非職業的技師の覚え書き

JK1EJPの技術的検討事項を中心に記録を残します。

AFP-FSK Transceiver(12)FSK受信試験

試験方法

AFP-FSK Transceiverの前に組み立てた13TR-FT8(ディスクリート・アナログ・FT8トランシーバ)を活用した試験方法を思いつきました。13TR-FT8からダミーロードに送信して、近接場から漏洩した電磁波をAFP-FSK Transceiverで受信します。都市ノイズやPCノイズの海の中になりますが、自由にAUDIO周波数を設定できるため、ノイズとの切り分けも容易と予想しました。

試験システムの系統図と試験機材の写真を下記に示します。近接場の漏洩電磁波を捉えるためにSDRplayのアクティブ・ミニホイップ・アンテナはダミーロードの近くに置き、必要に応じてBias-Tをアクティブにしました。AFP-FSK Transceiverのモービル・ホイップもエレメントが近くに来るように室内の床に置きました。アンテナから送信はしないため、SWRは気にしないことにします。13TR-FT8はLOのトリマ再調査が必要になり、ケースから出す必要がありました。漏洩電磁波がどこからでも回り込みそうな系ではあります。

Systematic diagram of the test system for receiving FSK radio waves.

Photograph of the equipment for the test to receive FSK radio waves.

送信機13TR-FT8の周波数校正

まず、SDRplayを原器として、13TR-FT8の周波数を再校正しました。

校正前

両トランシーバの電源を投入すると、各々のLO(Local Oscillator)の信号が見えました。

When both transceivers were powered up, the respective LO (Local Oscillator) signals were visible.

AFP-FSK TransceiverのLO信号は、外部発振器をTCXOとしたMS5351Mの受信Clock信号です。一方、13TR-FT8のLO信号は、ノーマルXOによるコルピッツ発振回路の出力です。ディスクリートSBMの入力とするためか、13TR-FT8のLO信号の強度の方が高いようでした。もっとも、単にSDRplayのMini-Whip Antennaとの距離が影響しているだけかもしれません。

校正後

前回、13TR-FT8のLOも7,074,004Hzまで追い込んだはずですが、経時変化かあるいは暖機運転が足りないのか、約-40Hz程ずれているようです。これを±10Hz以内に再調整しました。

Readjust the LO of 13TR-FT8 to within ±10 Hz.

13TR-FT8送信とAFP-FSK Transceiver受信

2.5kHz AUDIO信号

WaveGenから2.5kHzのAUDIO信号を13TR-FT8に入力しました。13TR-FT8がダミーロードに送信した電力の漏洩電磁波をSDRplayで受信した結果を下記に示します。7,076.5(=7,074+2.5)kHzになる予定でしたが、約-2.5Hz程低くなりました。

Spectrum of electromagnetic leakage received by SDRplay when 13TR-FT8, with 2.5 kHz AUDIO signal input from WaveGen, outputs FSK power to a dummy load.

この時、AFP-FSK Transceiverが受信したWSJT-Xのワイドグラフを下記に示します。WSJT-Xは近接場の漏洩電磁波も捉えてくれました。目視ですが、約2.47kHzを受信しており、SDRplayの受信結果と一致します。約-2.5Hzは13TR-FT8のLOの校正誤差と思われます。

Wide graph of WSJT-X showing the results of the AFP-FSK Transceiver receiving the electromagnetic leakage when the 13TR-FT8 outputs FSK power to a dummy load with a 2.5 kHz AUDIO signal input from WaveGen.

2.3kHz AUDIO信号(-200Hzシフト)

次に、AUDIO周波数に対して2.5kHzから2.3kHzへの-200Hzの周波数シフトを行いました。7,076.3(=7,074+2.3)kHzになる予定でしたが、同様に約-2.5Hz程低くなりました。LO校正誤差を維持したまま、正確に周波数シフトした模様です。

A frequency shift of -200 Hz from 2.5 kHz to 2.3 kHz for the AUDIO frequency resulted in an accurate amount of frequency shift at the RF transmit frequency while maintaining the LO calibration error.

AFP-FSK Transceiverが受信したWSJT-Xのワイドグラフでも同じ結果を確認できました。AFP-FSK Transceiverの受信部が正常に稼働していることを確認できました。

The same results can be seen in the WSJT-X wide graph received by the AFP-FSK Transceiver, confirming that the receiving part of the AFP-FSK Transceiver is working properly.

AFP-FSK Transceiverによる交信受信試験

そのままAFP-FSK Transceiverを放置し、WSJT-Xの継続受信を行いました。室内床置き仮設のモービル・ホイップでは出力の大きい局やローカル局の電波しか捉えられないのですが、待っていると数局の電波を拾えました。ただし、DX(7.074MHz)も国内(7.041MHz)も交信相手局の電波は捉えられませんでした。

Receiving test results of QSOs on DX frequency and domestic frequency in the 40m band with AFP-FSK Transceiver.

DXにも国内にも両方に対応できるのがVFO Moduleを搭載したAFP-FSK Transceiverの利点です。受信用のVFO機能も正常に動作していることが確認できました。