非職業的技師の覚え書き

JK1EJPの技術的検討事項を中心に記録を残します。

室内ロングワイヤーアンテナはSWR1.0の夢を見るか(16)

SASE返信着

3月22日に発送したSASEの中から、UN(Kazakhstan)のQSLカードが早くも4月9日にドイツから到着しました。室内LW x 10Wの設備による中央アジアの局との交信は困難を極めるため、貴重なQSLカードです。UN9GD局とは昨秋のCQWW-DX CW 2023コンテストにて交信しました。

GSが必要以上だったとのことで、親切にもデザイン違いの新旧2枚を送ってくれました。上のQSLカードには、4-eleキュービカルクワッドアンテナの写真がデザインされていました。さすがにコンテストステーションです。下のQSLカードには、カザフスタンの新首都Astanaの景観がデザインされていました。黒川紀章氏の都市計画に基づいて建設されている近未来的な景観の都市です。しかし、QRZ.comのロケーション表示は旧首都のAlmatyになっています。Astanaが現代のカザフスタンの象徴的な景観ということかと思います。

Antarctica

南極との交信の成就

昨年7月に申請したWACアワードの対象は6大陸(AS、OC、NA、SA、EU、AF)であり、残るAN(南極)とは未交信でした。

3月末の夕刻に、その南極から聞こえてきたRI1ANE局と10mバンドで交信できました。RI1のプリフィックスを室内LWアンテナで聞くのは、昨年に続いて僅か2回目です。信号は弱かったのですが、クラスターには上がっておらず、チャンスと思いコールしました。記憶の細部は定かではありませんが、おおよそ以下のような感じで困難な交信は進みました。

  • RI1ANE局のCQに対して、コールサインを1回送信。
  • コールバックに全神経を集中。コールバックがありました。室内LW x 10Wでも南極まで届いたようです。しかし、やはり10Wは厳しい!・・・2文字違います(JK1EJP ⇒ JK1EOW)。訂正依頼のコールサインを2連続で再送。
  • 再びコールバックに集中。惜しい!・・・1文字違います(JK1EJP ⇒ JK1EOP)。「E」のDitと「J」の頭のDitが分離されないことは良くあります。今度は文字間隔を長めにして、訂正依頼のコールサインを2連続で再々送。
  • みたびコールバックに集中。ここにきてQSBが発生。空耳コピー気味になってしまいましたが、正しいコールバックが帰ってきた空気感(コードの長さ等)を感じることができたため「599 TU」を送信。粘り過ぎて正しいコールバックに訂正依頼を送ると、相手局が混乱もしくは諦めてNILになってしまう可能性があります。自分の空耳第六感を信じます。
  • 「・・・(ノイズ)・・・」。QSBに沈んだか?・・・「599 TU」を再送。
  • 「73 TU」を確かに受信。QSLコンファームまで安心できませんが、南極との交信が成就しました。室内LW x 10Wの微弱電波を粘り強く拾い上げてくれたRI1ANE局に感謝。

当日は、CQ誌2024年4月号のColumnに書かれている「赤道異常」が発生していたのかもしれません。数日前に太陽フレアが観測されており、交信の翌日に太陽からの荷電粒子が地球に到達してデリンジャー現象が発生しました。交信が不可能になる前日にタイミング良く僥倖があったことになります。

eQSL

RI1ANE局のQRZ.comのページにはQSLの多岐に亘るオプション「OQRS, direct, bureau, LOTW」が掲載されています。しかし、いち早くコンファームできた手段は、このオプションの中には無いeQSLでした。

eQSL.ccには南極大陸を加えた7大陸eWACアワードが設定されています(6大陸から申請可)。その意味で、eQSLを発行してくれるのはありがたい限りです。残念なことに、アフリカからのeQSLが7大陸eWACに不足していました。

Progress基地

eQSLに記載されている通り、RI1ANE局はProgress基地からのQRVになります。

Progress基地と昭和基地の場所を調べてみました。Progress基地の経度は76°で、インドの真下あたりです。一方、昭和基地の経度は39°で、南アフリカ大陸の東岸とマダガスカルの間ぐらいに位置します。

経度間の距離は南極点に向かって収束していくため、大圏地図で東京から見ると両基地間の距離は大きく離れている訳ではありません。ただし、JARL NEWS 2024年春号を読むと、昭和基地の8J1RLはFT8中心の運用になっている様子のため、CWによる交信の機会は無さそうです。

eQSL.ccアワード

eQSL.ccのアワードを調べていたところ、3つのアワードの要件を満たしていることが分かりました。電子発行の手軽さからか、他のアワードよりも少ない要件から始めて、高い目標にチャレンジできるように設定されています。

eWACアワード

上記で述べた通り、6大陸とのeQSL交換で申請可能なアワードですが、全7大陸との交信で追加認証書が得られます。本来、南極が最後に来ることが想定されているように思いますが、今回はアフリカを残しての申請となりました。

電子発行の利点を生かして大陸名の特記等が柔軟に入るとIARU発行のWACアワードと差別化できると思ったのですが、システムの都合からか特記等を柔軟に入れることはできないようです。「CW」の特記が入っているように見えますが、これは予め準備されていたCWのEndorsment(承認依頼)リンクから申請したからです。

eDXアワード

25のCountryとのeQSL交換で申請可能なアワードです。今回は30 Countriesでの申請となりました。

25刻みで更新可能で、100 Countriesに到達したら別のeDX100アワードに切り換えることになるようです。eDX100アワードはモード別に申請可能ですが、このeDXアワードにはMixedモードの1つしかありませんでした。DXCCの入門編のようなアワードですが、CWモードのeQSLを集めるのはLoTWのQSLを集めるより難しいかもしれません。

Countryは eDX100 Country List に定義されています。DXCCのエンティティと異なるのかどうかが興味のあるところですが、日本を調べたところ、Japan、Ogasawara、Minami Torishimaの3つはリストに入っていました。

eJapanアワード

日本のコールエリアを独自に12のエリアに拡張し、10のコールエリアとのeQSL交換から申請可能なアワードです。今回はAJDと同じ10コールエリア(0~9)での申請となりました。

コールエリア 10 は JD1(小笠原もしくは南鳥島)、コールエリア 11 は8J1(南極の昭和基地)です。どちらのeQSLも入手するのは難しそうです。

eQSL.ccアワード申請手順の備忘録

eWACアワードを例にして、申請手順の備忘録を残します。

Step 1. アワードメニュー

①「My Awards」アイコンをクリックしてMy Awardsページに入ります。

eQSL.ccのアワード申請は有料のBronze会員以上からできるようです。無料のITサービスはどこかで課金をしないとサービスを維持できないのですが、eQSL.ccの場合は独自デザインのeQSL発行オプションとアワード申請オプションの組み合わせがBronze会員以上のオプションに設定されています。課金はBronze会員費だけで、今回申請した3つのアワードの申請料は無料でした。

既製デザインのeQSL交換が無料に設定されているのは、IT業界特有の「ネットワーク効果の外部性」(利用者が増えれば増えるほど利用者が受け取る便益が大きくなる特性)を狙ってのビジネスモデルと思います。「ネットワーク効果の外部性」を狙うのはLoTWも同じですが、LoTWのQSLは情報だけでカードデザインが無いため、コスト回収の課金は主にアワード申請に対して行われるようです。よって、LoTWのアワード申請料については高額気味と感じられるようです。JARLが電子QSLを導入するとしたら、ビジネスモデルはどうなるのでしょうか。「ビジネス」は狙わないということで、「ネットワーク効果の外部性」には目を瞑る(会員専用とする)のでしょうか。

Step 2. eWACアワードの規約確認

アワードメニュー画面を下にスクロールして行くと、eWACアワードのメニューが表れます。

②「Rules」リンクをクリックして、eWACアワードの規約ページに入ります。

長い規約が並んでいます。 eWACアワードの具体的なルールは第9条に書かれていました。7大陸の中の任意の6大陸との交信でeWACアワードが得られること、全7大陸との交信で追加認証書が得られることが記載されています。

その下の第10条に「交信証明は送付したeQSLではなく、本人確認証書を保有するハムから受け取ったeQSLに与えられる」と書かれています。この文言には違和感がありました。交信証明は、交換が成立したeQSLに対して与えられると思っていたからです。ここは、LoTWとは異なるeQSLのシステムに由来する文言かもしれません。LoTWは事前ブラックボックス照合システムです。首尾良く双方のログが事前に照合された場合のみ、QSL情報を受領することができます。一方、eQSLは事後照合可能なシステムです。受け取ったeQSLは全て表示され、送付ログと照合できなかったeQSLに対しては、新たにログを追加送付して受領するか、受領拒否をするかを事後に決定できます。

第10条が規定したいのは「an approved Authenticity Guaranteed certificate(承認された真正保証書)」の方かもしれません。これは、局免等の本人確認書類の写しを添えて承認を依頼し、発行してもらう証書です。

この保証書が無くてもeQSLを発行できますが、受け取った相手局はeQSLに真正保証書が付いていないとアワード申請には使えないことになります。

第10条の下に附帯第10a条があり、「この賞のAwardMaster(Manager?)は、申請されたクレジット(要件を満たすQSO)を確認するために、受領したeQSLが送付されたeQSLと十分に一致しているかどうかを独自の裁量で判断することができる」と書かれています。今回申請した3件のアワードは、LoTWのアワードと同様に、eQSL交換が成立したQSOに対してクレジットが与えられました。

Step 3. eWACアワードの要件充足状況の確認

Endorsement(承認)申請欄のCWの③「Standings」リンクをクリックします。Standingsは順位表あるいは勝率表という意味のようですが、ここでは「要件充足状況一覧表」ぐらいの意味かと思います。クリックによって下記画面が開きます。

この画面にも、附帯第10a条についての記述がありました。eQSLの送受が一致した「コンファーム済み」クレジットのみをStandings表でカウントするように、2023年9月から変更されたとのこと。附帯第10a条が追加されたのは最近のようですね。その前までは受領したeQSLのみによってクレジットをカウントしていたのかもしれません。

なお、附帯第10a条に対応してシステムを改修した影響か、初期画面では全てのクレジットが「Unconfirmed」になっていました。Bugか?と思い、表の下の方のボタンを無暗にクリックしたところ、「Y」に変わりました。そのボタンは一度クリックすると不可視属性に変わるらしく、どのボタンであったか備忘録に残すことができません。

Step 4. eWACアワードの印刷

Standings(要件充足状況一覧表)の確認によって、必要な要件に到達していることが確認できるとPDFのeWACアワードが作成されます。eWACアワードのメニュー画面に戻ると、Certificate欄にPDFアイコンが追加されています。④「Print your certificate!」リンクをクリックすると、eWACアワードをダウンロードできます。