QRPGuys AFP-FSK (Audio Frequency Processed - Frequency Shift Keying) Digital Transceiver III に標準で付いてくる40m/30m/20mバンドモジュールの中で最後に残った20mバンド(14MHz帯)モジュールの測定を行いました。
送信電力の測定
バンドモジュールを20m用に換装すると、バンドID抵抗の分圧値をADCで読み取り、周波数を自動的に14.074MHzに設定しました。バンドID抵抗の公差に問題は無いようです。
測定方法
送信電力はUSBオシロスコープ(AnalogDiscovery2)で測定しました。DC電源は13.8Vです。
測定結果
ダミーロード電圧のAC RMS(実効値)から送信電力を計算すると6.3W、ピーク電圧から計算すると6.1Wになりました。40m/30mとほぼ同じ値です。E級増幅による送信電力にはハイバンド化の影響は出ていないようです。
スプリアス領域における不要発射の強度の測定
測定方法
tinySAを用いた「スプリアス領域における不要発射の強度」の測定系を下記に示します。
送信出力6.3(W)は38.0(dBm)となるため、手持ちのMax. 41dBのステップアッチネータで39dB減衰して-1.0(dBm)をtinySAに入力しました。
tinySAはPC上のtinySA-Appから制御しました。周波数掃引範囲は10~75MHzとしました。分解能帯域幅RBWは自動設定とし、周波数掃引点数を変えて測定を繰り返しました。
測定結果
最も強度が高い不要発射は掃引3,000点時の第三高調波-51.3(dBc)でしたが、スプリアス規格を満たします。
第二高調波は平均-57.0(dBc)となり、無調整のウェーブトラップによって良く抑えられています。
スプリアス規格を満たしましたが、バンド周波数が上がると余裕が小さくなることが分かりました。次の17mは、第三高調波が境界条件上に比掛かるか、規格をオーバしそうな予感がします。経験上、第三高調波が規格を満たさない場合は、簡易なウェーブトラップの調整ではなく、LPFの段数を増やす改造が必要になります。
帯域外領域におけるスプリアス発射の強度の測定
測定方法
USBドングルSDRのSDRplay(RSP1A)を用いて「帯域外領域におけるスプリアス発射の強度」を測定しました。測定系統図と測定の様子を下記に示します。
送信出力6.3(W)の38.0(dBm)に対して、20dBカプラで分岐し、手持ちのMax. 41dBのステップアッチネータと20dB固定アッチネータを通して減衰し、-43.0(dBm)の信号をSDRplayに入力しました。
測定結果
SDRplayへの入力信号の測定強度は-44.4(dBm)でした。公称値による机上の概算予想-43.0(dBm)との乖離は1.4(dBm)でした。終段の温度上昇によって出力が減少する影響もあると思います。受信強度としては、S9+30dB弱の表示です。
帯域外±10kHzの領域のスプリアス発射の強度は-92.6(dBm)以下でした。帯域外領域におけるスプリアス発射の強度は基本波より48.2(dB)低い値となり、許容値に収まります。絶対値は1.2(mW)となり、こちらも許容値に収まります。
SDRplayとPCソフトウェアSDRunoの組み合わせによる20mバンドのRBWは最小5.93Hzになります。周波数軸を最大限拡大した結果を下記に示します。スペクトル中心のオフセットはRBW以下でした。
以上により、QRPGuys AFP-FSK Digital Transceiver III の3バンド(40m/30m/20m)化の準備が整いました。20mバンドモジュールも、LPFのトロイダルコイルについて巻き方等の調整は必要ありませんでした。ただし、40m/30mバンドよりも余裕が少なくなっているため、ハイバンドでどうなるか予断を許しません。