非職業的技師の覚え書き

JK1EJPの技術的検討事項を中心に記録を残します。

AFP-FSK Transceiver(6)Mainボード組立

QRPGuys AFP-FSK Transceiverは、Mainボード(+Band moduleボード)およびVFOボードの2式のボードから構成されています。Band moduleボードの差し換えとVFOによって、HFオールバンドでFSK(FT8等)を運用できる点が魅力的です。

今回は、Mainボードと40mのBand moduleボードの組立を行いました。その記録です。

Mainボード組立

まず、部品をヨーグルトカップに大雑把に分類し、主要部品に欠品がないかを確認します。

Sort and check for missing parts for main board.

抵抗やコンデンサ等はスルーホール部品であり、はんだ付けは難しくありません。ICだけは入手の容易性から表面実装タイプが採用されているものと推測されます。

ICの実装

表面実装が必要なICは以下の3点です。

  1. 型番:74AC02
    品名:IC GATE NOR 4CH 2-INP 14SOIC
    用途:E級増幅終段FETの励振増幅

  2. 型番:LM386
    品名:Low Voltage Audio Power Amplifier
    用途:FSK(FT8等)受信AF信号の増幅、PCマイクへの出力

  3. 型番:SA612A
    品名:Double-balanced mixer and oscillator 
    用途:FSK(FT8等)受信RF信号からAF信号へのダウンコンバート

表面実装ICの位置決めには何時も苦戦します。「決まった!」と思っても直ぐにずれてしまいます。今回はQRP labsで紹介されていたBlu-Tackを使ってみました。必要な分をちぎって使う一般民生用途の粘着ラバーです。チューインガムを想像して頂ければ近いと思います。チューインガムと間違えないように、わざわざ青色に着色した経緯があるようです。

Blu-Tack板から米粒の半分ぐらいの大きさを爪楊枝で切り分け、ICの下に付けてPCBに押し付けます。量が多すぎるとリード間の隙間からはみ出して来るため、控えめな量にします。位置をずらす復元応力も発生せず、ICの位置をキープしてくれました。あい路は、そのままICの下に永遠に留まってしまうことです。経年化学変化やPCBとの化学反応の有無は未知です。

Soldering of three SO (Small Outline) package ICs.

手ハンダで信頼性を得るためにはリードの上まではんだを付けること、とマニュアルに注記がありました。量多目にハンダを流し、最後にコテ先でガルウイング状(L字状)のリードの上をなぞりました。拡大すると、リードの裏までハンダが流れてくれたことが確認できました。

ダイオード、抵抗、コンデンサの実装

ダイオード、抵抗、コンデンサは全てスルーホール部品です。数は多くありません。ダイオードおよび電解コンデンサは極性に注意して実装します。経験はありませんが、電解コンデンサの極性を間違えると酷い臭いがするとマニュアルに書いてあります。VFO基板を2階に増築するため、電解コンデンサは寝かせて実装します。

Soldering of through-hole components: diodes, resistors, and capacitors.

PCBにテストピン用のスルーホールがありました。テストピンは付属していませんでしたが、秋月から購入してストックしてあったテストピンを実装しました。特に、終段FETのスイッチングを行うNORゲート(74AC02)出力の1、4、13ピンに接続するテストピンTP4は重要と考えました。後々、終段FETのVds(Drain-Source Voltage)電圧波形とTP4のVgs(Gate-Source Voltage)電圧のスイッチングタイミングを見ながら、LPF初段コイルの調整をする必要があることをLTSpiceシミュレーションで確認済みです。送信電力だけを指標に暗中模索するよりは情報量が多くなると思います。

しかし、なぜかテストピンTP4だけ回路図から欠落しています。終段FET周りの回路が混み入っているために記載を省略したのでしょうか・・・。

その他の部品の実装

その他の部品の実装上の気づきを以下にまとめます。

終段FET他のTOパッケージ部品

3個1組の終段FETと、TX/RX切換用FETと、3端子5VレギュレータはTO(Transistor Outline)パッケージです。Mainボードの2階にVFOボードを増築するため、その下に位置する終段FETのTOパッケージの頭頂部がスペーサ長を超えないようにする必要があります。はんだ付け時に放熱クリップ等を使用する都合で、TOパッケージの頭頂部が高くならないように注意してPCBに押し込みます。コンパクトなVFOボードは両面実装で、ATMEGA328Pが裏面に実装されますが、終段FETの頭上には干渉しないように配置設計されています。スペーサ長未満を遵守することだけを考えれば良いようです。

インダクタL1

DC13.8V電源ラインのインダクタはトロイダルコアに巻く必要があります。回路図やBOMにインダクタンス設計値の表示はありません。FT50-43に13回巻きで74.36uHとなり、線材は26.5cm切り出す必要があること等を、予めtoroids.infoから確認しておきます。

後述の40m Band moduleボードのLPF用のトロイダルコアと合わせて製作しました。インダクタンスの測定では何時も計算値よりも10%程度大きな値が出るため、LCRメータ(Peak LCR40)のプローブキャリブレーションを行ってから測定しました。はんだメッキにばらつきがあるため、クリップする場所を変えながら3回測定しました。

Fabrication of toroidal coils and measurement results of inductance.

フェライトコアのL1は、計算値に対して測定値が4%程度小さく出ました。拡大して見ると、外周部(写真左側)で巻線がコアに密接していない箇所があるため妥当な結果です。

カーボニル鉄コアのL2とL3は、計算値に対して測定値が10%程度大きく出ました。LCRメータに「Low Registance and Inductance」と表示されるため、測定誤差かもしれません。

Band moduleボード用ピンソケット

Mainボード上の2個の5端子ピンソケットによってBand moduleボードを接続します。2個のピンソケットは離れた位置に実装するため、独立にはんだ付けをすると位置公差内のずれによってBand moduleボードのピンヘッダが上手く嵌合できなくなる可能性があります。まず1つのピンソケットを実装した後に、仮組したBand moduleボードによって残りのピンソケットを倣い位置決めして実装します。

以上でMainボードは完成です。ただし、VFOボード接続用のピンソケットは、後でVFOボードを嵌合して倣い位置決め状態ではんだ付けします。

Main board completed.

40m Band moduleボード組立

トロイダルコイル2段と1つのウェーブトラップの組み合わせによるLPFでは、日本のスプリアス規制の要件を満たせない可能性があります。そこで、40mのBand moduleボードを先行して組み立て、スプリアスの測定を行うことにしました。

後で部品を取り外してトロイダルコイル3段のLPFに換装する可能性があるため、各部品のリードは長く残して仮組立としました。特にリードインダクタの入手が国内では難しそうです。

toroids.infoから確認したトロイダルコイルL2とL3の計算値は次の通りです。

トロイダルコイルの製作と出来栄えは上述した通りです。40m Band moduleボードに搭載するフィルタ関係の素子値は下記の通りでした。C23(680pF)の容量値の測定は失念しました。

Temporary assembly of the 40m Band module is completed and mated with the Main board.

以上で完成です。時間を置いて新鮮な目で目視チェック、スモークテスト、VFO組立、調整を進める予定です。