非職業的技師の覚え書き

JK1EJPの技術的検討事項を中心に記録を残します。

E24系列に基づく抵抗計(RMEE01)の組み立て

大量の部品の組付けが必要な13TR-FT8 デジタルトランシーバの組み立て前の準備として、JH4VAJ局OMより頒布頂いた「E24系列に基づく抵抗計(RMEE01)」の組み立てを行いました。

E24系列に基づく抵抗計(RMEE01)の特徴

RMEE01の特徴は、開発者JH4VAJ局の上記Blogを引用させて頂けば、「本機では測定値と共に、E24系列でいうところのどれに該当し、かつ、誤差はどれだけかも合せて表示します。」となります。

DMMよりアナログテスターの方が人の認知機能に優しい・・・と思っていても、ついつい多機能に目が眩んでDMMを買ってしまいます。アナログテスターであれば、抵抗を間違えてピックアップしていないことをまず針のポジションから確認し、その後に目標目盛りへの未達あるいは目標目盛りからの過達を読んで精度(ノミナル値からの誤差)を確認します。DMMだと頭の中で変換認識処理が必要となり疲れます。RMEE01はその変換認識処理を無用にし、直読でノミナル値からの誤差認識が可能になります。汎用性を狙うメーカには真似できない素晴らしいアイディアと思います。

E24系列に基づく抵抗計(RMEE01)の組み立て

開発者JH4VAJ局の上記Blogの説明に従って組立を行いました。

部品チェックと仕分け

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抵抗類とコンデンサ類は分別され別々の袋に仕分けされていました。員数チェックからチップ部品の同定は容易です。組み立て作業中の紛失や破損を考慮して、チップ部品の予備が入っているのも助かります。以前、ピンセットの力加減を間違えてチップ部品を天井に向かって打ち上げて紛失し、通販で補充するという憂き目にあいました。小さなチップ部品でも硬い床に落ちた時の音は以外にもキャッチできましたが、着床後にどこかに転がって行ってしまい、二度と再会することはできませんでした。

閑話休題、ちょっと確認に迷った部品はチップPolyfuseです。チップ抵抗に似ていますが、はんだ付け電極部中央に切れ込みがあるのが特徴です(はんだ付け後の写真では確認できませんが・・・)。印字は抵抗値ではなく、銅色に輝く正体不明の象形文字様の記号なのが特徴です。

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目視画像検索をしたところ、1個だけWeb上に見つかりました。大陸系メーカのトレードマークでしょうか?

ケース仮組み

やすり掛け以上のケース加工技能のない非職業的「電気」技師には、ケース付属はありがたいです。説明手順にあった、溝嵌合ノッチ部の隅Rの直角出し追加工を特にしなくても、仮組みは大丈夫のようでした。頒布頂いたロットではPCBのカッティング精度が上がったのかもしれません。

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チップ部品のはんだ付け

組み立て手順の説明に言及されているように、チップ部品のはんだ付けには拡大鏡が必須です。いくつか試しましたが、現在は手軽に眼鏡の上から装着できるメガネ拡大鏡を使用しています。通常の視界が必要な時は、レンズを跳ね上げることができます。

特に探した訳ではなく、以前に頂いた冠婚葬祭の商品引き換えBOOKの中に見つけました。ケンコー・トキナー天体望遠鏡も作っている光学製品の専門メーカーでしたので、即決で申し込みました。

背の低いチップ部品からはんだ付けをしますが、チップ部品の中にも背丈の違いがあります。積層チップコンデンサは積層しているだけあって背が高いのです。故にピンセットで一番つまみ易く、今回は飛ばしても予備品がある安全パイです。ついつい誘惑に負けてチップコンデンサからはんだ付けをしてしまいましたが、反省も踏まえて以下の順番が最適と思いました。

  1. PCB裏面の2個のチップコンデンサで練習
  2. PCB表面に戻ってお邪魔部品が周囲に付く前に気を使う多ピンのADCチップ
  3. 次に気を使う背の低い高精度チップ抵抗(熱容量も小さい)
  4. 背の低いチップPolyfuse
  5. 小さいフェライトビーズ
  6. 最後に残りの背が高いチップコンデンサ
  7. 三端子レギュレータも忘れずに(放熱部のはんだ付けには熱量が必要)

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SMD組付けの順番の例(②③④⑤⑥)
チップ部品はんだ付けの検査

大鏡を使用してもはんだ接続不良は生じる可能性があります。組み立て後には、独逸製ESCHENBACHデスクトップルーペ1420と携帯カメラを駆使して検査をしています。

ESCHENBACH1420使用の必然性はありません。たまたま手元にありました。良い道具を使うと良い仕事(趣味)ができそうな気分はします。

光を集める半球レンズを横から覗くと、チップ部品の高さ方向が立体的に強調され、電極の濡れ状態を確認できます。

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今回もESCHENBACH1420は接続ミスを1件発見しました。ADCのリードが一本、接続不良でした。目視検査の後に導通チェックを行い、接続不良を確定しました。

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パッドの先端にはんだが載り、リードもはんだで濡れていますが、それらが接続されていません。横(手前)のコンデンサに気を取られて、こて先の角度調整と押し当てが不十分だったようです。メインディッシュを最後に食べる心理で、ADCのはんだ付けをコンデンサの後に持ってきたことが失敗の原因です。

完成と動作確認

ADCの接続を修正して基板を完成させ、電源ラインのチェックの後に電源を投入。無事、LEDが点滅を始めました。タイムラグが少しあって焦りました。

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後は、組み立て手順の説明にある注記を読み飛ばさないように注意して、ケースへの組込みを進め、完成です。

確認のため、NanoVNA用の測定治具(写真左下)に付属していたキャリブレーション用のノミナル49.9Ωのチップ抵抗を測定しました。以前、DMMで測定した際の抵抗値は49.7Ωでした。

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測定値は49.78Ω。このチップ抵抗はE24系列ではありませんが、E24系列中の近い抵抗は51Ωで、その誤差は-1.22Ω(2.39%)。RMEE01内部では誤差の有効桁数を4桁で管理しているようです。誤差は-1.216Ω(2.38%)と高精度に表示されます。組み立て手順の説明にあるコネクタの接触抵抗約0.1Ωを考慮すると、DMMの測定値とほぼ同じです。もっとも、DMMが正しい保証はないのですが。

測定パッドが表に出ているのが便利です。テスタ棒は両手がふさがるのがあい路。クリップは挟んだり外したりが面倒でした。写真のようにピンセットで挟んで置いただけで測定できるRMEE01はこれからの電子工作で活躍してくれることと思います。