非職業的技師の覚え書き

JK1EJPの技術的検討事項を中心に記録を残します。

室内ロングワイヤーアンテナはDXCCの夢を見るか(6)

DXCC カウントアップ

DXCC 103 : 3D2V – Rotuma LoTW コンファーム

前回報告した3D2V(ロツマ島)のQSLカードをOQRSにてリクエストしたところ、いち早くLoTWでコンファームされました。これで、DXCCは103(LoTW:98 + Card:5)にカウントアップしました。

3D2VはFT8のコールサインです。CWのコールサインは別立ての3D22ですが、3D2VのOQRS画面に3D22交信分のレコード照合欄も出てきました。入力しましたが、3D22のLoTWコンファームはできていません。ログシールに両方とも記載されるかどうかも特段のアナウンスはされていませんので、カードが届いてみないと3D22のコンファームが同時にされるかどうかは分からない状況です。

DXCC 104 : ZL7IO – Chatham Islands LoTW コンファーム

こちらも前回報告したZL7(チャタム諸島)がLoTWでコンファームされました。DXCCは104(LoTW:99 + Card:5)にカウントアップしました。これで、LoTWのみのDXCC100も大手です。

DXCC 105 : LZ3CB – BULGARIA LoTW コンファーム

9/30のブログ(室内ロングワイヤーアンテナはDXCCの夢を見るか(2) - 非職業的技師の覚え書き)で次のように報告しました。

次の課題はEU ブルガリアです。こちらは3局と計5回(CW:5回)交信済みですが、同じくコンファームできていません。最初に交信した局にSASEを送付しましたが、半年後も未着です。行方不明になってしまったのかな・・・。今は、コンファームしてくれそうなブルガリア局をFT8で探しています。

それ以来、FT8で強い信号のブルガリア局を見つける度にコールしましたが、何故かコールバックは帰ってきませんでした。しかし、1か月後の11月に至ってようやく、17m FT8にてLZ3CB局からコールバックが返ってきました。SNRは his/my = +13/-24dB でした。彼我の差は37dBで、室内LW×10Wの信号はFT8の最小限界感度でブルガリアに届いていました。この日は何かのコンテスト開催の関係か、バンド内が比較的空いていてQRMが無かったために-24dBでも交信できたのではないかと推測しています。

LZ3CB局のQTHを調べたところ、黒海沿岸のブルガスでした。地図を拡大すると、ブルガスの日本方面は黒海に面し、背面にはブルガス湖を背負っています。この水面との位置関係が電波伝搬に有利に働いているのかもしれません。

これで、DXCCは105(LoTW:100 + Card:5)にカウントアップしました。カードチェック無しのLoTWシステム上のオンライン処理だけでDXCCを申請できることになりました。(別途報告)

DXCC 106 : 7Q6UJ – Malawi LoTW コンファーム

FT8で頻繁に見えるけれどもコールバックが返ってこない7Q6UJ(マラウイ共和国)とようやく15m FT8で交信できました。上記ブルガリアと夜間に交信した翌朝のことです。SNRは his/my = +05/-14dB でした。彼我の差は19dBですが、室内LW×10Wの信号は十分な強度でマラウイに届いていました。今まで交信できなかったのは、パイルによるQRMが主な理由と考えています。

OQRSリクエストを出して直ぐにLoTWでコンファームされました。これで、DXCCは106(LoTW:101 + Card:5)にカウントアップしました。

マラウイはアフリカ大陸南東部のタンザニアザンビアモザンビークに囲まれた内陸国です。アフリカの島嶼部もしくは沿岸国とは室内LW×10Wでも交信できていましたが、内陸国との交信はこれが初めてです。マラウイ内陸国ですが、日本方面には細長いマラウイ湖があります。上記ブルガスほどではありませんが、この水面との位置関係が電波伝搬に有利に働いているかもしれません。

マラウイから17歳のOpが精力的にQRVしているということで、当局も免許取りたての中学生の時には精力的にQRVしていたことを思い出しました。

DXCC 107 : HI3K - Dominican Republic LoTW コンファーム

FT8のレア局がクラスターに載っていても、SNRがマイナス一桁以上で室内LWに入感していないと10Wの信号は届かないことが多いため、クラスターに頼らずにデコードリストの信号強度を目でウォッチしています。一方、FT4はコンディション次第なため、クラスターを参考にしています。なお、FT4にレア局が出ている時のコンディションはEスポに似ており、室内LW×10Wでも十分に勝算ありです。

HI3K(ドミニカ共和国)もクラスターで見つけ、17m FT4で交信できました。SNRは his/my = +07/-15dB でした。週末翌週の月曜日に直ぐにLoTWでコンファームでき、DXCCは107(LoTW:102 + Card:5)にカウントアップしました。

ドミニカ共和国は、カリブ海キューバプエルトリコに挟まれたイスパニョーラ島にあり、同島を東西に分かつ西側のハイチと国境を接しています。なお、J7(ドミニカ国)と混同しないように、「ドミニカ共和国」は正式名称で呼ぶ必要があります。

HI3KはLoma Del Toro DX Clubの会長とのことで、Loma Del Toro丘陵のコンテストシャックからの運用と当初は考えていました。丘陵地にタワーが林立しており、室内LW×10Wからの微弱信号を拾ってくれそうです。

しかし、LoTWにはIOTA NA-122(Dominican Republic's Coastal Islands:ドミニカ共和国沿岸島嶼)が記載されていました。Loma Del Toro丘陵があるイスパニョーラ島はIOTA NA-096とのことです。HI3KのQRZ.comでも確かにIOTA NA-096と記載されています。検索しても、近々のIOTA NA-122 peditionの情報はありません。真偽は?

DX日乗

C21MM - Nauru OQRS

前回、進捗を報告したナウルのDXpeditionが終了し、OQRSでQSLをリクエストしました。最終結果は以下の通りです。

FT8のバンドスロットは20mと40mが前回報告より増えました。室内LWが苦手な40mのSNRは his/my = +00/-22dB で困難な交信でした。FT8の標準周波数でCQを出し、パイルが始まるとDXpedition用の周波数に遷移し、パイルが掃けると標準周波数に戻るスタイルで運用していました。一度、標準周波数における運用中にコールバックがありレポートを返送したのですが、パイルが始まりQRMで当局の-22dBの信号を受信できないと考えたのか、DXpedition用の周波数に遷移してしまいました。そのメッセージに気付くのが遅れたのと、DXpedition用の周波数でDFをどう設定すべきか迷っているうちに時間が経過し、プチパイルが掃けたと同時にC21MMは標準周波数に戻ってしまいました。再起を期して標準周波数でコールを繰り返すうちに、またプチパイルができたことによりC21MMはDXpedition用の周波数に遷移してしまいました。そこで諦めずに追いかけてコールを繰り返すと、QRMがなくなったプチパイルの最後にコールバックがあり、今度はRR73まで到達しました。標準周波数とDXpedition用周波数を行ったり来たりする運用は初めて見ました。一般的運用法ではないと思いますが、文字数を限定したFT8の略記メッセージに気付けるかどうかが勝敗の分かれ目です。

一方、CWのバンドスロットは10mと15mが前回報告より増えました。30mは再起を期してチャレンジしましたが届かず、残念ながらコールバックを取り損ねたNILのままに終わりました。綺麗にスロットを埋めることはできませんでしたが、室内LW×10WでもオセアニアのDXpeditionであればスロット埋めにチャレンジできることは証明できたかと思います。

ところで、このナウルDXpeditionのワッペンには鳥と重機が描かれています。異種取り合わせですが、ナウルを象徴しているはずです。国鳥かと思い検索すると、下記の本がヒットしました。

鳥は予想に反して(絵柄に反して)海鳥のようです。その糞が化石化してリン鉱石(肥料の原料)ができ、そのリン鉱石の採掘と輸出がナウルの基幹産業になっているそうです。重機は鉱山機械だったわけですね。そのリン鉱石も無尽蔵ではないため、枯渇が心配されているそうです。国名すら知らなかったナウルに関する知識が、交信を機会に少しだけ増えました。

VK9CV - Cocos (Keeling) Islands

「ココス(キーリング)諸島」のDXpeditionは昨秋もありましたが交信できませんでした。昨秋のDXpeditionは2名のチームでしたが、今秋は大規模チームでしたので交信の機会はあると期待しました。

ココス島」で検索するとグアムの島がヒットしてしまいます。Islandsですから「ココス諸島」で検索する必要があります。「ココス」という名称はココヤシに由来するため同名の島が他にもあるらしく、区別する意味で別名「キーリング」がわざわざ付いているようです。

オーストラリア領ですが、太平洋の島ではなくインド洋の島です。通常の地図で見るとインドネシアより少し遠い程度に見えますが、大圏地図で見るとシドニーと同程度の距離と思います。FT8なら射程圏内であり、コンディションが良ければ室内LW×10WでもCWで交信可能との予想で臨みました。

期間は約2週間だったため、使える週末は2回しかありません。そこで、室内LW×10Wでは無謀ですが、DXpedition開始直後からパイルに参戦しました。結果は以下の通りとなりました。

初戦は10m FT8からでした。40分粘りました。下記スクリーンショットから分かるように、室内LWから見えるJAのパイルは小さいのですが、インド洋ということもあり見えないEUと競合していました。JA局の隙間に位置取るだけではEU局の隙間にいるか分からないため、定期的に位置取りを変えて40分呼び続けました。届いていないかも?と諦めかけた時にコールバックがありました。VK9CVは6ストリームで運用していたため、SNRは his/my = -09/-13dB でした。信号自体は必要な強度で届いていたことが分かります。ただ、EUSNRはマイナス一桁以上)のパイルに打ち勝つだけの十分な信号強度が無かったために、位置取りが重要だったということになります。

この後、下のバンドにもVK9CVがFT8でQRVしていたため、12m、15m、17mと順番にコールしていきました。12mはJAのプチパイルしかありませんでしたが、15mはEUと競合し、17mはEUおよびASと競合しました。それでもコツ?をつかめたのか、下のバンドは何れも数分以内に交信でき、一夜の一時間少々で4バンドのスロットが埋まりました。20m FT8は翌週に交信できました。

一方、CWは12mから始めました。室内LWにもRST=559~579で強力に入感していたため交信できると思ったのですが、10mと12mは一向に届きませんでした。15mと20mはそれより弱い入感でしたが、翌日と翌週に交信できました。17m CWもチャレンジしましたが、さらに弱い信号だったため、間違ったコールバックを空耳スルーしてしまったらしく、交信は不成立となりました。

ワッペンの図柄は、島名の由来になったココヤシの木、スパイダービームアンテナ、そしてヘッドセットを付けた蟹です。交信できなかった昨秋のDXpeditionのQSLカードにも蟹の写真が使われており、蟹が「ココス諸島」を象徴しているようです。調べてみると、クリスマスアカガニであることが分かりました。

近隣にあるクリスマス島の名前が付いていますが、クリスマス島ココス諸島の固有種とのこと。各DXpedition局はワッペンのデザインに趣向を凝らしていることから、交信先の象徴的事象を知ることができます。

4U1A - Austria (The Vienna International Center)

稀に室内LWに入感するも届かなかった4U1Aとようやく15m FT8で交信できました。SNRは his/my = +00/-17dB でした。

4U1Aはウィーン国際センター(国連事務所)内にあるアマチュア無線クラブ局(ARCDXC:AMATEUR RADIO CONTEST DX CLUB)とのこと。

「4U」は国連機関のプリフィックスです。国連の「Capitals」は3つあり、それぞれにアマチュア無線局が設置されています。Geneva(4U1ITU)、New York(4U1UN)、Vienna(4U1A)です。この中でエンティティとして認められているのは4U_ITU(国際電気通信連合本部)と4U_UN(国際連合本部)の2つだけです。

これに対して、「ウィーン国際センターは治外法権区域であり、オーストリア法の管轄外である」のに、4U1Aのエンティティがオーストリアになっていることに議論があるようです。

4U1Aは独立エンティティをリクエストし、DXAC(ARRL)がリジェクトしている状況のようです。折衷案として、4U1Aを4U_ITUに属させる案もあるようです。もしかしたら、将来4U1Aのエンティティが変わる可能性もあるため、4U1Aとオーストリア局の両方と交信しておいた方が良いようです。

Z33Z - North Macedonia

Z33Z(北マケドニア)と20m FT8でようやく交信できました。左右対称の珍しいコールサインです。コールサインを自由に選べるということは、アマチュア無線局数が少なく、交信の難易度が高いことを意味していると推測します。SNRは his/my = -09/-21dB で、レポートの再送が必要な危うい交信でした。南はギリシャ、東はブルガリアと、四方を他国に囲まれた内陸国であることが影響しているかもしれません。

残念ながらLoTWによるコンファームには対応していないようです。SASE送付が必要ですが、郵便事情が良くないためギリシャのマネージャ?に送るよう指示が載っていました。

LX1RFJ - Luxembourg

こちらも稀に室内LWに入感するもなかなか届かなかったLX1RFJ(ルクセンブルク)と15m FT8で交信できました。SNRは his/my = -19/-17dB で珍しくイーブンでした。マイナス2桁のSNREU局をコールしても、室内LW×10Wで交信できる確率は限りなく低いのが実情です。失念しましたが、おそらくコールを続けているうちにコンディションが低下したものと思います。RR73を受信した時には、his = -24dBの限界感度でした。

ルクセンブルクも、フランス、ベルギー、ドイツに囲まれた内陸国です。学校で習った「ベネルクス3国」(ベルギー、オランダ、ルクセンブルク)を思い出しました。

eQSL.ccによる電子QSLは直ぐに発行してくれましたが、LoTWによるコンファームには対応していないようです。BUROもしくはSASEによる紙カード交換が必要です。

EA8BS - Canary Islands

稀にFT8で入感していたEA8BS(カナリア諸島)と17m FT4で交信できました。SNRは his/my = +02/-14dB でした。FT4で交信できるぐらいなので、その日はカナリア諸島とのパスが開けていたようです。

現地で情報交換があったのかもしれませんが、カナリア諸島の別の局も17m FT4でCQのコールを始めました。信号強度はさらに強く、一度にカナリア諸島2局と交信できるとは凄い僥倖だと思ったのですが、その局とはつながりませんでした。JA他局との打率も低いようでした。理由は不明ですが、交信できたEA8BS局は島のJA側で、交信できなかった別の局は島の反対側であることは確認できました。しかし、信号強度はより強かったため、中央の火山が障壁になったとも考えられません。

eQSL.ccによる電子QSLは直ぐに発行してくれましたが、LoTWによるコンファームはまだありません。QRZ.comにQSLは「EQSL.CC OR LoTW」と案内がありますが、「OR」の意味が微妙です。相手の立場なら「どちらかでコンファームする」の意味になり、こちらの立場に向けてなら「(両方アップするので少なくとも)どちらかでコンファームできるはず」の意味になるように思います。どちらでしょうか・・・? SASEは受け付けていないようなので、メールで問い合わせることになるかもしれません。
*** 追伸 ***
半月後にLoTWでもコンファームできました。「OR」の意味は後者でした。ありがとうございます。

カナリア諸島は、大西洋モロッコ沖のアフリカ大陸に属するスペイン領の群島です。

2つの島の山の上には望遠鏡があり、天文関係のテレビ番組で時々登場します。「遊星人の海外研究記 その7 〜カナリア諸島にて,島から島へ〜」を読むと日本の研究者も滞在しているようです。

カナリア諸島(EA8)、カーボベルデ(D4)、マデイラ諸島(CT9)、アゾレス諸島(CU)からなる地域を通称マカロネシアと呼んでいるそうです。まだ、カーボベルデ(D4)とアゾレス諸島(CU)が残っています。アゾレス諸島(CU)はFT8で見たことがあります。何時か交信できるでしょうか・・・。