日乗
連休中は、午前中に磁気嵐が吹き荒れて国分寺上空の電離層が霧散してしまうことが多く、あまりコンディションは良くありませんでした。CQ誌2024年5月号のDX Newsに紹介のあったSolar activityグラフの「31日間の太陽活動推移」を下記に引用します。
連休に入る前はSSN(Sunspot Number:太陽黒点数)が280を超えていましたが、連休は前半と後半でSSNの谷間を挟む形になりました。連休が終わると、SSNの上昇は今一つですが、SFI(Solar Flux Index)は上昇し、5/9には連休前を超えました。最近は太陽活動が活発過ぎてか、立て続けに太陽フレアが発生しているとのこと。SFIが上昇しても、短波通信のコンディションは良くない模様です。
そんな中でも、連休中の午後にコンディションが回復する時に、DXとのパスが開けることがありました。
3D2CCC(Conway Reef)
3G0YA(Easter Island)および A52CI (Bhutan)とはパイルに埋もれて交信できませんでしたが、3D2CCC(Conway Reef)とは室内LWが苦手とする20mバンドで交信できました。
Conway Reefはフィジー共和国に属する環礁ですが、フィジーとは別のエンティティになっています。環礁は海鳥の営巣地になっており、人を恐れぬ鳥によってアンテナを破損する等困難な状況でQRVしてくれたようです。
High Band側で強く入感する日があり、初回のCQを捉えることができたため、正直「頂きました」と思って呼んだのですがコールバックは帰って来ませんでした。誰にも応答せずCQを連発した後にQRXしてしまいました。その後、再会した時にはUp側に1KHzズレており、なぜかUp指定に対してオンフレで呼ぶ局ばかり取っていました。秩序を取り戻そうと「Up Up」を代弁する局がいらっしゃいましたが、オンフレに気付いた局しか交信できないためカオス状態です。おそらく、スプリット運用に不具合(送受の周波数が切り換わらない等)を生じていたのではないかと推測しています。カオス状態のパイルの中では室内LW x 10Wは無力です。
室内LWが得意とするのはHigh Band側(15/12/10m)ですが、そこは八木アンテナのQRO局との競争が待つ場でもあります。初回のCQを捉える等の僥倖は何度もある訳ではありません。そこで、室内LWが不得意な20mバンドを探っていたある日、3D2CCCの(他局が聞こえなかっただけかもしれませんが)小さなパイルを発見しました。こんな時のコンディションは悪く、受信音は掠れて濁ったような音になりQSBもあります。ボリュームを右に大きく回してパイルに参加しました。すると、コールバックがありましたが、やはりコールサインが正しく空耳に響きません。前回報告の南極との交信に似ていますが、訂正依頼の再送を2回繰り返したところ、正しく空耳に響くコールバックが帰って来ました。確信は持てませんでしたが、ここで「599 TU」を送信して吉報を待つことにしました。
日本の漁船も含めて過去に何隻も難破している環礁から、波の静かな日に船に戻らないとログをアップできないとのことで数日待ちました。ログ最終更新日付が交信日を超えたところでClubLogの検索を掛けましたが、「No QSO」で落胆。しかし、FT8のログ更新とCWのログ更新には時間差があることが経験則で分かっています。諦め切れず、後日、ClubLog検索に再チャレンジしたところ、今度はログイン実績が表示され安堵しました。
XU7GNY(Cambodia)
各バンドでJAのローカル局かと誤解するぐらい強力に入感していました。その理由(パワー、アンテナ、ロケーション)を調べようとしましたが、分かりませんでした。
昨年に続いて2回目のPeditionらしく、需要を満たしているためか、CQをキャッチできれば室内LW x 10Wの設備でも1stコールで交信できました。カンボジアとは6mバンドの交信実績しかなかったのですが、HF High Band側のスロットの多くが埋まりました。
IQ4PI(Italy)
A.R.I.(Associazione Radioamatori Italiani:イタリアアマチュア無線協会)のピアチェンツァ支部局と訳せば遠からずと思います。ピアチェンツァはイタリア北部のミラノとボローニャの間にある都市です。
社会人になって最初の海外出張で、ボローニャ大学で開催された学会に参加しました。なお、当時の海外出張は一律ビジネスクラスを利用でき、夢のような時代でした。ミラノからボローニャまでは電車で移動したため、ピアチェンツァを通過していたと思われます。思い出深い所と交信できました。ただ、夜間の移動だったため、車窓の風景が一切記憶にないことが残念です。
EI2HI(Ireland)
聞き慣れないコールサインのCQがスロースピードのCWで入感しました。調べてみるとアイルランドの局でした。アイルランドと言えば、これまた社用でダブリンのトリニティ・カレッジを訪問したことがあります。これも思い出深く、信号は弱くQSBもありましたが、是非交信したいと思いチャレンジしました。
コールすると「?」が帰って来ました。再コールすると再び「?」。無理か・・・と諦めかけました。しかし、こちらのプリフィックスさえ取れない状況では、普通は「SRI WEAK」か「CQ CQ ...」になるところ、CWなんだから弱くてもコピーしてやろうとの心意気を感じました。QSBの山に乗せるため、コールサインを5回送出。今度は「R R R」(コピーできたよ!)が帰って来ました。
このコンディションでは早々に「599 TU」でお暇し交信を成立させるところ、先方からはOp名が送られてきました。こちらも慣れない打鍵スピードと焦りのために誤打を繰り返しながらも、先方のOp名を復唱し、こちらのOp名を5回送出します。再び「 R R R」とこちらのOp名の復唱が帰って来ました。TNX HUGH SAN!
QTHの交換までは至りませんでしたが、QRZ.comを調べるとアイルランド南部のコーク州バンドン郊外でした。
伏線を敷くため、ダブリンのトリニティ・カレッジの思い出に話を戻します。前述のボローニャ大学はヨーロッパ最古の大学ですが、ダブリン大学トリニティ・カレッジはアイルランド最古の大学です。その図書館にはアイルランドの国宝である装飾写本「ケルズの書」が収蔵されています。実物を見てきました。
ラテン語で書かれているため読むことは能いませんが、見て楽しむことはできます。文頭の一文字目にはセルティック大文字書体が装飾されて使われ、その他の文中の文字にはインシュラー書体が使われているそうです。
西洋において文字を美しく見せるための手法は「カリグラフィー」と称されています。「西洋ペン書道」と言えば遠からずと思います。書道と同じく、カリグラフィーは手書きでこそ意味を成します。しかし、電子化の波はカリグラフィーを我々から遠いものとしてしまったようです(後ほど伏線回収)。
「ケルズの書」に伍する日本の国宝は「源氏物語絵巻」ではないでしょうか。「ケルズの書」は西暦800年頃(平安時代初期)に制作されたとされています。源氏物語自体は平安時代中期の作、「源氏物語絵巻」は平安時代末期の作になるようです。今年のDX用QSLカードのデザインは「源氏物語絵巻」の一場面としました。国内向けには大河便乗のステレオタイプになってしまうかもしれませんが、海外の反響はどうでしょうか。EI2HI局には「ケルズの書」に関するメッセージを添えて、「源氏物語絵巻」のQSLカードをSASEで送付する予定です。
SASE返信着(第二弾)
3月22日に発送したSASEの中から、前回報告のUN(Kazakhstan)に続いて、JT(Mongolia)のQSLカードが5月1日に到着しました。モンゴルの日没にかけて強く入感することはありますが、室内LW x 10Wの設備による交信は困難を極めるため貴重なQSLカードです。
上記2つのコールサインは同じOpの方であることは分かっていましたが、ログ管理は別々である可能性があるため返送処理をシンプルにできればと考え、別々のSASEとしました。2つ送付したのは交信不成立のリスクヘッジのためです。実際、計3回のログを記したのですが、返送されたQSLカードに記されたログは2回分だけでした。欠落した1回分はコールバックをミスコピーしていたものと思われます。
VOTA(自動参加)の結果
CQ誌2024年5月号にVOTAアワードの取得方法の紹介がありましたので、成果を確認してみました。VOTA(Volunteers On the Air)とは、ボランティアによって支えられているARRLの昨年2023年の取り組みです。
室内LWアンテナを仮設して最初に交信したDX局が、VOTA臨時運用局(W1AW Portable Stations)の1つとしてハワイ州で運用中だったW1AW/KH6でした。VOTAとは縁を感じます。
ポイントは交信相手局のARRLの役職によって異なり、ARRL Memberの1点からARRL Presidentの300点まで幅広く設定されていました。なお、臨時運用局のW1AW ARRL HQ Stationは100点でした。残念ながら、室内LW x 10Wの設備で交信できた臨時運用局はハワイ州とアイオワ州の2州に留まりました。その他の交信相手局の付与ポイントは知りようがないのですが、合計ポイントはLoTWが自動的に集計してくれます。電子QSLシステムの威力ですね。
交信数は159、ポイントは1,496点でした。ARRL Member(1点)以上のボランティア役職の局と多数交信できたようです。自動参加総数を調べたところ73,040局でしたので、相対ランクは 22,311 / 73,040 = 30.5%でした。
名前を入れて画面左下部のボタンをクリックすると、PDFのCertificateをダウンロードできます。
LoTWアワードの進捗状況
前回、室内LW x 10Wの設備によるeQSL.ccアワードの達成状況を記しました。今回はLoTWから申請できるアワードの獲得に向けた進捗状況を調べました。
10WのCWではパイルを抜けないため、どこかの段階でCWモード単独での達成を諦めて、DigitalモードとのMixedに変更しないと見通しは明るくならないと思います。ただし、連続送信するDigitalモードは電波障害の杞憂がまだ拭えないため、今しばらくはCWモード単独で運用するつもりです。
LoTW ARRL DXCC (DX Century Club)
達成状況:
70/100 Entities (カードを含めると77/100)
見通し:
残り23となりましたが、春のペディション局の攻略状況は揮いません。秋に期待ですが、残数から見て見通しは明るくありません。秋に向けてEU局との交信を増やすために、QROは無理として受信能力の向上が必要と考えています。特に、エコーへの対応が課題です。
LoTW ARRL WAS (Worked all States)
達成状況:
26/50 States
西海岸を中心に半分強までは到達しました。下記WASマップの緑実線〇はLoTWコンファーム済みの州、緑点線〇は未コンファームの州、赤実線△は未交信の州です。
未達成の州:
- 1エリア(ニューイングランド)
4/6州未達成
Massachusetts (MA), Rhode Island (RI), Connecticut (CT), Vermont (VT) - 2エリア(大西洋岸中部)
1/2州未達成
New Jersey (NJ), - 3エリア(大西洋岸中部・大西洋側南部)
2/3州未達成
Delaware (DE), Maryland (MD), - 4エリア(大西洋側南部・東南中部)
6/8州未達成
Virginia (VA), North Carolina (NC), South Carolina (SC), Georgia (GA), Kentucky (KY), Alabama (AL) - 5エリア(東南中部・西南中部)
3/6州未達成
Arkansas (AR), Louisiana (LA), Oklahoma (OK) - 6エリア(太平洋側)
達成 - 7エリア(太平洋側・ロッキー山脈地帯)
2/8州未達成
Idaho (ID), Wyoming (WY) - 8エリア(大西洋側南部・東北中部)
1/3州未達成
West Virginia (WV) - 9エリア(東北中部)
1/3州未達成
Indiana (IN) - 0エリア(ロッキー山脈地帯・西北中部)
4/8州未達成
North Dakota (ND), South Dakota (SD), Nebraska (NE), Kansas (KS)
見通し:
東海岸の他、中部の州も多数取りこぼしています。今後、微増は可能かもしれませんが、10WのCWモードだけで全州を攻略するのは困難と思います。
LoTW CQ WAZ (Worked All Zones) Award
達成状況:
28/40 Zones
7割達成できました。下記Zoneマップの緑実線〇はLoTWコンファーム済みのZoneです。
未達成のZone:
Zone 02 — Northeastern Zone of North America
Zone 07 — Central American Zone
Zone 10 — Western Zone of South America
Zone 12 — Southwest Zone of South America
Zone 17 — Western Zone of Siberia
Zone 21 — Southwestern Zone of Asia
Zone 34 — Northeastern Zone of Africa
Zone 35 — Central Zone of Africa
Zone 36 — Equatorial Zone of Africa
Zone 37 — Eastern Zone of Africa
Zone 38 — South African Zone
Zone 40 — North Atlantic Zone
見通し:
7割達成できたのは上首尾です。アフリカおよび南米西海岸を取れていません。今後攻略できぞうなZoneは、Zone 07 — Central American、Zone 17 — Western Zone of Siberiaぐらいでしょうか。10WのCWモードだけで全Zoneを攻略するのは困難と思います。
LoTW CQ WPX (Worked Prefix) Award
達成状況:
312/300 Prefixes
達成できました。室内LW x 10Wの設備でも、CWモードであれば達成可能なアワードであることを証明できました。詳細は下記に記します。
WPX CW 300 アワード獲得
299プリフィックスで足踏みしていたWPX CW 300をLoTW単独で達成できました。室内LWアンテナを架設してから、1年と2か月が必要でした。
記念すべき300プリフィックス目はタイのE24ZST局でした。前回報告のRI1ANE局と交信した日はコンディションが良かったのか、続けてE24ZST局と交信できました。RI1ANE局のQSLカードは「印刷待ち」とのことでClubLogのOQRSリクエストの受付が1か月近く休止していました。これにより、OQRSと連動したLoTWへのアップも遅れました(OQRS再開後の4/30にLoTW QSL受領)。そのため、直ぐにLoTWにアップしてくれたE24プリフィックスにてWPX獲得となりました。
CQ誌2023年2月号を参照すると、時代の要請により原則PDF発行だけになったようです。時代の要請とは、主にディジタルモードの普及による発行枚数の増加への対応です。ここで伏線を回収します。従来の紙のアワードは、氏名とコールサインをカリグラフィー(西洋ペン書道)による装飾文字で手書きする工数が大きかったようです。PDF版はJARLの門標のような書体になってしまい、ちょっと寂しい感じです。
追伸:Acrobat Readerで開き、印刷メニューで Micosoft Print to PDF を選んでPDFファイル保存したところ、もう少し見栄えのするボールドタイプのフォントになりました。それでもカリグラフィーには遠く及びませんが・・・。
JAプリフィックスの分析
JAはプリフィックスの宝庫ですが、LoTWの普及率が足枷になります。そこで、どの程度、国内交信がWPX獲得に貢献したかを分析しました。
下記に国内プリフィックスの星取表を示します。7Jは省略しました。行が記号、列がエリア番号です。背景緑のチェックはプリフィックスの発給があり、且つWPXクレジットを得ることができたプリフィックスを示します。背景グレーは発給のないプリフィックスを示します。背景赤はプリフィックスの発給はありますが、WPXクレジットを得ることができていないプリフィックスを示します。
発給のない背景グレーのセルの一部にもチェックが付き、WPXクレジットを獲得しています。これはWPXのルールに基づき、移動局のエリア番号は移動先のエリア番号に置換されるためです。
存在し得る国内のWPXプリフィックス総数は230で、獲得できたWPXクレジットは87(38%)でした。国内獲得数87はWPX 300の29%に該当し、約3割弱は国内交信で賄った計算になります。
交信ログとの照合は行っていませんがサンプリングをしたところ、例えば、JEは4エリアのクレジットを獲得できていませんが交信はできていました。また、1エリアは7Nのクレジットを獲得できていませんが交信はできていました。LoTWの普及率に影響されている部分です。将来、JARLの電子QSLシステムがLoTWと相互乗り入れできたとすると解決しますが、ビジネスモデルが絡むだけに実現困難と推測します。普及率を後押しするために、ワンクリックでLoTWにアップロードできる機能があると便益が向上すると思います。
申請手順の覚え書き
将来、追加申請することがあるかもしれないため、申請手順の覚え書きを残します。
幾つか入り口のリンクがあると思いますが、例えば下記のabout画面から①WPXをクリックします。
すると、WPXのAccount Status画面に遷移し、モード別、バンド別、大陸別の達成状況が表示されます。
列の「New LoTW QSLs」はWPXとして申請可能な交信数を示しています。「LoTW QSLs in Process」は申請処理中の交信数を示します。この段階ではまだ申請していないため、全てゼロになっています。「CQ WPX Credits Awarded」はCQ Magazine社からAward対象に認定された交信数を示します。一般的には、申請によって左から右に数字が移動して行きます。そして、WPX対象の新たな交信がシステムで照合されると、一旦空になった「New LoTW QSLs」に追加されて行きます。
今回は「WPX CW」がAward要件の300に達したため、このリンクをクリックします。すると、①Account Credits画面に遷移します。この画面でCredits(Awardの要件を満たした交信)のPrefixとコールサインの一覧表を確認できます。
次に、画面左カラムの①「Application(申請)」をクリックすると、申請に供するCreditsを選択する「Application - Part 1」画面に遷移します。
面倒であれば、一行目左の「Check all」をクリックしても良いのですが、Credit数に課金されるビジネスモデルのため、②「WPX CW」をクリックして必要最小限のCredit数に留めました(申請時点では過不足なく 300 Credits)。③「Update and save selections」でCredits選択結果を保存して、④「Continue ->」をクリックすると、「Application - Part 2」画面に遷移します。
ここで、一番上の① WPX CW (300/300) の New Certification 購入をチェックします。下はおそらくAsia大陸のEndorsement(承認)シールの申請用ですが、節約志向が過敏に働いてスルーしてしまいました。次回(があればですが)申請します。②「Continue ->」をクリックすると、「Application - Part 3」画面に遷移します。
住所等の個人情報①~④を諸々入力して、⑤「Continue ->」をクリックすると、「Application - Part 4」画面に遷移します。
支払額($0.12 x 300 = $36)を確認し、支払い方法を選択します。PayPalは選択肢にないため、日本からは①Credit Card支払いになるかと思います。円安もあって高額です。LoTWの使用料に相当すると考えるしかありません。回収方法が異なるだけで、本質的に無料のものはないと納得したら、②「Continue ->」をクリックし、申請を確定します。
LoTWのCredits情報がCQ Magazine社の CQ WPX Award Manager に送られた旨の確認画面が開き、これで申請終了です。
しばらくすると、 CQ WPX Award Manager から$14のPayPal請求書がメールで送られてきます。ARRL LoTWのCredit管理費とCQ Magazine社のAward発行管理費は異なることに注意する必要があります。支払いを済ませると、前記のPDF Awardがメールで送られてきます。
前記のVOTAアワードのようなOne-stopサービスではなく、要所に2つの組織の人手によるチェックが入っているため、高額になるようです。