非職業的技師の覚え書き

JK1EJPの技術的検討事項を中心に記録を残します。

室内ロングワイヤーアンテナはSWR1.0の夢を見るか(4)

日乗

自作リグ運用を目標にSDRを学び中ですが、サイクル25に間に合いそうにないため、サイクルピークに向けて市販リグ運用の機会を増やしています。CW技能の向上と室内LWアンテナの試験が当面の運用目標です。

太陽周期に連動してピーク時に運用し、ボトム時に技術を向上するサイクルが一般的な傾向となっているようです。個人的にもそのサイクルになりそうです。

Keith's SDRの動向

マイコン版SDRのKeiths' SDR(K7MDL版)の更新サイクルが速くてフォローが間に合わないため、PC版SDRのQuiskでSDRの基本を学び中です。IQバランス校正の自動化機能実装で足踏みをしています。

Keiths' SDRの代表的なRFフロントエンドのRS-HFIQにはCWモードのハードウェアサポートがないため、IQ信号でCW送信波を生成する必要があります。そのためIQバランスの影響が気になります。

Keiths' SDRのフォーラムのチェックは続けています。CW信号生成ライブラリがBob Larkin OMによってKeiths' SDRのベースになっているOpenAudio_ArduinoLibraryに実装され公開されました。radioCWModulator_F32という名称です。コードを見たところ、このライブラリは文字列を受け取ってCWオーディオ信号のガウスフィルタ適用Sin波を生成するもののようです。キーパッドやCAT接続によるPCキーイングで必要になるライブラリです。IQ信号生成前の処理ライブラリですが、Keiths' SDRに取り込まれるかどうかチェックを続けたいと思います。

DXによる室内LWアンテナの性能確認(つづき)

最近のコンデションが今一つの15mバンドを聞いていたところ、弱いCW信号が浮かび上がってきました。40wpm以上と思われる超高速のCW信号です。この速度になると短点の分離は不可能で、短点変調オーディオ信号の長さを感じ取るしかありません。

CQ DE VK9DXと打っているような気がしました。続けてUP1と打っています。オーストラリアの局がなぜパイルを見越したUP指定をCQに付けているのか疑問を感じつつ、DXCCリストを調べるとVK9はオーストラリア近くの6つの島々に個別のエンティティー(VK9C、VK9L、VK9M、VK9N、VK9W、VK9X)として割り当てられていることが分かりました。しかし、VK9Dのプリフィックスはリストに載っていません。

QRZ.comで調べると、VK9DXはノーフォーク島(VK9N)の局でした。

プリフィックスの謎はCQ誌2023年2月号で確認が取れました。VK2DX(シドニー)の局長さんがノーフォーク島に転居してVK9DXのコールサインで運用しているとのこと。日本とは異なり、希望したコールサインがもらえるようです。ノーフォーク島について調べると、イギリス海外領土編入(1856年)、オーストラリア領編入(1914年)、自治政府廃止(2016年)の歴史的経緯を辿っており、オーストラリアからは自由に転居できるエンティティーになっているようです。

そうこうしている中にパイルになって来たようです。こちらからはUP1周波数で呼んでいる局の信号は何も聞こえませんが、次々とピックアップされて行きます。パイルの規模が分からないことを幸いとして、怖気づくことなく急いでIC-705のSplit設定をして呼んでみました。CQに早く気付いたことが良かったのか、数回目にピックアップされました。コールサインの再送要求があったため、正確にコピーしてもらえたのか不安でしたが、翌日にはClub Logで確認が取れました。室内LWアンテナと10Wでも、機会に恵まれればパイルに飛び込むことも一概に無益とは言えないことが分かりました。

海底地形を参照すると、ノーフォーク島ニューカレドニアからニュージーランドに至るノーフォーク海嶺の上にあります。ニューカレドニアとは既に交信実績があったため、南方に交信実績距離が伸びたことになります。南方面が室内LWアンテナの死角にはなっていないことが再確認できました。次の目標はニュージーランド、そして南極です。果たして交信できる日は来るのでしょうか。

ALL JAコンテストによる室内LWアンテナの性能確認

目標

DXコンテスト(JIDX-CW、CQMM DX)に続いて、ALL JAコンテスト(4/29 - 4/30)に参加して室内LWアンテナの性能確認を行いました。

当初の目標は唯一交信できていない9エリア局との交信でしたが、ALL JAコンテストの前に9エリアの2局と立て続けに交信でき、室内LWアンテナのAJDは完成してしまいました。そこで、以下を目標としました。

  1. 80mおよび6mバンドでのCW交信実績
  2. One Day AJD

結果

前者は達成できましたが、後者は達成できませんでした。太陽の27日短周期ではボトムに近く、コンディションは良くありませんでした。Eスポの発生もなかったと思います。(他の方のブログを読むと、Eスポが発生していたようです。当局の電波がEスポ層に届かなかっただけのようです。)

自己採点結果を示します。交信局数は182局(重複1局あり)、マルチ(県数と北海道地域数)は71でした。

傾向としては、7MHzバンドでマルチを稼ぎ、50MHzバンドで交信局数を稼いだように見えます。コンディションが良くないときに7MHzバンドでマルチを稼ぐのは順当ですが、スペクトルスコープ上で霧状に見える広域都市ノイズが当局の環境では発生しており、運用し易いバンドではありません。

Eスポが発生していないのに50MHzバンドで交信局数を稼げたのは予想外でした。なにしろ普段は静まり返っており、50MHzバンドでCW信号を聞いたのはこの日が初めてでした。局数が多い1エリアの特典かもしれません。その代わりに1エリアには中間スキップによってHF帯の局数を稼げないというあい路もあり、7MHzマルチと50MHz局数の傾向が出たのは妥当な結果だったのかもしれません。

50MHzバンドにはQSBやノイズが無いため、CQランニング局の信号が弱くても、さらに弱くなるであろう当局の呼び回り信号を取ってもらえる安心感があります。コールサインの再送を要求されることは、CQ連呼中に突然呼ばれてびっくりした時?以外は無かったように思います。

対称的なのは3.5MHzバンドです。6局と交信実績ができましたが、各局長さんが粘り強く拾ってくれた成果であり感謝します。再送要求100%で、しかも複数回の再送が必要でした。DXより難しかったという印象です。8mのLWアンテナから3.5MHzの電波は出てはいるが極めて微弱であり、QSBやノイズ下では符号を取ることが難しいレベルであると判定しました。SWR1.5以下でも3.5MHzバンドは実用的とは言えないと評価せざるを得ません。

詳細分析

時刻別のQSO数を下記に示します。夕食は弁当、朝食と昼食はパンにして、室内LWアンテナを架設してある居間のダイニングテーブルを臨時シャックとして占拠し、長期戦に備えました。

Rate graph of QSOs by time for the ALL JA contest.

時間帯による交信局数の顕著な増減は見られません。細かく見ると、コンテスト開始から翌日の早朝までは13~14局/Hrで推移しています。重複チェックに引っ掛かる比率が小さく、効率的に呼び回り交信ができていたためと思われます。一方、翌日の午後は重複チェックに引っ掛かる比率が大きくなり、10局/Hr程度に落ちています。ここでEスポが発生して新しいエリアが入感するようになれば交信局数が大きく伸びたと思いますが、Eスポの発生はありませんでした。コンテスト終了は21時でしたが、重複チェックに引っ掛かる比率が大幅に増えた20時で切り上げました。

バンド別のエリア交信数を下記に示します。

ALL JAコンテストの前に9エリア局との交信の難しさを感じていましたが、その経験がそのまま反映した結果となり、9エリア局を落としたためにOne Day AJDは完成しませんでした。今回、RBN等は参照しませんでした。狙いに行っても聞こえないことが多く、耳で探した方が良いと考えたためです。局数よりAJDを狙うなら、スポット周波数に張ってQSBのピークを待った方が良いかもしれません。次回の宿題です。

都道府県別の交信実績を調べた結果を下記に示します。「オリジナルの日本地図が作成できるジェネレイター」を利用させて頂きました。緑が交信実績あり、赤が交信実績なしの都道府県です。

Prefectures where QSOs were made in the ALL JA contest.

コンディションが良くないと思った割には、中間スキップを除いて日本全国を網羅している印象です。北陸から中部を経て近畿に至る領域が綺麗に中間スキップになっている様子が分かります。奈良県が取れたのは幸運でした。島根県徳島県、鹿児島県は取りこぼしと思います。

50MHzでは1エリアの他に、2エリア(静岡県伊豆移動と推定)と7エリア(福島県白河移動と推定)の各1局と交信できました。両局とも移動局であり、悪天候の下、標高の高いところに移動してくれたおかげと思います。

IC-705のCAT通信遮断の状況

コンテスト期間中、3.5MHz、7MHz、21MHzではCAT通信遮断は発生しませんでした。28MHzは日によって状況が変わりますが、コンテスト期間中は通信遮断が100%発生しました。50MHzは今回初めて評価できましたが、同じく通信遮断が100%発生しました。

CAT通信が遮断するとバンド切換がコンテストロガー(CTESTWIN)に自動で反映されなくなるため、注意して手動で切換える必要があります。しかし、重複チェックを実行すると切換前のバンドに戻ってしまう現象が発生し、重複チェックを一度失敗しました。これが、交信回数183、ポイント182の理由です。

ハイバンドに対してコアの数を増やす手しかないのですが、50MHzはコンテストの時にしか運用できない状況のため評価が進みません。