikipediaの「ウンベルト・ノビレ」のページに95年前の出来事の情報がありました。

1928年、ファシスト政権からの国家援助によって新たな飛行船を設計、完成した飛行船イタリア号で二度目の北極探検を計画する。

・・・

5月25日、「イタリア」号は北東島までわずか30kmを切った地点で海氷に墜落する (スヴァールバル諸島の東端)。

・・・

16名の隊員と共に北極点到達という大きな望みを持って出発したノビレだったが、しかし極点到達後の事故はいち早く世界中に配信され、北半球中の救助隊が動き始める。生存者たちは飛行船の無線機でSOSを発信、さらにアニリンでテントを赤く染めて目印とし、救助を待った。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%83%B3%E3%83%99%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%8E%E3%83%93%E3%83%AC

救助隊への目印となるように、アニリンでテントを赤く染めたことが「赤テント」の由来であることが分かりました。また、無線機でSOSを発信したことが墜落の一報につながったと推定されます。radio amateursの役割の記述はありませんでしたが、いち早くSOSを受信したのではないかと想像されます。

wikipediaの「イタリア (飛行船)」のページに、ロシアのアマチュア無線家の記述がありました。

 5月25日 - イタリア号、流氷上に墜落。#ビアージ通信士が無線機を掘り起こし、ラジオマストを立ててSOS送信を開始。
5月31日 - イタリア号生存者との無線の接触が中断。原因は気象状況に加え、無線監視の維持および定時送信の継続を怠った母船「#チッタ・ディ・ミラノ」号の怠慢であった。#マルムグレン、#マリアーノ、#ザッピの3名が救援を要請するため、徒歩で出発。
6月3日 - イタリア号のSOS信号を、ロシアのVokhma村のアマチュア無線家ニコライ・シュミットが傍受[7]。
6月5日 - ノルウェーパイロットが初めてイタリア号捜索飛行を実施。翌週にはノルウェースウェーデンフィンランド、ロシア、イタリアのパイロットも捜索救難飛行を開始。
6月8日 - 流氷上のイタリア号生存者とイタリア捜索隊の乗る#チッタ・ディ・ミラノの無線接触が確立。捜索活動継続。

・・・

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%82%BF%E3%83%AA%E3%82%A2_(%E9%A3%9B%E8%A1%8C%E8%88%B9)#CITEREFSolomon,_Cala-Lazar2008

引用地図の3回目の飛行経路(北極点到達⇒遭難)が、eQSLカード右中央下の地図と同じであることが分かります。

このeQSLはhamaward.cloudからダウンロードできました。WRTC 2022開催記念局のeQSL配信と同じ仕組みです。イタリアではhamaward.cloudが一般的なのでしょうか。なお、WRTC 2022開催記念局は1ポイントでもAward(参加賞)を発行してくれましたが、赤テント95周年記念局はAwardに30ポイント必要であり、1ポイントでは遠く届きませんでした。

一般的にeQSLが紙QSLに及ばない点として品質(解像度)を挙げることができますが、hamaward.cloudのeQSLは十分な品質を備えています。加えて、二次元バーコードによる交信証明機能も備えています。双方向のQSL交換システムではなく、1-Way配信システムだから成立しているものと思います。

95年前の飛行船「イタリア」号墜落事故は映画になっていました。

通販A社にレンタルアップの中古DVDが出品されていました。この記念局交信も何かの縁と思い、クリックしてしまいました。邦題名には「SOS」が付されていますが、果たしてロシアVokhma村のアマチュア無線家ニコライ・シュミットは登場するでしょうか・・・。

OL750HOL

プリフィックスの「OL」がサフィックスの末尾にも山びこのように再出現し、聞き間違い?を疑ってしまうコールサインでした。750 years Holysov town(ホリショフ市創立750周年)記念局でした。

プリフィックスの「OL」はチェコのエンティティを表し、サフィックスの「HOL」はHolysovの頭3文字を表しています。なお、Holysov市の公式HomeページではTownではなくCityとなっています。

www.mestoholysov.cz

750年前の1273 年は、日本では鎌倉時代中期で翌年が蒙古襲来です。調べてみると、ホリショフが言及された最初の下記文書が起源の根拠になっているようです。

ホリショフについて最初に文書で言及されたのは、1273 年の教皇グレゴリウス 10 世の証書です。

https://en.wikipedia.org/wiki/Hol%C3%BD%C5%A1ov

「証書」が何を指すのかまではwikipediaでは分かりませんでしたが、何らかの権益の証書ではないかと推測します。上記Holysov市の公式Homeページに具体的に説明してありました。

1273年5月23日、教皇グレゴリウス 10 世の特権が文書化され、チョテショフ修道院の全土地所有権の範囲が決定されました。

https://www.mestoholysov.cz/750-let-vzniku-mesta-holysova/ms-11930/p1=11930

その他DX局との交信

室内LWアンテナx10Wで交信可能なDX局は、主にコンテストステーション、次いでクラブ局が運用する記念局になります。その他にペディション局との交信例も若干ありますので、その例を最後に付け加えます。

4W6RU

RUDXT(Russian DXpedition Team)による東ティモール(Timor Leste)からのQRVです。東ティモールは「世界で最も若い独立国家の一つ」ということで、いつもUP指定のパイルになっていました。

室内LWアンテナx10Wの性能評価ということで、聞こえてきたら数回トライしてみるを繰り返していたところ、ある日15m CWでリターンコールがありました。

既に7万弱のQSO数に至っている模様で、パイルも小規模になっていたのかもしれません。7万QSOの一角に入ることができました。FT8のQSO数が多いようですが、CWのQSO数を知りたいところです。

V31XX

30m CWにV31XXのCQが聞こえてきました。HamlogにV31XXを入力するとBelizeと出てきますが、Vで始まるエンティティは世界中に遍在しているため、何処のエンティティなのか地理的位置は不詳でした。信号の強度から、東アジアかオセアニアかと思ってしまった次第です。UP指定なのでパイルになるエンティティということは分かりました。

VK9DX(Norfolk Is.)の時と状況は似ており、次々とピックアップされて行きますが、スコープ上にパイルの山は見えません。これは、ハイパワー局がまだ参加していない初期状態であることを示していると思います。

V31XXがどの周波数をピックアップしているか分からないため、適当(適切に当たりを付けての意)にSplit設定をして呼びます。すると、プリフィックスサフィックスの最初の「E」までコピーされ、再送要求がありました。「E-空白-J」作戦で再送したところ、無事にピックアップしてもらえました。RSTは579のリアル?レポートをもらいました。室内LWアンテナx10Wでも交信に必要な強度の電波は出ているようです。

その後にDXクラスターにアップされ、スコープ上にパイルの山が出来ました。こうなると599オーバのハイパワー局に埋もれて、室内LWアンテナx10Wでは交信不可になります。

さて、無事に交信が終了したためBelize学習タイムです。Belizeは思いも寄らず、メキシコの向こうのカリブ海に面した中南米の国でした。(WACではNAです。)

北米大陸を地表反射で横断してくると思われるのに、特有のQSBの無い聞き取りやすい信号でした。QSLカードの写真を見るとスーパーステーションであることが分かります。(QSLはダイレクトのみとのこと。Green Stampを探さねば。)

機会を捉えて相手の設備に助けられれば、室内LWアンテナx10WでもDX交信は可能であるというのが中間結論です。

このスーパーステーションは下記のお値段で売りに出されているようです。後継者が見つかると良いですね。

v31xx.com

室内ロングワイヤーアンテナはSWR1.0の夢を見るか(5)

2023年2月より、室内LWアンテナx10Wの性能確認のための交信を週末に実施しています。国内CW交信の約5か月間の実績をまとめます。DXの実績は次回まとめます。

WAJA到達度

WAJA(Worked All Japan prefectures Award)アワードの到達度を下記の日本地図に示します。今回もオリジナルの日本地図が作成できるジェネレイター」を利用させて頂きました。緑がConfirmed(QSL入手済み)、青がWorked(交信済み)、赤が未交信の都道府県です。入手済みのQSLは全て電子QSL(hQSL、eQSL、LoTW)です。

難しいと感じていた富山県がConfirmedでき、WAJA完成か?と思ってリストアップしてみると、香川県が未交信でした。秋田県三重県京都府とのQSO数も少なく、Confirmedが遅れています。

香川県とのQSOは7月開催のオールJA5コンテストに期待します。秋田県はオール秋田コンテストが9月開催予定と思いますので、年内のConfirmedに期待が残ります。しかし、京都府は京都コンテストが来年2月開催予定、三重県はオール三重33コンテストが来年5月開催予定と近々にはコンテストの開催は無いようです。移動局の出現とEスポの発生を願ってワッチを続けます。

WAJAの他、JCC/JCG/AJAの集計のためにも、国内アワード到達度集計ソフトを作る必要がありそうです。

POTA達成度

POTAハントには苦戦しています。POTA AWARDは、まだ、Bronze Hunter(10公園ハント)です。次のSilver Hunter(20公園ハント)には2公園足りていません。

室内LW+ATUによって、バンドは40mから6mまでフル活用しています。POTAのスポット情報を見て聞きに行っても聞こえないことが多いため、バンド間をQSYしながらワッチして運よくアクティベーション局が見つかったらハントするという効率の悪いスタイルです。

県別の内訳を下記に示します。144公園を擁する大票田?の東京に対して僅かに1/144公園しかハント出来ていないことが響いているように思います。

東京は都立公園が多くあるのに対して、QTHの神奈川県は政令指定都市の市立公園(横浜市立、川崎市立、相模原市立)が多く、県立公園が少ないためにPOTAの対象が34公園に留まっていることが響いているのではないかと勘繰っています。純粋に室内LWアンテナx10Wの地力が小さいことが理由かもしれませんが・・・。

以前、JARL中央局との40mバンドの交信で苦労した話を書きましたが、都内方面に向けては近隣の建物が直接伝搬波の障壁になっているのではないかと推測しています。障壁を飛び越えるために、これからのEスポ発生に期待したいところです。

例えば、下図は台風とそれに連なる前線が日本列島を通過した6月3日の天気図です。天気図との関係は不明ですが、この日、日が射した関東上空には強力なEスポが発生し、6mバンドで西日本や中国の局と交信することができました。POTAも埼玉県の1公園を40mバンドでハント出来ました。この日は近隣建物の障壁を飛び越えることができたと思います。

翌日、「電波の日」特別運用を休日に繰り越したJARL中央局と15mバンドで交信できました。交信に苦労した前回の40mバンドと異なり、S9+10dBで強力に入感し容易に交信することができました。イオノグラフの確認を忘れましたが、その日もEスポが発生していたのではないかと推測しています。

記念局との交信

室内LWアンテナx10Wの性能確認とは直接の関係はありませんが、記念局との交信も楽しみの1つです。

記念局の定義

総務省のホームページによると、記念局とは以下の定義になるようです。

いわゆる記念局※は、行事等にふさわしい特別な呼出符号(コールサイン)が指定されたアマチュア局を運用することにより、行事等を記念すること及びその意義を広めることができるものであって、かつ、アマチュア無線に対する理解の増進、アマチュア無線の健全な普及、発展等に寄与できる相当の公共性を有するものです。
※行事等の開催に伴い臨時かつ一時の目的のために運用するアマチュア局

https://www.tele.soumu.go.jp/j/others/amateur/confirmation/memorial/

記念局との交信はコールサイン以外の情報は得られない599BK方式で終了し、その「行事等」の情報を記した紙QSLカードが届くのはかなり先(1年先?)になってしまいます。そこで、交信した後にその対象になった「行事等」の情報をWeb等で調べることが記念局交信の楽しみ方になります。

室内LWアンテナx10Wで交信できた記念局の例を幾つかピックアップします。

8N1789FM

湘南ビーチFM開局30周年記念局です。サフィックスの「789FM」は、逗子・葉山コミュニティFMラジオ「湘南ビーチFM(JOZZ3AB-FM)」の周波数789MHzを表しています。このブログ記事は、湘南ビーチFMインターネットラジオを聞きながら書いています。

記念アワードの発行もあり、サフィックスの構成要素から、7 賞(3 バンド)、8 賞(3 モード)、9 賞(3 運用ポイント)、FM 賞(三浦半島 30 局)の3つの賞があります。現在、HFのCWにしか出ていない当局が狙えるのは7賞もしくは9賞になります。東京方面と異なり三浦半島方面に建物障壁はないため、6月に9 賞(横須賀市、逗子市、三浦市)を「10MHz、CW」特記にて達成することができました。7 賞(3 バンド:7MHz、10MHz、14/18/21/24/28/50MHz?)も射程内です。

記念アワード発行履歴は公開されています。やはり、9 賞(3 運用ポイント)の獲得者が最多のようです。当局は28番目、「10MHz、CW」特記では2人目でした。

記念アワード獲得を機会に、湘南ビーチFMの開業時の出力が0.25W(現在は20Wに増力)であったことを知りました。放送局と言えばkW出力と思っていただけに驚きです。20Wでも湘南海岸全域をカバーできるということですね。

逆に、アマチュア無線は優遇されているということかもしれません。室内LWアンテナx10Wでもアフリカまで届く(次回報告)のですから、上(kW局)ばかり見ないで電波障害に気を付けながら性能確認を続けたいと思います。

8j7WICHI

何を記念した局なのか予想の付かないコールサインでした。記念局の由来を調べると、サフィックス「WICHI」は鳥潟右一博士の名前から取られていることを知りました。「無線の父・鳥潟右一没後100周年記念事業」の一環としての記念アマチュア無線局とのことでした。

博士の出身地である秋田県大館市の常設記念局ですが、主に運用されているのは武蔵野通研アマチュア無線クラブによると思われる移動局8j7WICHI/1です。秋田県との交信実績が少ない当局としては常設局とも是非交信したいところです。

「無線の父」という言葉で疑問が湧きました。『「タ」は夜明けの空を飛んだ/岩井 三四二 | 集英社 ― SHUEISHA ―』を読んで以来、無線の父は木村俊吉教授と思っていたからです。

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記念事業の一環として記念講演会が大館郷土博物館主催で開催されるとの情報を得て、疑問を解消すべくオンライン枠に申し込みました。

講演会を聞いての感想として、無線電信の父が木村俊吉教授、無線電話の父が鳥潟右一博士と勝手に解釈しています。

鳥潟右一博士が開発を主導した「TYK式無線電話機」は、検波に用いるコヒーラーこそ天然鉱石に置き換えていますが、連続した火花放電を発信源に用いて音声信号で変調するという驚きの構成です。「TYK式無線電話機」は真空管(の先祖)の勃興によって短命に終わりましたが、その真空管の国産を主導したのも鳥潟右一博士です。火花放電から真空管への時代の変遷がつながる講演内容でした。

講演録画は後日公開されるとのことでした。

 

室内ロングワイヤーアンテナはSWR1.0の夢を見るか(4)

日乗

自作リグ運用を目標にSDRを学び中ですが、サイクル25に間に合いそうにないため、サイクルピークに向けて市販リグ運用の機会を増やしています。CW技能の向上と室内LWアンテナの試験が当面の運用目標です。

太陽周期に連動してピーク時に運用し、ボトム時に技術を向上するサイクルが一般的な傾向となっているようです。個人的にもそのサイクルになりそうです。

Keith's SDRの動向

マイコン版SDRのKeiths' SDR(K7MDL版)の更新サイクルが速くてフォローが間に合わないため、PC版SDRのQuiskでSDRの基本を学び中です。IQバランス校正の自動化機能実装で足踏みをしています。

Keiths' SDRの代表的なRFフロントエンドのRS-HFIQにはCWモードのハードウェアサポートがないため、IQ信号でCW送信波を生成する必要があります。そのためIQバランスの影響が気になります。

Keiths' SDRのフォーラムのチェックは続けています。CW信号生成ライブラリがBob Larkin OMによってKeiths' SDRのベースになっているOpenAudio_ArduinoLibraryに実装され公開されました。radioCWModulator_F32という名称です。コードを見たところ、このライブラリは文字列を受け取ってCWオーディオ信号のガウスフィルタ適用Sin波を生成するもののようです。キーパッドやCAT接続によるPCキーイングで必要になるライブラリです。IQ信号生成前の処理ライブラリですが、Keiths' SDRに取り込まれるかどうかチェックを続けたいと思います。

DXによる室内LWアンテナの性能確認(つづき)

最近のコンデションが今一つの15mバンドを聞いていたところ、弱いCW信号が浮かび上がってきました。40wpm以上と思われる超高速のCW信号です。この速度になると短点の分離は不可能で、短点変調オーディオ信号の長さを感じ取るしかありません。

CQ DE VK9DXと打っているような気がしました。続けてUP1と打っています。オーストラリアの局がなぜパイルを見越したUP指定をCQに付けているのか疑問を感じつつ、DXCCリストを調べるとVK9はオーストラリア近くの6つの島々に個別のエンティティー(VK9C、VK9L、VK9M、VK9N、VK9W、VK9X)として割り当てられていることが分かりました。しかし、VK9Dのプリフィックスはリストに載っていません。

QRZ.comで調べると、VK9DXはノーフォーク島(VK9N)の局でした。

プリフィックスの謎はCQ誌2023年2月号で確認が取れました。VK2DX(シドニー)の局長さんがノーフォーク島に転居してVK9DXのコールサインで運用しているとのこと。日本とは異なり、希望したコールサインがもらえるようです。ノーフォーク島について調べると、イギリス海外領土編入(1856年)、オーストラリア領編入(1914年)、自治政府廃止(2016年)の歴史的経緯を辿っており、オーストラリアからは自由に転居できるエンティティーになっているようです。

そうこうしている中にパイルになって来たようです。こちらからはUP1周波数で呼んでいる局の信号は何も聞こえませんが、次々とピックアップされて行きます。パイルの規模が分からないことを幸いとして、怖気づくことなく急いでIC-705のSplit設定をして呼んでみました。CQに早く気付いたことが良かったのか、数回目にピックアップされました。コールサインの再送要求があったため、正確にコピーしてもらえたのか不安でしたが、翌日にはClub Logで確認が取れました。室内LWアンテナと10Wでも、機会に恵まれればパイルに飛び込むことも一概に無益とは言えないことが分かりました。

海底地形を参照すると、ノーフォーク島ニューカレドニアからニュージーランドに至るノーフォーク海嶺の上にあります。ニューカレドニアとは既に交信実績があったため、南方に交信実績距離が伸びたことになります。南方面が室内LWアンテナの死角にはなっていないことが再確認できました。次の目標はニュージーランド、そして南極です。果たして交信できる日は来るのでしょうか。

ALL JAコンテストによる室内LWアンテナの性能確認

目標

DXコンテスト(JIDX-CW、CQMM DX)に続いて、ALL JAコンテスト(4/29 - 4/30)に参加して室内LWアンテナの性能確認を行いました。

当初の目標は唯一交信できていない9エリア局との交信でしたが、ALL JAコンテストの前に9エリアの2局と立て続けに交信でき、室内LWアンテナのAJDは完成してしまいました。そこで、以下を目標としました。

  1. 80mおよび6mバンドでのCW交信実績
  2. One Day AJD

結果

前者は達成できましたが、後者は達成できませんでした。太陽の27日短周期ではボトムに近く、コンディションは良くありませんでした。Eスポの発生もなかったと思います。(他の方のブログを読むと、Eスポが発生していたようです。当局の電波がEスポ層に届かなかっただけのようです。)

自己採点結果を示します。交信局数は182局(重複1局あり)、マルチ(県数と北海道地域数)は71でした。

傾向としては、7MHzバンドでマルチを稼ぎ、50MHzバンドで交信局数を稼いだように見えます。コンディションが良くないときに7MHzバンドでマルチを稼ぐのは順当ですが、スペクトルスコープ上で霧状に見える広域都市ノイズが当局の環境では発生しており、運用し易いバンドではありません。

Eスポが発生していないのに50MHzバンドで交信局数を稼げたのは予想外でした。なにしろ普段は静まり返っており、50MHzバンドでCW信号を聞いたのはこの日が初めてでした。局数が多い1エリアの特典かもしれません。その代わりに1エリアには中間スキップによってHF帯の局数を稼げないというあい路もあり、7MHzマルチと50MHz局数の傾向が出たのは妥当な結果だったのかもしれません。

50MHzバンドにはQSBやノイズが無いため、CQランニング局の信号が弱くても、さらに弱くなるであろう当局の呼び回り信号を取ってもらえる安心感があります。コールサインの再送を要求されることは、CQ連呼中に突然呼ばれてびっくりした時?以外は無かったように思います。

対称的なのは3.5MHzバンドです。6局と交信実績ができましたが、各局長さんが粘り強く拾ってくれた成果であり感謝します。再送要求100%で、しかも複数回の再送が必要でした。DXより難しかったという印象です。8mのLWアンテナから3.5MHzの電波は出てはいるが極めて微弱であり、QSBやノイズ下では符号を取ることが難しいレベルであると判定しました。SWR1.5以下でも3.5MHzバンドは実用的とは言えないと評価せざるを得ません。

詳細分析

時刻別のQSO数を下記に示します。夕食は弁当、朝食と昼食はパンにして、室内LWアンテナを架設してある居間のダイニングテーブルを臨時シャックとして占拠し、長期戦に備えました。

Rate graph of QSOs by time for the ALL JA contest.

時間帯による交信局数の顕著な増減は見られません。細かく見ると、コンテスト開始から翌日の早朝までは13~14局/Hrで推移しています。重複チェックに引っ掛かる比率が小さく、効率的に呼び回り交信ができていたためと思われます。一方、翌日の午後は重複チェックに引っ掛かる比率が大きくなり、10局/Hr程度に落ちています。ここでEスポが発生して新しいエリアが入感するようになれば交信局数が大きく伸びたと思いますが、Eスポの発生はありませんでした。コンテスト終了は21時でしたが、重複チェックに引っ掛かる比率が大幅に増えた20時で切り上げました。

バンド別のエリア交信数を下記に示します。

ALL JAコンテストの前に9エリア局との交信の難しさを感じていましたが、その経験がそのまま反映した結果となり、9エリア局を落としたためにOne Day AJDは完成しませんでした。今回、RBN等は参照しませんでした。狙いに行っても聞こえないことが多く、耳で探した方が良いと考えたためです。局数よりAJDを狙うなら、スポット周波数に張ってQSBのピークを待った方が良いかもしれません。次回の宿題です。

都道府県別の交信実績を調べた結果を下記に示します。「オリジナルの日本地図が作成できるジェネレイター」を利用させて頂きました。緑が交信実績あり、赤が交信実績なしの都道府県です。

Prefectures where QSOs were made in the ALL JA contest.

コンディションが良くないと思った割には、中間スキップを除いて日本全国を網羅している印象です。北陸から中部を経て近畿に至る領域が綺麗に中間スキップになっている様子が分かります。奈良県が取れたのは幸運でした。島根県徳島県、鹿児島県は取りこぼしと思います。

50MHzでは1エリアの他に、2エリア(静岡県伊豆移動と推定)と7エリア(福島県白河移動と推定)の各1局と交信できました。両局とも移動局であり、悪天候の下、標高の高いところに移動してくれたおかげと思います。

IC-705のCAT通信遮断の状況

コンテスト期間中、3.5MHz、7MHz、21MHzではCAT通信遮断は発生しませんでした。28MHzは日によって状況が変わりますが、コンテスト期間中は通信遮断が100%発生しました。50MHzは今回初めて評価できましたが、同じく通信遮断が100%発生しました。

CAT通信が遮断するとバンド切換がコンテストロガー(CTESTWIN)に自動で反映されなくなるため、注意して手動で切換える必要があります。しかし、重複チェックを実行すると切換前のバンドに戻ってしまう現象が発生し、重複チェックを一度失敗しました。これが、交信回数183、ポイント182の理由です。

ハイバンドに対してコアの数を増やす手しかないのですが、50MHzはコンテストの時にしか運用できない状況のため評価が進みません。

室内ロングワイヤーアンテナはSWR1.0の夢を見るか(3)

日乗

今年の猿橋賞(第一線で活躍する女性科学者を表彰する賞)の発表があったことを新聞で知りました。アマチュア無線家にも関係のある研究業績が対象になっていました。

受賞者は武蔵野美術大学の「宇宙気候学」を専門とする宮原ひろ子教授で、対象の研究業績は「太陽活動の変動のメカニズムおよびその気候への影響に関する研究」でした。その内容は(門外漢の私にとっては)驚くべきものでした。

太陽の活動サイクルは11年周期であり、今は記録を取り始めてから25回目のサイクル25のピークに向かっている・・・との認識を様々な情報ソースから得ていました。では、記録を取り始める前はどうだったのでしょうか? 宮原教授の研究業績はそれを明らかにしています。

猿橋賞のホームページの研究業績要旨によると、太陽活動は以下の因果関係によって放射性同位元素である炭素14を増減させるとのことです。

太陽活動 ⇒ 太陽磁場 ⇒ 宇宙線流入量 ⇒ 大気中反応 ⇒ 中性子 ⇒ 窒素吸収 ⇒ 炭素14

これを利用した研究業績の要旨を引用します。

このため植物や湖底の堆積物などに含まれる炭素14の量の測定から、過去の太陽活動の強弱を見積もることができる。宮原ひろ子氏は、長寿命の屋久杉などを使って、年輪を1枚ずつ剥がしてそこに含まれるごく微量の炭素14の量を測定することで、太陽活動の基本周期の長さが長期変動に伴ってどのように変化するのかを前例のない高い精度で復元することに成功した。

その結果は以下となっています。

17世紀から18世紀にかけて黒点がほとんど見られなかった時期にも、弱いながらも活動周期が存在し、その長さが14年程度に長くなっていたことを発見した。この太陽活動が不活発な時期は小氷期と呼ばれた寒冷期にあたる。

中世の温暖期の初期にあたる9世紀から10世紀には、太陽活動は非常に活発で、活動周期が9年程度に短くなっていたことも発見した。

太陽の活動サイクルは11年で固定ではなく、過去の実績では9年~14年程度の変動はあったということになります。まだ僅かに25回しか記録していないのですから、将来どうなるかは太陽のみぞ知るです。もし活動周期が変わったら、アマチュア無線家が一喜一憂するだけでは済まなく、気候に大きな影響があるものと思います。

宮原教授の下記寄稿は、17世紀(江戸時代初期?)のマウンダー極小期について解説しており、国立国会図書館デジタルコレクションで読むことができます。

宮原、「太陽活動に伴う宇宙線変動と気候変動」、プラズマ・核融合学会誌、vol. 90、No. 2 (2014-02-25)

学会誌以外には、例えば以下の書籍(DOJIN文庫) があります。読んでみたくなりました。

宮原著、「地球の変動はどこまで宇宙で解明できるか:太陽活動から読み解く地球の過去・現在・未来 」、化学同人 (2022/12/2)

IC-705通信遮断の対策

Wi-FiによってPCとIC-705をLAN接続しようと試みていますが、送信するとCAT/Audio通信が遮断される問題に悩まされています。コモンモード電流の対策は行いましたが、劇的な改善には至っていません。

以下、追加の対策を講じた覚え書きです。

アース接地

IC-705の小型筐体(おそらくアルミダイキャスト?)が電波を受信してGNDが変動する可能性を潰すために、保安アースを接地しました。

集合住宅の電気配線図は入手出来ていませんが、壁の3Pコンセントにアース端子もあることから躯体に落としたD種接地になっていると思います。

アース線がアンテナになることを防ぐために、クランプコアによってコモンモード電流対策も施しました。

Rig grounding.

結果は、改善も改悪もなく、無くても良いかな・・・という状況です。雷雨の時の保安上はあった方が良いと思いますが。

USB有線接続

無線と有線を切り分けるために、Wi-Fi LAN接続を一旦あきらめ、USB有線接続に切り換えました。

USBケーブルはHDD用に三重シールドケーブルまで市販されていることを確認しましたが、HDD用はUSB2.0 MicroBではなくUSB3.0 MicroB(USB 3.0に追加したSuperSpeed差動信号用の接点が横方向に拡張されている)コネクタになっているため、IC-705 には差し込めません。USB2.0 MicroBの最短15cmの二重シールドケーブルを購入しました。

下の写真にはコモンモード電流対策用のクランプコアが写っていませんが、この短い距離にもコアを2個嵌めました。

Shortest wired connection with 15cm double-shielded USB cable.

結果は、万全ではありませんが改善効果がありました。15m以下のバンドでは通信遮断が起こらなくなりました。しかし、依然として10mでは送信により百発百中で遮断します。他の12mおよび6mの各バンドは今後検証します。

シールド板の設営

上の写真から分かる通り、リグ(IC-705)とATU(AH-705)が同じダイニングテーブルに乗っており、距離が近過ぎるのではなかとの仮説を立てています。電波の強さは距離の二乗に反比例します。

AH-705はプラスチック筐体です。SNSの分解写真を参照しても、内部にシールド塗装は施されていないようです。附属ケーブルは5m2m長であることから、本来は5m程度離して使用することが想定されている(その状況で性能確認がされている)と思われます。

しかし、室内設置では取り回しの自由度は限られます。そこで、リグとATUの間にアルミ板(正確にはアルミニウムはくのレンジパネル)を設営しました。効果は今後評価します。

キーパッドの製作

コンテストでデータを集めて室内LWアンテナを評価していますが、ロガーソフトとリグを接続できないのは不便です。コンテストではQSBの間隙を突いた高速打鍵が必要になることもあるため、メモリーキーヤーの併用が必要になります。IC-705のタッチパネルのメモリーキーヤーは操作性が良いとは言えません。

そこで、物理的なキーパッドを製作しました。抵抗分圧回路の回路図はマニュアルに掲載されています。2チャンネルの電圧を各4種類に分圧して計8種類の状態を作り出す回路です。

部品は全て秋月で揃えました。72×47mmのユニバーサル基板に部品は全て乗りますが、部品配置には余裕がありません。VUJ Lab.さんのVLOGアマチュア無線 IC-705用外部キーパッドの製作」を参考にさせて頂き、部品購入前に慎重に検討しました。

72×47mmのユニバーサル基板の孔数は基板によって異なるようです。最多27×17孔(4隅はネジ穴で欠落)の基板を使用しました。タクトスイッチは出来るだけ多くの色と形状を集め、人間工学的に?押し間違いを防止するようにしました。パドルとキーパッドを並列接続するためには、3.5mmステレオジャックを2個搭載する必要があります。予め2個搭載の配置配線を計画しておく必要があります。下写真から黄色ボタンの上の2個の抵抗配置が少し窮屈になっていることが分かります。

Keypad for operating the memory keyer by means of physical buttons.

IC-705に接続しただけでは反応せず焦りました。メニューで外部キーパッドをON(有効化)にする必要がありました。エッジトリガーを検出してADCによる電圧分圧値読み取り関数に分岐させるかどうかをメニューフラグで決めているものと思います。パドルもキーパッドも正常動作しました。なお、パドルと同じくキーパッドも常に有効なため、画面にメモリーキーヤーを表示する必要はなくなり、スペクトルスコープ等で広く使えます。

DXコンテスト参加によるアンテナ性能の評価

前回のARRL DX CWコンテストでは、北米方面へのパスについて室内LWアンテナを評価しました。今回、JIDX-CWとCQMM DXの2つのコンテストに参加し、他のDX方面へのパスについて室内LWアンテナを評価しました。

View while participating in the DX contest; temporary radio shack on a dining room table.

当日の太陽黒点相対数の推定値を下記に引用します。JIDX-CWよりもCQMM DXの開催日の方が太陽黒点数は3倍程度多かったようです。

Estimated international sunspot number.

宅建物の影響を考えると、NA(北米)およびEU(欧州)方面のパスは開けていて、OC(大洋州)方面は死角になっている可能性が高いとの予測のもと参加しました。結果を以下にまとめます。

JIDX-CW

JIDX-CW(Japan Internatinoal DX Contest - CW)では、DX各局が日本にビームを向けてくれる特典があります。

時刻別のQSO数を下記に示します。合計66局、初日20局、二日目46局のDX局と交信できました。

Rate graph of QSOs by time for the JIDX-CW contest.

コンテストはUTC時刻の朝開始に合わせているため、JSTでは4月8日土曜16:00開始でした。当日は風雨が強く、外は嵐のような様相でしたが、室内LWアンテナは気象の影響を受けずに運用できることが利点の一つです。

一方、室内LWアンテナは架設する部屋を選び、ダイニングテーブルが宅内運用場所であるため、食事時に撤収する必要があることが欠点です。初日は21時過ぎまで粘り、夕食のために撤収しました。

陸別QSO数の内訳を下記にまとめます。室内LWアンテナで交信できた大陸は、NA(北米)19局、EU(欧州)11局、AS(亜州)26局、OC(大洋州)10局でした。交信実績が積み上がらなかった大陸は、SA(南米)、AF(阿州)、AN(南極)の3大陸です。SAは短時間ですが聞こえていたと思いますので、今後チャンスがあるかもしれません。AFとANは見通し無しです。

Breakdown of QSOs by time and continent for the JIDX-CW contest.

NAとASは既に実績がありましたが、EUおよびOCと室内LWアンテナで交信可能なことが今回確認できました。正確に言うと、OCに属するハワイとフィリピンとは交信実績がありました。今回、オーストラリアおよび太平洋諸島との交信実績が新たに積み上がりました。OC方面は建物の死角になると予想していただけに、予想を裏切る嬉しい結果です。

バンド別では、20mバンドが6局、15mバンドが24局、10mバンドが36局となり、HFハイバンドが好調でした。80mと40mも覗きましたが、室内LWアンテナではJA局のCQしか聞こえませんでした。ただし、初めて80mでCW信号が確認できたのは収穫です。

頻繁にバンド間をQSYできる点もLWアンテナ+ATUの利点です。昔(第一次再開局失敗時)は、屋外設置ATUのリレー音のあまりの大きさに驚き使用を躊躇しましたが、室内に置いたAH-705なら騒音の心配もありません。

バンド別のDXエンティティーを下記にまとめます。

DX Entities by band for the JIDX-CW contest.

20mは、ASとNAのみでした。

15mは、ASおよびNAに加えて、OC(フィリピン)およびEUと交信できました。NAには北米東海岸ニューハンプシャー州の局が含まれます。先のARRL DX CWコンテストで逃した東海岸とも今回交信できました。二日目早朝6時に早起きをした成果です。EUは北欧(フィンランドスウェーデン)が良く聞こえていました。ノルウェーが聞こえなかったのはなぜでしょう・・・。

10mは、AS、NA、EUに加えて、OC(オーストラリアおよび太平洋諸島)と交信できました。ただし、オーストラリアはVK6(西オーストラリア州)1局だけで、太平洋諸島も5W(サモア)1局だけでした。やはり、拙宅の室内LWアンテナはOC方面を苦手としているのかもしれません。一方、自宅建物の死角に入らないEUの最遠エンティティーはEA(スペインマドリード)でした。

コンテストではコールサインとコンテストナンバーを交換するだけですが、後で各局のWebページを捲るのが楽しみです。室内LWアンテナに強く入感するようなDX各局のアンテナは、HFハイバンドでは多素子の八木アンテナがベースラインで、クラブ局になるとそれをスタックしたアンテナファームを備えていることが分かりました。最大なものは、10mの6エレ3段スタックの八木アンテナでした。そのような指向性の強いアンテナを日本に向けてもらえたからこそ、室内LWアンテナ×10Wでも交信が成り立ったものと思います。

CQMM DX

CQMM(Manchester  Mineira)DXコンテストは、ブラジル発祥のコンテストで、当初のブラジル国内対象から、南米、アメリカ、ワールドワイドへと対象範囲を拡大してきたコンテストのようです。日本ではパブリシティが少ないため、その存在を知りませんでしたが、HFハイバンドで「TEST MM」が聞こえてきたため、Webで調べて急遽参加することにしました。日本も他のDX局と同じ立場で参加するため、DX局が必ずしも日本にアンテナを向けてくれない場合のベンチマークになると考えたためです。

時刻別のQSO数を下記に示します。合計11局、初日1局、二日目10局でした。計画的に参加の体制を整えていなかったことや、JIDX-CWで交信できなかったDX局を探したという側面もありますが、DX局がアンテナを向けてくれない場合の本来の室内LWアンテナの実力かもしれません。

Rate graph of QSOs by time for the CQMM DX contest.

陸別QSO数の内訳を下記にまとめます。交信できた大陸は、EU(欧州)3局、AS(亜州)2局、OC(大洋州)6局でした。

Breakdown of QSOs by time and continent for the CQMM DX contest.

NA(北米)とは交信できませんでした。アンテナをSA(南米)あるいはEUの方に向けていたのかもしれません。建物の死角になるはずのOC(大洋州)は6局と交信でき、比率が大きくなりました。

バンド別のDXエンティティーを下記にまとめます。この日も10mが好調でした。

DX Entities by band for the CQMM DX contest.

EUは、OH(フィンランド)2局とLZ(ブルガリア)です。やはり、北欧は強く入感します。

OCは、DU(フィリピン)、FK(ニューカレドニア)、KH6(ハワイ)、T8(パラオ)、VK(オーストラリア)と交信できました。太平洋諸島が室内LWアンテナの死角に入らないことが検証できました。

ただし、VKはJIDX-CWと同じくVK6(西オーストラリア州)の局でした。コールサインは異なります。室内LWアンテナからはVKの東側が見えないのか、引き続き検証が必要です。

JARL中央局

室内LWアンテナ+ATUはバンド間を容易にQSYできることが利点の一つです。10mのCQ局探しが一段落して40mにQSYしたところパイルが見えました。DX珍局が40mに出現か?と思って聞いていたところ、JARL中央局JA1RLでした。

「世界アマチュア無線の日」の特別運用を実施していたようです。NYPでは時間切れでJA1RLと交信できなかったため、Up指定のパイルにスプリット運用で果敢に挑戦しました。しかし、3回ほど呼んで諦め、10mのCQMM DXコンテストに戻りました。

パワーは無くとも高速頻繁QSYが身上です。10mと15mの探索を終えて再び40mに戻ってくると、Up指定のパイルは捌け、オンフレでCQを出していました。すかさずコールして交信できました。

ただし、信号は強くなく、DX局と同じくコールサインの再送も必要でした。拙宅から豊島区の方角には建物があります。空は開いているためNA方面のDXには支障がないと思われますが、地表伝搬で交信する場合は障害となる可能性があります。逆に、周囲の建物で散乱されることによって死角になるはずのOC(大洋州)と交信できている可能性も考えられ、前向きに考えれば一概に障害物とは言えません。

JD1(南鳥島

後日、JD1(南鳥島)が17mでUp指定のパイルになっていました。云十年前の開局時に6mで最初に交信したDXがJD1だったため懐かしく、こちらのパイルにも参加しました。5回以上はコールしたと思いますが、10回に到達する前に交信できました。

南鳥島小笠原諸島とは異なりOC(大洋州)に属します。やはり、OC方面は死角にはなっていないようです。

繰り返しになりますが、HFマルチバンドを全天候対応で隈なく迅速に探索できる点が室内LWアンテナ+ATUの利点です。出来るだけ早く珍局を見つけるか、頻繁に戻ってパイルの谷間やQSBの頂上を見つけることが楽しむコツと思います。

 

アパマンハムは、持って生まれた環境という訳ではないのですが、簡単には変えられない住居環境を最大限に享受して楽しみを見つけて行く必要があります。「集合住宅でアマチュア無線局が成立するか」を課題に第二次再開局を模索してきました。HFマルチバンドのCWで少なくとも4大陸のDXは可能であることが分かり、一定の成果は出てきました。ただ、FT8は電波障害が怖く、まだ手が出ません・・・。

室内ロングワイヤーアンテナはSWR1.0の夢を見るか(2)

仮設から永続的架設へ

室内ロングワイヤーアンテナをガムテープで窓のアルミ枠に張り付けて仮設しましたが、2週間程で脱落してしまいました。アルミ枠支柱の表面粗さによって接着力を発揮することが難しいこと、温度変化、結露、紫外線等の環境因子によって接着剤が劣化することが原因と思われます。

そこで、3Mのコマンド™ フック(CMG-SS-CL)によって永続的な架設を試みました。凹凸面には取り付けられないとの仕様でしたが、粘着テープに厚みがあり、アルミ枠支柱の表面粗さ程度でしたら強く接着できました。将来、剥がす際には粘着テープの舌状タブを引き伸ばすことで粘着テープを物理的に塑性変形させて粘着力を弱め、キレイにはがせるとのことです(まだ試していません)。3mmコード用のSSサイズでちょうどアンテナワイヤーを挟み込んで保持でき、テンションを掛けて架設することができました。プラスチックのフック本体も粘着テープも透明なため目立ちません。

Permanent set-up of indoor long wire antenna.

運用実績

交信数

その後、順調にHFマルチバンドでのQSO数を伸ばしています。室内LWアンテナの性能指標の一つとして、QSOの内訳を下記に示します。FT8のQSOを2つ含んでいますが、他はCWです。

AH-705のリレー切換の動作時間が長くSWRも高目になることから、チューニングが最も難しいと思われるバンドは12m(24MHz)です。最近、その12mバンドでもDU3(Philippines)と交信でき、星取表が埋まりました。

交信実績のないバンドは、80m(3.5MHz)と6m(50MHz)を残すのみとなりました。6mはSSBなら聞こえているのですが、CWはまだ聞いたことがありません。80mは強ノイズしか聞こえません。

JAは主に移動局を呼んでいますが、9エリアが残っています。LWに変更してから2エリアは強く入感するようになりましたが、飛騨山脈の先は中間スキップになってしまうようです。無線局数が少ないことも影響しているかもしれません。

問題

しかし、問題が発生しました。FT8の交信数が伸びないことには理由があります。IC-705とPCを接続したところ、送信によってCAT/Audio接続が切断されてしまう現象が多発しました。

また、AH-705にラジアルケーブルを付け忘れて運用したところチューニングできてしまい、その日の最後までラジアルケーブルの付け忘れに気付かないことがありました。別の所をラジアルケーブルの代わりにして回り込みが発生し、コモンモード電流が流れている可能性が高いと思われます。室内で相互に近接して、アンテナワイヤー、ラジアルケーブル、無線機、PCが設置されているため、回り込みが発生する条件が整っているように思われます。

Webを調査すると、IC-705のCAT/Audio接続切断の問題が複数報告されているようです。対策は2つあるようです。1つ目はコモンモード電流の削減、2つ目はIC-705のアース設置です。しかし、コモンモード電流を削減するためには無線機を高周波的にフロートさせるのが基本であり、アース設置は悪手とされているようです。そこで、まずコモンモード電流の削減に取り組みました。

コモンモード電流の測定

RF電流計

見えない敵と戦うのは大変です。そこで、まずコモンモード電流を定量的に測定するためのRF電流計を組み立てました。参考にした文献は下記2点です。

山村著「改訂新版 定本 トロイダル・コア活用百科 」、CQ出版 (2006)

第10章 計測機器

10.3 高周波電流計、pp.404-406

HAM world 2020年11月号、コスミック出版 (2020/9)

片倉著「電波障害とその対策」

第3回 アマチュア無線局のコモンモード徹底対策、pp.106-115

RF電流計は大進無線が頒布販売している「ディジタルRF電流計(高周波電流計)バージョン2 パーツセット」を利用して組み立てました。

大型洗濯ばさみ?の存在感が大きいです。

Distribution parts set of RF current meter.

分割コアは初めからナイロンクランプに接着されていました。配線済みのケーブルに設置できるように、汎用部品として販売されているようです。固定用のナイロン突起部は不要のためカットする例が組立マニュアルに示されていましたが、大型ニッパでも歯が立ちませんでした。見栄えは悪いですが、カットしなくても不都合はありません。

Module assembly of RF current meter.

検波部基板には、ダイオードブリッジによる全波整流回路とRC平滑フィルタが載っています。このパーツセットは数年前に入手しておいたものですが、頒布元のWebページを確認したところ、現行品は表面実装部品になっているようです。リード部品だと芋ハンダで配線することになるため、表面実装部品の方が綺麗に仕上がるのではないかと思います。

大型洗濯ばさみにコアと基板を装着して完成です。

RF current meter completed with core and circuit board mounted on a large clothespin.

検波電圧値から電流値に変換するための校正キットを購入するを忘れました。電流は電圧の約1/10になるようにRF電流計は設計されているとのこと。ただし、電圧が100mV以下になるとダイオードの電圧降下の影響が出て、電流は電圧の1/10よりも若干大きくなるようです。

RF電流の測定

IC-705には下図に示す4本のケーブルが接続しています。ノートPCに接続しているのはDCケーブルだけです。IC-705とPCの間の接続はWiFiです。

RF current measurement points.

IC-705に接続する4本のケーブルの中で、RF電流が最も大きかったのはアンテナ同軸ケーブルでした。同軸ケーブルの外皮がコモンモード電流の帰還経路になっているためと思われます。

以下にRF電流の計測値をまとめます。IC-705の出力は10Wです。電流値は測定電圧の1/10で近似換算しています。

Measured common mode RF current flowing through the outer skin of the coaxial antenna cable.

周波数が低いバンドほどコモンモード電流は大きくなります。周波数が高くなると21MHzで約30mAに収束し、それ以降は減少しません。

コモンモード電流の対策

目標

コモンモード電流は「見える化」できたのですが、対策の要否を検討するためには目標値が必要です。上記HAM world誌の寄稿記事に以下の目安が載っていました。

  • 20mA以上 対策必要
  • 20~5mA  状況により判断
  •   5mA以下 対策不要

現行の無線システムでは全てのバンドで20mA以上になるため、対策が必要との結論になります。

対策

RF電流計と同時に大進無線から購入しておいたコモンモード・フィルタ (フロート・バラン)DCF-RF-40LLQE自作部品セットを組み立てて、IC-705とAH-705の間のアンテナ同軸ケーブルに挿入することにしました。

Common mode filter (float balun) DCF-RF-40LLQE self-made parts set.

DCF-RF-40LLQEの特徴は以下となっています。

  • HF帯無線機ハイパワー500W対応のコモンモードフィルター
  • 大型コアの採用、耐熱同軸 2.5D-QEVを使用し、高性能、高耐圧、低価格を実現
  • 特にHFミッドバンドの特性が良く、1.8~50MHz帯用におすすめ

2つのコア(E04RJ402715)に同軸ケーブルを各13回巻き、コネクタを付ければ完成です。IC705に合わせてコネクタはBNCにしました。

Common mode filter (float balun) DCF-RF-40LLQE assembly with BNC connectors.

コア相互でキャンセル巻きになっていると思いますが、巻き方は特殊です。コアから脱出する同軸が相互に近接しないように、オフセットを持たせることを狙いとした巻き方設計になっていると思われます。

対策後のRF電流の計測値を以下にまとめます。15mと10mは測定電圧が小さくなり過ぎたため、山村OMの書籍の校正カーブを参考にRF電流換算値(*)を修正しています。

Measured common mode RF current flowing through the outer skin of the coaxial antenna cable after countermeasures.

全てのバンドで20mA以下になり、目標を達成しました。80mと6mを除いて5mA以下も達成しました。80mと6mの減衰が小さい結果はフィルタの仕様通りです。

同軸ケーブル以外のケーブルもクランプ式のフェライトコアを用いて対策を行いました。フェライトコアの挿入位置と、40mバンド10Wの結果を下記にまとめます。

Ferrite core insertion position.

Measured common mode RF current flowing through each cable after ferrite core insertion.

全て20mA以下を達成しました。(4)のIC-705用DCケーブルのRF電流が14mAと高目のため、追加対策が必要かもしれません。試しに(6)のACタップに装着したクランプコアを2個に増やしてみましたが効果はありませんでした。

CAT/Audio接続切断防止の効果

インターフェアのリスクは低減できたと思います。しかし残念ながら、CAT/Audio接続切断は相変わらず発生しています。コモンモード電流が原因ではなかったのでしょうか。

WiFi接続の対策

IC-705とノートPCは、宅内リモート運用の免許を得てWiFiで接続しています。ノートPCの内部にコモンモード電流が発生している可能性を切り分けるため、デスクトップPCへの接続テストも行いましたがCAT/Audio接続切断は発生しました。

IC-705はLANの子機にも親機にもなれるため、親機にしてノートPCにWiFiルータ無しで直接接続してみましたがCAT/Audio接続切断は発生しました。子機の場合はPCの接続ソフトで接続し直せば良いのですが、親機の場合はIC-705の再立ち上げが必要になり却って重症です。

CAT/Audio接続切断の原因はPC側やWiFiルータ側ではなく、IC-705の側にあるとの感触です。CAT接続はクリティカルな制御通信として、パケットロス回数の判定しきい値が小さく設定されているのではないかと想像されます。切断したら手動で再接続することになるため、ソフトウェアで粘り強くパケットを再送したり再接続をするようにしてほしいと願うのですが的外れでしょうか。CAT切断によって送信垂れ流しになることもあります。送信遮断のフェールセーフも必要かと思います。

残る対策オプションは、USB有線接続と、保安アース接続の2点です。どちらも、無線機をフロートさせるためにコモンモード電流遮断のコア挿入は必要になるかと思います。

RS-HFIQ(14)Quisk IQバランス校正(2)

日乗

WRTC開催記念局

先々月の話になってしまいましたが、正月1月6日にNYPに参加していたところ、WRTC 2022開催記念国内局の強力な電波が飛び込んできました。

当時はまだ認知度が高くなかったためかパイルになっておらず、CQを連呼している状態だったため、40m QCX+ 5Wと室内モービルホイップの組み合わせによるQRPでも1回で取ってもらえました。ワッチが重要であるという教訓でしょうか。

そのWRTC 2022開催記念局の運用期間が終了し、eQSLとAwardがHamAwardからダウンロード可能になっていました。(QSLはeQSL.ccからもダウンロード可能でした。)

The eQSL (left) and award (right) for the amateur radio station commemorating WRTC 2022.

HamAwardからダウンロードしたeQSLは単なる画像ではなく、eQSLのQRコードを読み取ると、左図のようにクラウド上でQSOが証明される仕組みになっています。

右図のAwardは、40m CWでの1回のQSO(10点)だけなので、順位15,009位の参加賞です。クラウドサービスによって、万単位の参加賞も瞬時に発行できるようになったということですね。

ただし、HamAwardからのダウンロードのハードルは高く、QRZ.comのメールアドレスを認証段階で使用するため、QRZ.comへの登録が必要です。また、保有する3つのブラウザの中の2つではセキュリティの関係で上手くダウンロードできませんでした。発行の複雑な仕組みがセキュリティにひかかるのでしょうか。

Raspberry Pi 400 の進捗

Raspberry Pi 400用のディスプレイを組み立てました。

7.9" high resolution (1536 x 2048) IGZO LCD panel set for Raspberry Pi 400.

秋月の7.9インチ高精細(1536 x 2048)IGZO液晶パネルセットと組み立てケースです。変則的な解像度ですが、Raspberry Pi OSのScreen ConfigurationメニューからHDMI1への出力を選択して回転方向を変更したところ、問題なく表示できました。組立マニュアルに指示があるConfig.txtの編集を行う必要はありませんでした。Raspberry Pi OSも進化しているようです。

Pi 400はオーディオジャックを省略していますが、代わりに奢った2式のHDMIがディスプレイデータに加えてオーディオデータも出力します。液晶パネルセットは3.5mmオーディオ出力ジャックも備えます。これでようやくQuiskのモニタ音を聞くことが出来るようになりました。

ここで気づきがありました。スピーカアンプをRS-HFIQの後方の横に置いたところ、ケーブルをつないでいないのに大きなノック音を拾いました。USBからの5V供給のみで、13.8Vを供給していない状態でも発生します。RS-HFIQの後方のディジタル系統からノイズが放射されているようです。

 

本題です。今回は、IQバランス校正機能がQuiskにどのように実装されているかを調査しました。まず、ベースになっている理論を確認します。

IQバランス校正の理論

実装のベースになっている理論式を2003年発表の下記参考文献から拾いました。Webで検索すると、引用の多い基本文献であることが分かります。

Ellingson, S.W. Correcting IQ Imbalance in Direct Conversion Receivers; Virginia Polytechnic Institute and State University: Virginia, VA, USA, 2003; pp. 25–32.

校正式を(1)式の形に置くと、In-Phase信号に仮定した振幅誤差αと、Quadrature信号に仮定した位相誤差ψを同定することにより、(2)式が得られます。

直観的には、校正式は対角行列になるイメージがありましたが、回転する信号から位相誤差を分離する際に三角関数の加法定理を使うため、位相の校正には回転する正弦(In-Phase)と余弦(Quadrature)の両方が必要になります。

QuiskのIQバランス校正機能実装の調査

IQバランス校正データ

校正データは他の状態データ一式と共にQuisk初期化ファイル./quisk_init.jsonに保存され、Quisk起動時に毎回読み込まれます。Quisk終了時には毎回上書きされるようなので、適宜バックアップを取った方が安心かもしれません。

「bandAmplPhase」という名称の辞書型の校正データの構造を下記に示します。今回、試験作成した校正データを例に示しています。

Data structure of IQ balance calibration.

Pythonの辞書型とリスト型を入れ子にした複雑なデータ構造を取ります。なお、辞書型は名前で要素にアクセスし、リスト型はインデックスで要素にアクセスします。データ構造の解読結果は以下の通りです。

最初のVersion情報は、古い実装バージョンと整合を取るためのものではないかと思います。

その後に、バンド別の辞書型データが並びます、上図では40mバンドの例のみを示しています。

各バンドは、受信(QSD)用のIQバランス校正データの辞書と、送信(QSE)用のIQバランス校正データの辞書を含みます。上図では受信「rx」用の辞書の例のみを示しています。

受信用もしくは送信用のIQバランス校正データの辞書は、任意の数の校正点VFO周波数(LO周波数)データのリストを含みます。上図ではVFO=7.020000MHzの例のみを示しています。

校正点VFO周波数(LO周波数)データのリストには、さらに任意の数の校正点データセットのリストが付属します。上図は4つの校正点データセットのリストを示しています。校正点データセットのリストの要素は、①オフセット周波数、②振幅校正パラメータ(α)、③位相校正パラメータ(ψ)の3つです。

IQバランス校正GUIのボタンとコールバック関数

IQバランス校正パネルの各GUIボタンのコールバック関数の役割を調べました。

GUI buttons on the IQ balance calibration screen.
  1. Save - コールバック関数:OnBtnSave()
    校正データをファイルに保存するボタンと思いましたが、ファイルへの保存はこの時点では行いません。校正データは、Quisk終了時に他の状態データ一式と共に ./quisk_init.json に保存されます。このコールバック関数では、グローバル変数のbandAmplPhase辞書への校正データの登録とソートを校正点毎に逐次行います。

  2. Destroy VFO - コールバック関数:OnBtnDestroyVFO()
    現在のVFO(LO)周波数の校正データのみを破棄します。

  3. Destroy ALL - コールバック関数:OnBtnDestroyALL()
    現在のバンドの校正データを全て破棄します。過去のデータもQuisk立ち上げ時に読み込まれています。破棄してからQuiskを閉じると、過去のデータも破棄した状態が新たに保存されるため注意が必要です。

  4. Finished - コールバック関数:OnBtnFinished()
    校正データをQuiskにセットして、IQバランス校正パネルを閉じます。

  5. Help - コールバック関数:OnBtnHelp()

  下記内容のヘルプを表示します。

The "VFO" is the frequency at the center of the graph screen. The Rx or Tx frequency is the offset from the VFO.Adjust the VFO and the frequency as desired.  Then adjust the sliders to minimize the image. Press "Save" when satisfied. To adjust the VFO, use the band Up/Down buttons, or right click the graph at the desired VFO. Adjustments must be made for both receive and transmit on each band. The maximum slider adjustment range can be changed on the radio Hardware screen.

The other buttons will delete the data for the current VFO, or for the whole band. For more information, press the main "Help" button, then "Documentation", then "SoftRock".

訳はこんな感じでしょうか。

「VFO」は、グラフ画面中央の周波数です。RxまたはTxの周波数は、VFOからのオフセットです。VFOと周波数を任意に調整します。次にスライダーを調節してイメージを最小化します。満足したら "Save "を押してください。VFOを調整するには、バンドのUp/Downボタンを使うか、希望のVFOのところでグラフを右クリックします。調整は、各バンドの受信と送信の両方で行う必要があります。スライダーの最大調整幅は、無線機ハードウェアの画面で変更することができます。

その他のボタンは、現在のVFOのデータ、またはバンド全体のデータを削除します。詳しくは、メインの「ヘルプ」ボタン、「ドキュメント」、「SoftRock」の順で押してください。

スライダー位置変更イベントに呼応した関数呼び出し関係

振幅と位相のスライダー位置変更イベントによってコールバックされる関数の呼び出し関係をまとめます。

Function call relationship for IQ balance change events.

Quiskの設定機能をまとめたConfig.pyファイルの中に、IQバランス校正ボタンのコールバック関数OnBtnPhase()が定義されています。この関数は校正ボタンのクリックによって、IQバランス校正クラスQAdjustPhase()をインスタンス化し、校正パネルを表示した後、ユーザーイベント待機状態になります。

スライダーの位置が変更されるとコールバック関数OnChange()が呼ばれ、その関数の中で振幅と位相の校正パラメータを更新設定するset_ampl_phase()関数が実行されます。

QuiskのC言語関数実装部分をまとめたquisk.cファイルの中で、Pythonのset_ampl_phase()関数はC言語のquisk_set_ampl_phase()関数に翻訳され、コールされます。

このquisk_set_ampl_phase()関数はオーディオ信号処理関数をまとめたsound.cファイルに定義されています。上図では受信経路の説明を示しています。Captureデバイスサウンドカードのマイク入力)の構造体に、上記理論式(1)および(2)のIQバランス校正行列の要素を設定しています。変数AmPhAAAA、AmPhBBBB、AmPhCCCCが理論式(1)の行列要素A、B、Cにそれぞれ該当します。同時に、校正適用指示フラグdoAmplPhase をONに設定しています。また、位相校正データの単位をradに変換しているため、逆に元の単位はdeg(度)であることが分かります。RS-HFIQの実績では、分度器半目盛から1目盛り程度の補正は必要ということになります。

一方、ユーザイベント処理とは並列に、所定のサンプリング周期(= 44.8KHz x バッファサイズ)でオーディオ信号を読み込むquisk_read_sound()関数が実行されます。オーディオ信号を読み込んだ後に、校正適用指示フラグdoAmplPhaseがONであれば、correct_sample()関数をコールしています。correct_sample()関数は、複素数型のIQサンプルデータに対して上記理論式(2)の校正計算を適用しています。

以上で、校正式の設定と適用の関係が判明しました。

校正終了ボタンのイベントに呼応した関数呼び出し関係

 IQバランス校正時の校正式の設定と適用の関係は判明しましたが、通常運用時はどうしているのでしょうか。通常運用時は、離散的に設定した校正点で必ずしも運用する訳ではないことから、校正データの補間が必要になります。例えば、周波数はいつでも変更できてしまうため、校正終了時に既に周波数が校正点から変更されている可能性があります。そのため、校正を終了するFinishedボタンを押下した際に、必要に応じて校正データの補間処理が走ります。

Finishedボタンのコールバック関数OnBtnFinished()から呼ばれる関数の呼び出し関係を以下にまとめます。

Calibration data interpolation process at the end of IQ balance calibration.

OnBtnFinished()関数内では2つの関数をコールしています。校正データから振幅と位相の校正パラメータを取得するGetAmplPhase()関数と、振幅と位相の校正パラメータを更新設定するset_ampl_phase()関数です。後者の関数は前節で説明しました。

GetAmplPhase()関数は、Pythonで記述したquisk.pyの中のアプリクラスの関数として実装されています。大別すると、以下の2つの処理を行っています。(1)運用周波数近傍の校正データ探索、および(2)校正点データの線形補間です。

(1)運用周波数近傍の校正データ探索では、SearchFreqAmPh()関数を用いて、2段階の探索を行っています。(1-1)運用VFO周波数近傍の校正点VFO周波数の探索、および(1-2)校正点VFO周波数のオフセット周波数を含む校正データの探索です。Quisk SDRでは、VFO周波数の設定(連続可変、離散可変、あるいは固定)はハードウェアに依存します。IQバランスの校正を行ったVFO周波数で運用するとは限らないことから、まず(1-1)で運用VFO周波数近傍の校正点VFO周波数を探索しています。次に、見つかった校正点VFO周波数の中身を(1-2)で探索して、近傍の校正点オフセット周波数を含む校正点データセットを抽出しています。

CWの場合はオフセット周波数をトーン周波数と考えれば良いのですが、SDRの場合は一般的にトーン周波数を任意に変更できるようになっています。校正点とは異なるトーン周波数に変更するために、(2)校正点データの線形補間が必要になります。ここでは、(2-1)校正データの取得と(2-2)運用周波数における校正データの線形補間の2つの処理を行っています。上図では、運用オフセット周波数Freq0が校正点オフセット周波数freq2とfreq1の間にある場合の線形補間処理の例を示しています。他に、VFO周波数も異なる場合や、校正点周波数データが1つしかない場合等の多様な場合に対応するコードが実装されています。

IQバランス校正終了時を例にして校正データの補間処理を説明しましたが、周波数を変更する毎に校正データの補間による校正適用の処理が走ります。

QuiskのIQバランス校正のテスト

校正の試行

IQバランス校正の試行を行いました。前節のデータの構造の説明で示した校正データは、この試行で得た実データです。

受信周波数を7019500Hz(VFO=7020000Hz、Offset=-500Hz)とし、7020500HzのBIT信号を入力した場合のIQバランス校正前のイメージ信号を下記に示します。BIT信号に対して、イメージ抑圧は-38dBcに留まっています。

The image signal before IQ balance calibration when the receive frequency is set to 7019500 Hz (VFO = 7020000 Hz, Offset = -500 Hz) and a 7020500 Hz BIT signal is input.

IQバランス校正後のイメージ信号を下記に示します。イメージ信号はノイズフロアに到達し、-78dBc以下に抑圧されています。ここで、Saveボタンをクリックして校正データを登録します。

Image signal after IQ balance calibration when the receive frequency is set to 7019500 Hz (VFO = 7020000 Hz, Offset = -500 Hz) and a 7020500 Hz BIT signal is input.

続いて、受信周波数を7018500Hz(VFO=7020000Hz、Offset=-1500Hz)とし、7021500HzのBIT信号を入力した場合のIQバランス校正を行い、Saveしました。その結果を下記に示します。

Image signal after IQ balance calibration when the receive frequency is set to 7018500 Hz (VFO = 7020000 Hz, Offset = -1500 Hz) and a 7021500 Hz BIT signal is input.

サイドを反転し、受信周波数を7020500Hz(VFO=7020000Hz、Offset=500Hz)とし、7019500HzのBIT信号を入力した場合のIQバランス校正を行い、Saveしました。その結果を下記に示します。

Image signal after IQ balance calibration when the receive frequency is set to 7020500 Hz (VFO = 7020000 Hz, Offset = +500 Hz) and a 7019500 Hz BIT signal is input.

続いて、受信周波数を7021500Hz(VFO=7020000Hz、Offset=1500Hz)とし、7018500HzのBIT信号を入力した場合のIQバランス校正を行い、Saveしました。その結果を下記に示します。

Image signal after IQ balance calibration when the receive frequency is set to 7021500 Hz (VFO = 7020000 Hz, Offset = +1500 Hz) and a 7018500 Hz BIT signal is input.

今回のIQバランス校正の試行における校正点数は少ないのですが、気付きは以下の通りです。

  • 振幅誤差(α)はVFO周波数に対してサイドが変わると符号が反転(LSB側が負でUSB側が正)
  • 振幅誤差(α)はVFO周波数に近い方が値が大
  • 位相誤差(ψ)はVFO周波数に対して両サイドで符号は正
  • 位相誤差(ψ)はVFO周波数に近い方が値が大

校正の再現と補間効果の確認

Quiskを一旦閉じると、登録した校正データが初期化ファイル./quisk_init.jsonに保存されます。Quiskを再立ち上げすると、校正データがファイルから読み込まれてIQバランス校正が常に適用された状態になります。その確認を行いました。

まず、LSB側の校正点における再現性を確認しました。受信周波数を7019500Hz(VFO=7020000Hz、Offset=-500Hz)にした場合と、7018500Hz(VFO=7020000Hz、Offset=-1500Hz)にした場合のIQバランス校正の再現性を、それぞれ下記の上段と下段に示します。イメージ信号はノイズと区別がつきませんが、-70dBc以下に抑圧されています。

Reproducibility of IQ balance calibration when the receive frequency is set to 7019500 Hz (top row) and 7018500 Hz (bottom row).

次に、校正を行っていない受信周波数7018000Hz(VFO=7020000Hz、Offset=-1000Hz)における結果を下記に示します。校正パラメータの線形補間機能が働き、イメージ信号は-70dBc以下に抑圧されています。

Effect of the calibration interpolation function at a receive frequency of 7018000 Hz (VFO = 7020000 Hz, Offset = -1000 Hz) without IQ balance calibration.

続いて、USB側の校正点における再現性を確認しました。受信周波数を7020500Hz(VFO=7020000Hz、Offset=+500Hz)にした場合と、7021500Hz(VFO=7020000Hz、Offset=+1500Hz)にした場合のIQバランス校正の再現性を、それぞれ下記の上段と下段に示します。USB側のイメージ信号も-70dBc以下に抑圧されています。

Reproducibility of IQ balance calibration when the receive frequency is set to 7020500 Hz (top row) and 7021500 Hz (bottom row).

次に、USB側で校正を行っていない受信周波数7021000Hz(VFO=7020000Hz、Offset=+1000Hz)における結果を下記に示します。校正パラメータの線形補間機能が働いているはずですが、イメージ信号の抑圧は-50dBc以下に留まりました。

Effect of the calibration interpolation function at a receive frequency of 7021000 Hz (VFO = 7020000 Hz, Offset = +1000 Hz) without IQ balance calibration.

理由は精査が必要ですが、下記の可能性を考えています。

  • 線形補間が間に合わない非線形回路現象の発生
  • 線形補間コードの不具合

ダイレクトコンバージョン方式のSDRでは、アナログ回路の均衡誤差を補償するために、IQバランス校正が必須であることが分かりました。製造ラインでこのような校正を行うことは煩雑で製造コストを押し上げてしまうため、SDR方式の市販無線機の大半が高速ADCやFPGAが必要なダイレクトサンプリング方式である理由を納得できました。

IQバランス校正は4次元パラメータ空間(VFO周波数、オフセット周波数、振幅校正パラメータ、位相校正パラメータ)の探索になるため、自動化したいところです。自動化を検討するためには、次にスペクトルデータの取得が必要です。QuiskではGUIにスペクトルを描画しているため、Pythonのどこかの変数に入っているのではないかと期待しています。

室内ロングワイヤーアンテナはSWR1.0の夢を見るか

結論

HF Low-Band(3.5MHz帯)からHF High-Band(28MHz帯)まで、加えて50MHz帯で、SWRは1.5以下の実用域に落ちました。バンドによってはSWR1.0を達成しました。

動機

アパマンハムには、安全性、景観適合性(ステルス性)、電波障害などのリスク要因があり、特にHFオールバンドでの運用を目指すとリスクが大きくなります。

近年は、カーボン釣り竿+ATUの可能性が開拓され、アパマンハムにもHFオールバンド運用の道が切り開かれてきたように思われます。しかし、拙宅では釣り竿のリスク要因をクリアできません。

そこで、室内ロングワイヤー+ATUの可能性を探ることにしました。室内モービルホイップでも多くを望まなければ交信は不可能ではないため、ロングワイヤーの可能性もゼロではないと考えた次第です。

実験システム

環境という最大の不確定要素を他の要素と切り分けるため、今回の実験資材は全て既製品で揃えました。

  1. ロングワイヤーエレメント
    8m (CQオーム、WAH-705)
  2. ラジアル線
    5m×5本 (CQオーム、OHM-CGW55M)
  3. ATU
    AH-705
  4. トランシーバ & SWR測定器
    IC-705

一般的に集合住宅で最も眺望が良い部屋は居間です。光が差し込む窓が大きいということは、同じ電磁波の電波も飛びやすいのではないかと期待させます。そこで、拙宅では居間のダイニングテーブルへの宅内移動が運用スタイルになっています。ロングワイヤーエレメントは居間の窓に張り付けることにしました。

Installation of indoor long-wire antenna.

居間の窓が大きいと言っても、8mのロングワイヤーエレメントをそのまま展開する幅はありません。そこで、弛みを入れて5.5mを水平展開し、90度折り曲げて1.0m水平展開し、残りの1.5mをダイニングテーブル上のAH-705までの引き込み線としました。

窓には約1m間隔でアルミサッシの支柱が入っています。その支柱にワイヤーをガムテープで張り付けて仮設しました。室内仮設では、アンテナがアルミと鉄筋の籠の中に囚われているような形になりますが、波の性質を利用して滲み出てくれることを期待しました。

ラジアル線5本を散開すると宅内景観条例(不文律)にひかかるため、まとめて床に放置しました。床のフローリングは鉄筋と距離があるため、静電結合は期待できず、カウンターポイズには成り得ていないと思われます。

CQ誌2023年2月号掲載のJG1UNE小暮OMの寄稿「ATUの基礎知識とその活用法」には「ラジアル線を浮かせる」効能が述べられています。また、他の方のBlogにもラジアル線を浮かせることでSWRが下がったとの報告があります。フローリング床の効能は意外に大きいのかもしれません。逆に、下手に躯体アースに落とすと、電波の鳥籠に鍵が掛かってしまうかもしれません。

SWR測定

HF Low-Band(160/80/40/30m)

SWR measurement results for HF low band.

160mバンドには整合しませんでした。8mのロングワイヤーエレメントの仕様通りです。

80mバンドのSWRは1.3程度に落ち、実用域に整合しました。チューニングポイントに谷があるのではなく、周波数が高くなるとSWRが増加する比例関係があります。高めの周波数ポイントでチューニングするのが良いかもしれません。

40mバンドのSWRは1.1以下です。80mと同様に、周波数とSWRに比例関係があります。

30mバンドのSWRはポイント測定になってしまいました。こちらも1.1以下です。

HF High-Band(20/17/15/12/10m)and 6m

SWR measurement results for HF high band and 6m band.

20mバンドのSWRはチューニングポイントで1.1程度、最大でも1.2程度になりました。唯一、チューニングポイントでSWRが最小になる谷の様相を示しました。5mのラジアル線が1/4波長になるのは20mバンドです。その関係が作用しているのでしょうか。

17mバンドのSWRも1.2以下になりました。短縮率を考えると、8mのエレメントでは最も危険なバンドと思いますが、問題ありませんでした。Low-Bandとは逆に、周波数が高くなるとSWRが減少する負の比例関係になりました。低めの周波数ポイントでチューニングするのが良いかもしれません。

15mバンドのSWRも1.2以下になりました。17mバンドと同様に、周波数とSWRに負の比例関係があります。

12mバンドのSWRは1.4程度になりました。160mバンドより整合が難しいようです。それでも、SWR1.5以下の運用可能なレベルになっています。

10mバンドのSWRは1.0です。

6mバンドのSWRも1.0です。

SWR測定のまとめ

屋外で垂直にワイヤーを設置して良好なアースを確保した場合に、8mのロングワイヤーとATUの組み合わせにより、3.5MHz(80m)以上のHFバンドで整合可能という想定でした。

これに対して、室内で水平にワイヤーを架設し、丸めたラジアルを床に置いただけでも、3.5MHz(80m)以上のHFバンドで整合可能という結果になりました。期待以上です。

交信実績

インピーダンスのマッチングがアンテナの放射効率を保証してくれるわけではありません。放射効率を定量的に測定する手段は持ち合わせていないため、交信実績で評価することにしました。

アンテナ仮設からの4日間で行ったCW交信実績を下表に示します。運用は週末だけです。合計47QSOでした。タイミングよく後半の2日間にARRL DX CWコンテストがあったため、DXの交信実績が伸びました。JAの実績積み上げはALL JAコンテストを待つ必要がありそうです。

CW QSO results by band for 4 days with indoor long-wire antenna.

最下行のDX Zone 31はハワイです。アンテナを仮設した初日と翌日にCQを連呼していたARRL記念局W1AW/KH6と交信できました。2023年はVOTA(Volunteers On the Air)記念局として運用されているようです。初日が15mバンド、翌日が20mバンドです。自局の電波の弱さ(による相手局のコーピーミス)を上手くカバーする技量が無いため、交信が成立しているかどうか心配でしたが、LoTWでコンファームできました。それなりの強度の電波が飛んで行ってくれたようです。

Confirmed two QSOs by LoTW with ARRL memorial station W1AW/KH6 in Hawaii.

これで自信がつき、ハワイと交信できるなら西海岸とも・・・と思い、ARRL DX CWコンテストに初参加しました。DX Zone 3は北米西海岸、4は中部、5は東海岸です。

ARRL DX CWコンテストの結果を下記に示します。左のCTESTWINによる自己採点結果から、コピーミスマネージメントに失敗した分が減点されていくと思います。10Wのコンテストナンバーが珍しいのか何回か問い合わせを受けましたが、こちらの返答が正確に伝わっていないかもしれません。電波が弱いほどコピーミスマネージメントが重要と思いました。

右に交信数の時系列推移を示します。コンテスト初日は朝寝坊で出遅れましたが、翌日は早起きをして交信実績を積み上げました。北米に日が沈む昼で終了し、昼食に明け渡すためにダイニングテーブルから撤収しました。

Self-scoring for the ARRL DX CW contest.

残念ながら、DX Zone 5の北米東海岸の局とは交信できませんでした。パイルを避けてCQ連呼の局を呼ぶ運用スタイルですが、CQを出している東海岸の局を見つけられませんでした。五大湖の下のイリノイ州およびインディアナ州までは届いたのですが。

大圏地図(例えばCQ誌付録DX WORLD ATLAS pp.16-17)でショートパスを考えると、西海岸と東海岸で著しく距離が異なるという感じはしません。西海岸の局からは海面反射で届くのに対して、東海岸の局からは北米大陸、アラスカ、カムチャツカと地表反射で届くことが原因でしょうか。

コンテスト2日目の正午前に10mバンドでPT9(ブラジル)がRST579で強く入感しました。コンテスト参加局だったため、こちらから呼ぶことはできませんでしたが、交信の可能性を感じました。PT9を呼ぶWの局も聞こえていましたが、PT9には聞こえていないようでした。南米日没時のE層反射の不思議な伝搬を体験することができました。

今後の課題

室内ロングワイヤーアンテナには十分なポテンシャルがあることが分かりました。ガムテープによる仮設ワイヤーは既に剥がれて脱落しかけているため、永続的な架設方法を考えたいと思います。

交信実績が無いバンドは、80m、12m、6mだけとなりました。6mバンドは開局時の思い出深いバンドです。当時はTR-1300(5W)と5エレ八木の組み合わせでしたが、ワイヤーアンテナとIC-705(10W)の組み合わせでどこまで交信できるか、夏場のEスポ時に期待したいと思います。

室内ロングワイヤーアンテナは安全性と景観適合性のリスクを100%クリアーしています。残るリスクは電波障害です。今のところ電気機器に問題は生じていませんが、コモンモード電流の測定などを検討したいと思います。