電力増幅器の組立
終段の励振増幅器、電力増幅器、およびLPFを組み立て、13TR-FT8トランシーバ の送信部が完成しました。
励振増幅器(Q10)のコレクタと電力増幅器(Q11、Q12、Q13)のベースを結合するT2の実装が分かり難いですが、混合器のT1の右側と同じコイルの構成として考えると分かり易いかもしれません。赤色と金色の2本のコイル線の終点と始点が結合した中点タップが12Vに接続します。
素子値の実測
終段回路のインダクタンスおよびLPFコンデンサの容量の実測値を下記にまとめます。トロイダルコアを用いたT2およびL1、L2、L3の設計値は不明のため、https://toroids.info/による計算値をノミナル値として「()」内に表記しました。
手巻きのT2およびL1、L2、L3のインダクタンスは2%の精度が出ました。ただし、L1、L2、L3の測定では「Low inductance」との警告が出たため、精度的に測定限界かもしれません。インダクタL4の偏差が大きく-13.2%でした。精度が要求されると推定されるLPFのコンデンサC37、C38も約4%の偏差となりました。
LTspiceシミュレーションの再確認
実測値に合わせてLTspiceモデルを更新し、回路シミュレーションを再確認しました。
励振増幅器のLTspiceシミュレーション
トロイダルトランスT2のインダクタンスのノミナル値からの偏差は-1.8%と小さいため、励振増幅器(Q10)のエミッタ電圧Ve、コレクタ電圧Vc、コレクタ電流Icに目視可能な変化はありませんでした。
電力増幅器のLTspiceシミュレーション
インダクタL4のインダクタンスのノミナル値からの偏差は-13.2%でした。コレクタの負荷が小さくなった影響か、コレクタ電流Final_Icが若干大きくなり、エミッタ電圧Final_Veも若干大きくなりました。
LPFのLTspiceシミュレーション(過渡解析)
コレクタ電流Final_Icが若干大きくなったことを反映して、アンテナへの供給電圧の振幅は15Vから16Vに上昇しました。供給電圧は320mAで変わりません。電力は約2.4Wから約2.56Wに上昇しました。
終段部の受動素子の実測値のばらつきは、パワーが若干増えるという方向に作用していることが分かりました。
LPFのLTspiceシミュレーション(交流解析)
オリジナルLPFの第二高調波付近14MHzの抑圧能力は、基本波付近7MHzに対して30.5dBcとなり、約0.5dBcほど小さくなることが分かりました。通過損失も-11mdBから-29.5mdBに若干増えました。
LPF部の受動素子の実測値のばらつきは、パワーが若干減る方向に作用していることが分かりました。ほとんど測定誤差の範囲に収まると思います。
第二高調波トラップ付きLPFのLTspiceシミュレーション(交流解析)
第二高調波起因のスプリアスが大きかった場合に備えて、プランBとしてのトラップ付きLPFへの影響も調べました。
手持ちコンデンサ2個の使用を制約条件にしてトラップ用追加コンデンサC0の最適容量値を探索したところ、前回と同じく129pFが最適値となりました。
同じ129pFですが、オリジナルLPFの素子値のばらつきによって共振周波数が変動したために第二高調波に対するトラップ精度は向上し、第二高調波付近14MHzの抑圧能力は70dBcから85dBcに拡大しました。プランBへの備えはより万全となりました。