AFP-FSK Transceiverでは10.000MHz標準電波をアンテナの関係で受信できなかったため、以下の手順で周波数の校正を行いました。
- 10.000MHz標準電波によるSDRplayの周波数校正
- AFP-FSK Transceiverからの送信試験とSDRplayによる受信
- AFP-FSK Transceiverの周波数校正
USBドングルSDRのSDRplay RSP1Aが周波数校正でも役に立ちました。
SDRplayの周波数校正
自動校正
SDRplayのPCソフトSDRunoは自動キャリブレーション機能を持っているため、機器任せで簡単に済むことを期待しました。RX CONTROLパネルのSETT.メニューの中にある校正パネルに従い、10.000MHz標準電波を受信して以下の手順を実行します。
- SAM(Synchronous AM)モード選択
- DSBモード確認
- VFOを校正用電波の公称周波数に設定
(この時点では真の周波数からはズレている。) - 自動キャリブレーション・ボタンをクリック
マニュアルに原理の説明はありませんが、受信したDSB変調波から検波に必要な基準搬送波をSAMモードの同期検波によって再生し、VFO公称周波数と基準搬送波再生周波数との差分がゼロになるように校正する・・・のではないかと想像しています。スペクトルの最大値を取れば簡単そうですが、RBW以下の精度は達成できないため、SAMモードを利用しているものと思います。
ところが、10MHzの標準電波に適用しても上手く校正できませんでした。何回も自動校正ボタンをクリックして偶然上手く行ったと思っても、周波数軸を拡大すると10Hzほどずれています。10Hzはわずか1ppmにすぎませんが、SDRunoの30mバンドのRBWは0.95Hzのため、RBWの10倍程度ずれていることになります。室内ミニホイップ・アンテナを使用してBias-Tをアクティブにしましたが、受信電波が弱すぎるのかもしれません。
手動校正
これなら目視で合わせた方が正確です。RX CONTROLパネルのSETT.メニューではなく、MainパネルのSETT.メニューの中に直接CRYSTAL CALIBLATIONの値を入力するボックスがありました。こちらに-1.05ppmを入力すると目視ではピタリと校正が取れました。10MHzの-1.05ppmは-10.5Hzになるため、1目盛り左に動かしたことになります。TCXOでも±2ppm程度の変動はあるため、この辺が校正限界と判断しました。
AFP-FSK Transceiverの周波数校正
10.000MHz標準電波による校正の試行
SDRplayと同様に、10.000MHz標準電波による周波数の校正を最初に試行しました。30m Band moduleが必要になるため、キットに付属していた30mと20mのBand moduleを組み立てました。
30m Band moduleを取り付け、VFOを9.999MHzに合わせてWSJT-xで受信します。10mのアンテナが無いため、20mモービル・ホイップのエレメントの調整代を最大に伸ばして流用しました。AFP-FSK Transceiverのダイレクト・コンバージョン受信回路によって、ウオーターフォールに1kHzを中心にした2本の線が表れるはずでしたが、ノイズと同レベルの細い線しか視認できませんでした。整合範囲の狭い20mモービル・ホイップの流用では、Bias-Tによるアクティブ・ミニホイップ・アンテナに勝てないのかもしれません。
SDRplayによる周波数校正
40m Band moduleに戻し、校正の取れたSDRplayを原器として、AFP-FSK Transceiverの校正を行うことにしました。系統図を下記に示します。Dummy LoadあるいはAFP-FSK Transceive本体から漏洩する電磁波をSDRplayで拾います。
AFP-FSK Transceiverは強制送信テストピンを使うと、FSK計算は行わずにVFO表示周波数で送信します。40m FT8 ノミナルの7.074MHzのVFO表示で強制送信を行うと、SDRunoでは-760Hzずれた位置にスペクトルが立ち上がりました。+760Hzの校正が必要です。
AFP-FSK Transceiverのスイッチで校正モードに切り替えます。ここで強制送信を解除する必要がありました。強制送信のソフトウェアはテストピンを監視するだけの無限ループになっているため、テストピンを解除しない限りメニュー操作のUIポーリングに状態遷移できません。当然、解除すれば送信が止まり、SDRunoから校正の指針となるスペクトルが消えてしまいます。専用コードを書く必要があるのか・・・。
万事休すと思ったのですが、送信を止めてもSDRplayはMS5351Mからの漏洩電磁波を捉えているようでした。MS5351Mからの送信用Clock信号を止めても、ダイレクトコンバージョン受信用Clock信号は活きているはずです。FSK演算を行わない強制送信テストでは両者は一致します。
漏洩電磁波の強度は小さいのですが、SDRunoのウォーターフォールを光らせるには十分です。漏洩電磁波の軌跡を追えば校正は容易です。
校正結果をEEPROMに書き込んで、強制送信テストを行い、VFO表示通りの送信周波数が出ていることを確認できたら終了です。