非職業的技師の覚え書き

JK1EJPの技術的検討事項を中心に記録を残します。

AFP-FSK Transceiver(7)VFOボード組立

Mainボード

目視チェック

前回報告で測定を失念したと記したコンデンサC23(680pF)について気になっていました。コンデンサの残りを確認したところ、1個使用し1個残っているはずの68pFが2個とも消え、使用したはずの680pFが残っていました。印字の「68J」と「681」を間違えたことが発覚しました。LPFのC23の写真を撮って拡大すると、確かに間違えています。しかし、老眼には分かり難いですね。どうして68pFの方だけに精度記号が付いているのでしょうか。

More haste, less speed; slow and steady wins the race.

LPF換装のための部品取りを考慮してリードを長く残してありましたが、それでもスルーホールからコンデンサを破壊しないで引き抜くのは苦労しました。こういう時はSMDの方が便利と思わざるを得ません。

スモークテスト

マニュアルの記載では、VFOボードを接続する前のMainボードのスモークテスト項目は以下の3点です。

  1. 12V電源供給時の消費電流が10mA強であること。
  2. テストピンTP1の電圧が+5Vであること。
  3. VFOボード接続ソケットのC1(Clock1)ピンの電圧が0V(a few uV)であること。
テスト1

終段FETがON状態に陥った時に備えてダミーロードを接続し、12V電源を投入しました。電源のメータを電流表示に切り換えましたが、スケールが32Aもあり最小目盛りが2Aのため、針はピクリとも動きません。短絡や終段暴走は無いようです。

スト2

テストピンTP1は5Vレギュレータの出力と接続しています。5.001Vを確認しました。

Confirmation of +5V on regulator output in smoke test.
テスト3

VFOボードのPLLシンセサイザMS5351M(Si5351A)からは、Rx用のClock0とTx用のClock1がMainボードに供給される予定です。接続ソケットのC1(Clock1)ピンは終段FETを励振するNORゲートのプルダウン入力に接続します。NORゲートの入力ピンは内部のFETのゲートに接続しているため、プルダウンによって0V(a few uV)が表れるはずです。0.6mVでした。600uVもa few uVの範疇かな?

気になる点

データシートを見ていて気になる点がありました。+3.3V VCCのMS5351MのClock1出力を、+5V VCCの74AC02の入力に直結する回路設計になっています。耐入力電圧の問題はありませんが、駆動出力電圧が心配になるところです。

NOR gate drive voltage concerns.

供給された74AC02は、刻印からモトローラから分離したオン・セミコンダクタ社製のようです。正確には、オン・セミコンダクタ社が買収したフェアチャイルドセミコンダクタ社製と思われます。もっとも、数社のデータシートを比べましたが、各社で仕様に違いは無いようです。

74AC02のVIH(Minimum HIGH Level Input Voltage)は、2.75(Typ.)~ 3.85V(Guaranteed Limit)です。対して、MS5351MのVOH(Output High Voltage)はVDD-0.6Vです。VFOボードは+5Vを2連のIN4148で降圧してVDDを作っています。MS5351MのIDDは22~35mA、この電流値におけるIN4148のVF(Forward Voltage)は約0.8V、2連で1.6Vになるため、MS5351Mへの供給電圧は3.4Vになります。よって、Clock1のVOHは2.8Vになり、74AC02を駆動するためのVIHのTyp. 2.75Vは満たしますが、保証限界の3.85Vは満たせません。また、VFOボードの電源と信号はコネクタの接触抵抗の影響も受けると考えると、仕様充足は薄氷の上になりそうと感じるのですが杞憂でしょうか。Typ.を満たすのは簡単でも、製造ばらつきに完全対応するロバスト設計は難しいですね。

選別品を供給している訳でもないと思います。以上をトラブルシューティング時の予備知識として備え、VFOの組立に臨みました。

VFOボード

組立

部品を分別して過不足を確認します。大丈夫なようです。

Sort and check for missing parts for VFO board.

背の低いダイオード、抵抗から組み付けます。

 Soldering from the lowest height components, diodes and resistors.

MS5351Mの水晶振動子(25MHz)とATMEGA328Pの水晶振動子(16MHz)を取り付けます。両方ともソケットにしました。

本機が戦力になりそうであれば、MS5351Mの水晶振動子は将来TCXOに換装する可能性があります。スルーホール基板に直付けの水晶振動子を取り外すのは厄介です。特に、近くにあるMS5351Mに気を使います。ヒートガン(持っていませんが・・・)は使用しないようマニュアルに注意があります。

一方、ATMEGA328Pの実装は独特で、スルーホール部品である水晶振動子とICソケットの相対両面実装になっています。水晶振動子を直付けすると、瑕疵があってもハンダ付けしたリード部分にアクセスすることは不可となります。

水晶振動子のソケットは、1x3のピンソケットを切り出し、中央のピンを切断して、基板に対して切断部にオフセットが付くようにヤスリで仕上げます。

Making sockets for quartz crystals is folded, cut, and polished.

VFO周波数表示用のLEDディスプレイ、VFO制御用の3個のタクトスイッチ、5Vレギュレータをはんだ付けします。

ICソケットにATMEGA328Pを圧入しますが、背面に部品の実装されたVFOボードを盤に置いて圧入できないため厄介です。下の写真を見ると、ATMEGA328Pが傾いています・・・。スペーサを逆向きに仮組する等の一手間が必要です。

合体

マニュアルにはVFOボード単体のスモークテストを行うように指示がありますが、スキップしました。ピンヘッダ/ピンソケットを挟んで、VFOボードをMainボードに仮組し、ピンヘッダとピンソケットを倣い位置決めしてハンダ付けします。

E級終段増幅器の出力電力調整に重要になると思われるテストピンTP4へのアクセスがVFOボードとの合体で厳しくなったため、テストピンTP4を背面に移動しました。Mainボードの足の高さに収まります。

Relocation of the test pin TP4 to the back of the main board.

以上で完成です。

Assembly of AFP-FSK Transceiver is complete.

スモークテスト

 

Smoke test of the completed AFP-FSK Transceiver.

ダミーロードを接続して電源を投入すると、ディフォルトの初期動作を実行し、40m Band moduleボードの抵抗値IDを読み取って40m FT8の周波数7.074MHzを表示しました。

左のタクトスイッチがVFOメニュー切換スイッチで、押下時間に依って(1)チューニングする周波数の桁の切り換え、(2)周波数表示のシフト切換(MHz~kHz表示⇔10kHz~10Hz表示)、(3)キャリブレーション、(4)EEPROMのキャリブレーション値の消去、を選択します。中央のタクトスイッチが周波数Down、右が周波数Upです。

メニュー(1)および(2)のVFO制御動作まで確認しました。ATMEGA328Pは正常に動作しているようです。送信テスト、受信テストと進めていく予定です。