- 別冊CQ ham radio QEX Japan No.40 の表紙
- QCX-miniのスプリアス領域における不要発射の強度
- スプリアス領域における不要発射の測定方法
- スプリアス領域における不要発射の測定結果
- 20m QCX-miniのLPF
別冊CQ ham radio QEX Japan No.40 の表紙
別冊CQ ham radio QEX Japan 最新号 No.40 の表紙を QCX-mini が飾りました。記念に早速購入しました。「手のひらサイズのQRPトランシーバ;QRP Labs“QCX-mini”の組み立てとCAT 活用」と題する解説記事が12ページに渡って掲載されています。国内の雑誌に QCX に関連する記事が掲載されるのは、同じ著者 JA1RPK 川名 OM による元祖 QCX についての解説記事がCQ誌(CQ ham radio 2019年8月号)に掲載されて以来2回目かと思います。
今回の解説記事には、非職業的技師も経験した QCX-mini 組み立ての注意点がまとめられています。特にウレタン線のエナメルを溶かすコテ先の温度設定などは経験値が無く苦労したので、もっと早く読めていればと思いました。CATも将来活用してみたい機能です。
記事で述べられている QCX-mini のエンコーダのクリックに連動したノイズは、非職業的技師も気になっていました。川名 OM は、QCX-mini の Audio 出力に DSP フィルタを適用して解決されています。これを発展させていくと、SDR(Software Defined Radio:ソフトウェア無線)に近づいていくのではないかと思いました。
QCX-miniのスプリアス領域における不要発射の強度
既報(QCXのLPFについて - 非職業的技師の覚え書き)の 40m QCX+ に続いて、20m QCX-mini の「スプリアス領域における不要発射の強度」を調べました。個体差がありますので、あくまで非職業的技師が組み立てた個体についての特性になります。

TCXO基板の修理
本題の前に、TCXO(温度補償型水晶発振器)オプション基板(上写真の青い3連の可変抵抗器の上方のスリット付き基板)に「あ!」っと驚く製造ミスがありましたので、修理記録を記しておきます。
TCXO基板には2個のコンデンサが90度方向違いに実装されています。目視確認(重要!)中に違和感がありました。銀色に輝くパッドがあるのです。このような小さな基板にテスト用のパッドなんて設けるのかなあ・・・?、と疑い写真と見比べると、なんとコンデンサが2つとも同じ方向を向いているではありませんか。コンデンサの1つの方向を90度間違えて片方の電極しかはんだ付けされていないため、銀色に輝くパッドが残っていたという訳です。表面実装部品なのでマウンター(吸着部品の位置姿勢計測用カメラが付いている)で実装していると思うのですが、こんな製造ミスにお目にかかれるのもキットの醍醐味?と考え、老眼に鞭打ってはんだ付けをやり直しました。
写真の通り、非職業的技師による修理でも無事に稼働しているようです。なお、計3個のTCXO基板を購入しておりますが、製造ミスがあったのは1枚だけでした。
スプリアス領域における不要発射の測定方法
閑話休題、以下の手順でスプリアス測定を行いました。
- パワーの計測
- ステップアッチネータの減衰量の適正化
- スプリアスの測定
パワーの計測
スペクトルアナライザ(tinySA)への過大入力を防止するために、まず QCX-mini の RF パワーをダミーロード(QRP Labs)のピーク電圧から正確に把握しました。ダミーロードにはピーク電圧計測用のキャパシターが搭載されていますが、清流用ダイオードの電圧降下が計測誤差になるため、USB オシロ(Analog Discovery 2)を使用して 50Ω 抵抗両端のピーク電圧を測定しました。計測方法と計測結果を下記にまとめます。
13.8V 電源で駆動した 20m QCX-mini のRF パワーは、10 回の試行で 3.4[W](35.4[dBm])となりました。

20m QCX-mini のパワー計測方法と計測結果
ステップアッチネータの減衰量の適正化
次に、間に 41dB ステップアッチネータ(Pacific Antenna)を挿入して、減衰量の適正化を行いました。アッチネータの ON / OFF プッシュボタンを慎重に操作して、減衰量の読み値と測定値の校正を調べた結果を下記にまとめます。抵抗の誤差から予想されるより、正確な減衰量が得られていました。
tinySA への入力を 0[dBm] 以下に抑えるため、アッチネータの減衰量は 36[dB] とし、tinySA への入力は -0.662[dBm] としました。

スプリアス領域における不要発射の測定結果
下図に示すように、ダミーロードを tinySA に付け替えてスプリアス測定を行いました。PCアプリの tinySA-App を使用すると、本体の周波数掃引点数を上回る測定結果が得られるため、比較を行いました。

スプリアス領域における不要発射の測定方法
周波数掃引290点

tinySA 本体の周波数掃引点数 290 と同じ設定で測定を行いました。RBW(分解能帯域幅)の設定は Auto にしました。RBW との関係は定かではありませんが、チャートの周波数軸の bin 幅は 172kHz になります。
基本波(14.020MHz)の強度は 0.094[dBm]、第二高調波(28.040MHz)の強度は -56.3[dBm]、両者の比は -56.4[dBc] となりました。基本波の強度(35.4[dBm])から計算すると、第二高調波の強度は 7.9[mW] になります。スプリアス規格(50mW以下であり、かつ、基本周波数の尖頭電力より50dB低い値)を満足します。
RBW を最小の 3kHz に設定して測定を繰り返しましたが、同様の結果となりました。測定時間が長くなるため、以下の測定では RBW の設定は Auto にしました。
周波数掃引500点

基本波の強度は 0.375[dBm]、第二高調波の強度は -56.5[dBm]、両者の比は -56.9[dBc] となりました。基本波に対する第二高調波の強度は 7.0[mW] になります。スプリアス規格を満足します。
周波数掃引1,000点

基本波の強度は 1.281[dBm]、第二高調波の強度は -56.1[dBm]、両者の比は -57.4[dBc] となりました。基本波に対する第二高調波の強度は 6.3[mW] になります。スプリアス規格を満足します。
周波数掃引3,000点

基本波の強度は 1.375[dBm]、第二高調波の強度は -56.5[dBm]、両者の比は -57.9[dBc] となりました。基本波に対する第二高調波の強度は 5.6[mW] になります。スプリアス規格を満足します。
周波数掃引10,000点

基本波の強度は -1.625[dBm]、第二高調波の強度は -57.5[dBm]、両者の比は -55.9[dBc] となりました。基本波に対する第二高調波の強度は 8.8[mW] になります。スプリアス規格を満足します。
まとめ
下記表に上記の結果をまとめます。値のばらつきは試行回毎の測定のばらつきと思われます。tinySA の周波数掃引点数および自動設定される RBW に係わりなく、スプリアス規格を満足する同様の結果が得られました。
ただしノイズフロアは、掃引 290 点の時の約 -65dBm から掃引 10,000 点では -80dBm 以下に改善し、第二高調波がより存在感を増して顕在化します。

20m QCX-miniのLPF
40m QCX+ の時と同じように、LTspiceによる回路シミュレーションに基づいて、20m QCX-mini の元祖 LPF(元々付いていたLPFを「元祖LPF」と称する) の特性を調べました。

このチェビシェフフィルタは、基本波(14MHz)に対して第二高調波(28MHz)を47.7dB 減衰させる能力があります。測定結果から逆算すると LPF の前段で、基本波に対して第二高調波は -8.2dBc 程度の強度を元来もっていそうだと推測できます。
20m QCX-mini の元祖 LPF は リップルのピークを14MHz帯の後ろに設定しているためか、CW 運用帯域で -0.4dB の損失となっています。40m QCX+ は 0dB を確保していました。これが少し出力が小さい原因でしょうか?
20m QCX-mini の元祖 LPF は、スプリアス規格をある程度の余裕を持って満足しているため、CWAZ フィルタに改良する必要がないことが判明しました。そこで、損失をゼロにするという観点で改良を検討してみたいと思います。