非職業的技師の覚え書き

JK1EJPの技術的検討事項を中心に記録を残します。

室内ロングワイヤーアンテナはSWR1.0の夢を見るか(8)

厳しい残暑が続いていますが、朝晩に秋の気配を多少は感じられるようになってきました。この夏の室内LWアンテナx10Wの成果を刈り取るべく、成果物の収集に取り組んでいます。

WAC Award

申請

WAC(Worked All Continents)アワードはIARUの発行ですが、申請先はARRLになるようです。JARL会員の場合はJARLが代行申請してくれます。e-QSLは認められていなとのことですが、ARRLが運営するLoTWは使用可能です。今回は全てLoTWのデータをQSL(交信証明)として使用しました。

JARL様式のアワード申請書を使用」との指示がありますが、電子申請ページから申請する場合は、ページ入力自体が申請書に該当するため、QSLカードリストのファイルを準備するだけで済みます。

QSLカードリストの様式は特には指定されていないようでしたので、JARL発行アワード用のExcelリストを使用しました。1列目の「都道府県市郡番号」は空欄とし、備考に「大陸名」を記入しました。欄外に、各大陸のLoTW QSO Detailの画像をQSLとして貼り付けました。

このExcelファイルを電子申請ページからアップロードして完了です。後は申請手数料を振り込んで吉報を待ちます。

着荷

2023/07/10に申請したところ、約2か月後の2023/09/09にJARLから届きました。オンデマンドの処理ではなく、月次バッチ処理になるようです。リードタイムはこれより早くなることも遅くなることもあると思います。

特記は3つまで申請可能ですが、選択可能な特記は「CW」だけでした。「室内LWアンテナx10W」が心の中の特記です。

PDF全盛の時代ですが、物理的実体のある厚紙のアワードはフレームに入れればお蔵入りすることもありません。サイズは約 21.6 x 28.0 cmでした。四切(25.4×30.5 cm)のフレームなら入りそうですが、写真用の四切フレームは余白が大きくなってしまいます。A4(21.0 x 29.7 cm)のフレームでは縦寸法が少し不足しますが、賞状用のA4フレームの品揃えの中から上手く選定すればギリギリ入りそうです。

Indonesia Award 2023

SES

8月12日に聴き慣れないコールサインが聴こえてきました。8から始まるため、記念局のコールサインと思い、該当する記念イベントを調べようと聴き耳を立てていたところ、「8J」でも「8N」でもなく「8H」でした。新しいプリフィックスの発給か?と思い、調べたところ、日本の記念局ではなく、インドネシア独立78周年を記念したIndonesia Award 2023の特別イベント局(SES:Special Event Station)であることが分かりました。8月17日が独立記念日のため、8月12日から20日までQRVしていました。

しかし、Rulesがインドネシア語で記載されているためAward参加規程が良く分かりません。Languageメニューはあるのですが、英語や日本語を選択してApplyしてもWebページが反応しません。参加登録や参加番号の交換は特にはないようでしたので、普通に交信すれば良いと判断しました。

Chaser

SES数局と交信した後に「Search Chaser」ページから自局のコールサインを入力すると、参加登録をしていないのに氏名が出て来て少し驚きました。QRZ.comと連携しているのかもしれません。

背景緑の数字はSES各局のログに記録されている各Band x Mode毎のQSO実績を表し、数字はQSO回数ではなく獲得点数(SES局数 x Band別配分点数)です。SES x Band x Modeの初回のQSOのみ有効です。この規則が後述の問題を引き起こすことになります。

背景青の数字は、こちらのログを「Chaser Logger」ページからUploadして、SESのログと照合が取れた結果を表しています。ログはADIF形式でUploadしますが、タグ(列名)の構成は下記INFOに示されている通り、LoTWとは異なります。

INFO: 
(前略)
3. ADIF Minimal berisi informasi: <CALL>, <STATION_CALLSIGN>, <QSO_DATE>, <TIME_ON>, <MODE>, <FREQ>, <BAND>,
<RST_SENT>, <RST_RCVD>, dan untuk mode satelit: <PROP_MODE>, <SAT_NAME>, jika tidak lengkap maka akan terjadi Error.
(後略)

インドネシア語のINFOなので、Uploadに2回試行錯誤しました。SESのコールサインのタグ<CALL>に加えて、交信時に使用した自局のコールサインのタグ<STATION_CALLSIGN>が必要です。固定局/移動局のコールサイン等の複数のコールサインに対応するためと思われます。

さて、10m CWの背景青の数字が0点であることが分かります。これが自力では救済できないUnconfirmed問題です。

Unconfirmed

「Search Chaser」ページを下方にスクロールすると、ログの詳細を見ることができます。

上側の「Logged QSO」は、SESのログに対してUploadした自局ログの照合結果を示します。2行目の8H78I x 10mがUnconfirmedと判定されています。自局のログには存在していないため、この判定結果は当然なのです。

こちらのログには記録されているのにSESのログには記録されていないケースは、室内LWアンテナx10Wでは起こり得る問題です。しかし、これは逆のケースです。SESのログには記録されているのに、自局のログには記録されていません。Hamlogから手書きログまで追跡しましたが発見できません。困ったことに「コールバックが取れなかったあのケースかな・・・」というような記憶もないのです。可能性の1つとして考えられるのは、モールスコードが類似した他局のコールサインのミスコピーです。初日のこの日に8H78I x 20mで交信しているため、OPが同じ人であれば当局のコールサインが耳に残っていた可能性はあり得ます。

下側の「Unconfirmed Chaser Log QSO」は、こちらのログには記録されているのにSESのログには「1st QSO」として記録されていないケースです。最終日に近いこの日はコンディションが良く、余裕を持ってコールバックを確認できたため、確実にSESのログに記録されていると思います。しかしながら、8H78I x 10mは初日に1st QSOしたと見なされているため、それが連鎖してUnconfirmedとされてしまいました。Awardに対してUnconfirmedでも、QSO自体はConfirmedにして欲しいところです。LoTWのように相互ログ照合にすれば、このようなUnconfirmed連鎖問題は起きないと思うのですが・・・。

eQLS

照合が取れたQSOに対してはQSLボタンが表示され、eQSLがダウンロードできます。ボタンがWebページに表示される状態になっても、しばらくの間は動作しなかったのですが、9月10日にダウンロードできるようになっていました。

この美しいeQSLのデザインはSES各局共通のようです。WRTC 2022開催記念局やイタリア赤テント記念局II1ITRのeQSLと同じように、二次元バーコードによる交信証明機能を備えています。しかしながら、9月10日の時点ではまだ動作しませんでした。

Map

QRZ.comのMapから、交信できたSES各局の位置をプロットしてみました。

コンテストで比較的容易に交信できるフィリピンやブルネイ、そして今年DXペディションがあった東ティモールに囲まれるエリアになります。室内LWアンテナx10Wでは聞こえても届かないということが何回もありました。

Statistics

SES各局のQSO集計分析結果が公表されていました。興味深い分析結果を引用します。

左側がモード別のQSO数、右側がバンド別のQSO数です。FT8の割合が50%を軽く超えています。次にSSBが来て、両者で90%近いのではないでしょうか。アワードを狙うにはFT8が必須のようです。
バンド別では40mの割合が高いようですが、当局の環境では都市ノイズが多くNGです。10mの配点が高いのですが、QSO実績から見ると難しいバンドではないようです。もっとも、DX局だけで統計を集計し直すと傾向が変わってくるかもしれません。

RSGB IOTA Contest

7/29-30開催のRSGB(RADIO SOCIETY OF GREAT BRITAIN )IOTA Contestに参加しました。

その結果がWebにUpされました。(https://www.rsgbcc.org/cgi-bin/hfresults.pl?Contest=IOTA%20Contest&year=2023

室内LWアンテナx10Wの順位は、1,878局中1,539位でした。上を見るとキリがないのですが、下を見ても約300局いることに驚きました。

さらに驚いたのは、コンテストで時々交信する米国西海岸のkWコンテスト局のNT6〇が1,548位だったことです。Multsは当局と同じ11、QSOsは当局より1つ少ない13です。当局もこのコンテストでは交信していません。コンディションが悪くて、北米からのパスが開けていなかったのでしょうか。あるいは、珍IOTA局の呼び回りで参加していたのかもしれません。

海外のコンテストは基本的にログ全数照合のようです。交信数15のログを提出したのですが、1つ不成立で14交信が認められました。この照合結果が分かることは重要です。このコンテストで初めてニュージーランドの局と交信できたのですが、頑張って2つのバンドで交信しました。不成立は1つだけなので、少なくとも1つのバンドの交信は成立したことを意味します。ニュージーランド局のQRZ.comを見るとLoTWにログをUpする旨が書いてあるため、首を長くしてLoTWの照合を待っています。

SASE

3通のSASEをリクエストしていた中で、VK9DX(Norfolk Island)からのQSLカードが一番早く到着しました。

4月のQSOですが、机の引き出しの中で行方不明になったGSの発掘とSASEキットの印刷に手間取りました。重い腰を上げて7月25日に日本からSASE発送、8月30日にオーストラリアからSASE返送、9月11日に日本に到着のリードタイムでした。おそらく、Norfolk Islandから定期的にSydneyに戻って、届いたSASEを一括で処理しているものと思います。返信封筒には料金別払いのスタンプが押され、切手は貼られていませんでした。

DX局の紙QSLカードは両面印刷のものが多いように思います。表面に写真とコールサインを配置し、裏面にその写真の説明書きとQSLデータのシールを貼付するというスタイルです。

この裏面の説明書きを読むことが、紙QSLカードを入手する楽しみの1つです。Norfolk Islandの別宅シャック?の来歴が説明されていました。また、表面の写真については「セブンスデー・アドベンチスト教会の感謝祭における近隣の農作物の展示」との説明書きがありました。QRZ.comの写真を見た時には市場の写真かと思っていたのですが、言われてみれば売り子の姿が見えません。QSLカードを入手することにより思い違いを正すことが出来ました。

Norfolk Islandのセブンスデー・アドベンチスト教会は、切手の図案にもなっているようです。

Norfolk Islandの感謝祭についてのブログも見つかりました。

4月のQSO以来、VK9DXの信号を聞いたのは僅かに1回だけです。室内LWアンテナx10Wでは奇跡のQSOだったのかもしれません。