非職業的技師の覚え書き

JK1EJPの技術的検討事項を中心に記録を残します。

40m QCX+の帯域外領域スプリアス発射の測定(2)

前回、プランBの間接測定(近接界アンテナ方式)による帯域外領域スプリアス発射データを得ることができました。安心したところで、プランAの直接測定(RF信号注入方式)にトライしたいと思います。

空中配線20dBカップラの製作

 41dBステップアッチネータでは減衰能力が足りない恐れがあるため、20dBカップラを作ることにしました。電気部品は購入済みでしたが、ケースと加工工具の購入を迷っていました。集合住宅には工具の保管場所も作業スペースも足りないからです。

そんな折に、またしても JE3PRM局 OM の下記 Blog の空中配線カップラに固定概念(カップラはシールドケースに入れるべし)を打ち砕かれました。

測定対象はHF帯なので、たとえノイズが混入してもスプリアス規格を満たさない方向に作用し、空中配線カップラがマイナス方向に誤った判断を誘導する可能性は低いと考えました。

JE3PRM局の上記 Blog および「トロ活」(山村著:トロイダル・コア活用百科、CQ出版社)を参考にして、手持ちの材料で製作した空中配線カップラを下図に示します。

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空中配線20dBカップラの製作

トロイダルコアの手持ちは、FT-50-77(比透磁率:2000、周波数レンジ:1 - 8 MHz)と FT-50-43(比透磁率:800、周波数レンジ:2 - 30 MHz)の2つがあり、今回は周波数レンジが 7MHz(QCX+)と 14MHz(QCX-mini)をカバーできる FT-50-43 使用しました。ただし検索をすると、FT-50-77 を使用したカップラの製作例も多数見つかります。カップラの周波数特性も良好との報告が複数あるため、材料の特性と出来上がったカップラの特性に相関関係があるのかないのか謎です。

内径 7.15 mm のトロイダルコアに 0.5mm のポリウレタン鋼線を10回巻きました。角で鋼線の膨らみが生じるため、外形 5.5mm の 3D-2V に対して塩梅良く圧入固定できました。

注意点は、3D-2V 同軸ケーブルの左端の網線を BNC レセプタクル(1次側)の GND に接続しないでオープンのままにしておくことです。これでトロイダルコア直下の網線には電流が流れませんが、芯線に対するシールドの役割は期待できます。GND に接続すると、互いに逆相の電流が流れる芯線と網線の両方をトロイダルコアに1回巻くことになり、磁力線が打ち消し合って2次側に電圧が誘起しません。

代わりに、トロイダルコアの手前で 3D-2V の外皮にスリットを入れて GND バイパス線を付け、トロイダルコアの外側を迂回して BNC レセプタクル(1次側)の GND に接続します。なお、GND バイパス線が1本では不安になる場合は、対角に2~4本配置すれば相互の磁力線を打ち消し合ってくれそうです。JE3PRM局はもっとコンパクトにして4本を配置されています。その場合は、四角いケース取り付けフランジの付いた BNC レセプタクルを使用すると良いでしょう。

2次側の網線は1次側の GND と接続しませんでした。QCX+ の GND が、USB ドングル型 SDR を介して PC の GND と接続されるのを避けるためです。これは空中配線のメリットかな?

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空中配線20dBカップ

出来上がった空中配線カップラの1次側と2次側に 50Ω 負荷を付けて電力のスプリットを測定したところ、40m QCX+ からの 38.3dBm の入力に対して、2次側 18.3dBm となり、切の良い 20.0dB カップラが出来上がりました。

USBドングル型SDRによる測定2(RF信号注入方式)

測定方法

今回用いた計測システムの構成図およびイメージ写真は下記の通りです。41dBステップ
アッチネータ(Pacific Antenna製キット)はフル減衰の41dBで使用しました。QCX+のRF出力を合計61dB減衰させて、USBドングル型SDR(RSP1A)に注入しました。

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USBドングル型SDRによる測定2(RF信号注入方式)の構成

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USBドングル型SDRによる測定2(RF信号注入方式)のイメージ
測定結果

key を連続押下した時のSDR Console の画面を下図に示します。今回は、中心周波数 fc±10kHz の測定範囲をカバーしました。

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測定結果2

緑の帯は占有周波数帯幅 BN=0.5kHz を示します。「帯域外領域におけるスプリアス発射の強度」は 62dB より低い値となり、規格の「 40dB 低い値」を満足しています。6.6W の送信電力に対して 4.2μW となり、規格の「 50mW 以下」を満足します。

前回の「近接界アンテナ方式」よりもノイズフロアが大幅に下がり、帯域外領域に向けてパワーの減衰曲線を綺麗に顕在化することができました。