非職業的技師の覚え書き

JK1EJPの技術的検討事項を中心に記録を残します。

室内ロングワイヤーアンテナはSWR1.0の夢を見るか(9)

秋のDXpedition局のハント評価

2023年10月に、オセアニア大洋州)の島々に対して幾つかのExpedition(遠征)が敢行されました。10月中旬開催のOCEANIA-DX-CWコンテストに参戦したところ、バンドスコープ上にパイルの山を発見し、遅れ馳せながらDXpeditionが行われていることに気付いたのが実情です。オセアニアであれば、なんとか室内LWアンテナ×10Wの射程圏内です。性能評価のためにパイルに参戦しました。

コンテストが開催された10月中旬のClub LogのDXpedition Logsを下記に示します。赤丸でマークした(1)W8S(Swains I.)、(2)E6AM(Niue)、(3)T2C(Tuvalu)の3つのDXpeditionsが今回の対象です。他は聞こえません・・・。

緑丸でマークした4W6RUは7月に交信できた東ティモールのDXpedition局です。総交信数は約79k、ユニーク局数は約26k局であったことが分かります。総交信数はバンド×モードのスロット数に依存するため、DXpedition局のハントを狙うユニーク局数約26k局をベンチマークの基数として、今回対象とするDXpeditionsの10月中旬時点の進捗度を推定しました。結果、以下の進捗度推定値が得られました。

  1. W8S 74%
  2. E6AM 32%
  3. T2C    51%

室内LWアンテナ×10WでDXpedition局と交信するには、天啓を得てパイルの隙間を見つけるしかありません。ここまで進捗していれば、隙間もあるだろうと判断しました。

結果、10月に交信できたオセアニアのDX局を下記地図に白抜き背景赤字もしくは赤字で記します。緑字は10月以前に交信できていたDX局です。室内LWアンテナ×10Wでも交信できる程度に、秋のDXシーズンに同緯度上のDXpedition局とのパスが開けたことが分かります。

(1)W8S(Swains I.)

Swains I.は「Is.」ではなく「I.」と表記されることから分かるように太平洋上の孤島です。海底地形図を参照すると、沈下する海底火山の頂きに出来たサンゴ礁の孤島であることが良く分かります。アメリカ領サモアに属し、「アメリカ領サモア立海洋保護区」という名称のPOTA公園の一翼でもあるようです。

個人所有の島で、上陸するにはその方の許可が必要なようです。

当局が参戦したのは終盤です。下記の2つのバンドスロット(10m、15m)で交信できました。

Club LogのGeo Propagation Mapの機能を参照すると、交信数をベースにした伝播実績を調べることができます。(国別の無線局数で正規化していないため、本当の伝播状況とは異なると思います。)

まず、10mで交信した22時UTC(07時JST)の伝播状況を下記に示します。棒チャートは日本時間AMの伝播が良好と示しています。早起きして交信した22時UTC(07時JST)の地図上の伝播状況を見ると、日本と北米への伝播が比較的良かったようです(無線局数が多いだけかも!?)。NA指定でないかどうかを意識しながら交信しました。

次に、15mで交信した04時UTC(13時JST)の伝播状況を下記に示します。棒チャートでは同じ22時UTC(07時JST)が突出していますが、24時間何時でも交信のチャンスがあることを示していました。交信した04時UTC(13時JST)の地図上の伝播状況を見ると、赤色に染まった日本への伝播が突出して良かったようです。

W8Sハントの時にはバンドスロットを埋めようとの意識は無く、微弱信号ミスコピーの保険と考えて念のために2つのバンドで交信しただけです。しかし、積極的にバンドスロットを埋めることにチャレンジした方が、室内LWアンテナ×10Wの性能評価に有益であると考え方を変え、次のE6AMからは意識してスロット星取に取り組みました。

(2)E6AM(Niue)

Niueも孤島ですが世界最大のサンゴ島の1つであり(Wikipedia)、同時に最も小さい国の1つとのことです。エンティティ名の法則は良く分かりませんが、国ということで島を表す「I.」は付きません。

日本は比較的最近の2015年に国家承認をしています。その過程で日本人のニウエ首相補佐官の方が活躍されたとのこと。絶海の孤島と思いきや、日本人シェフが寿司を握るレストランもあり、TV番組で紹介されたようです。

E6AMが聴こえる機会はあまり多くありませんでした。バンドスロットを埋めるべく意識したのですが、W8Sより1つ多い下記の3つのバンドスロット(10m、12m、15m)で終わりました。HF High-Band(10m-20m)の中のHigh側3バンドです。

10mで交信した21時UTC(06時JST)の伝播状況を下記に示します。前記W8Sの場合とほぼ同じ早朝の時間帯です。地図上の伝播状況を見ると、こちらも同様に日本と北米への伝播が良い時間帯に交信できたようです。

次に、12mで交信した00時UTC(09時JST)の伝播状況を下記に示します。コンディションが少し落ちてくる時間ですが、10mと同様に日本と北米への伝播が良かったようです。

最後に、15mで交信した03時UTC(12時JST)の伝播状況を下記に示します。15mも前記W8Sの場合とほぼ同じ時間帯に交信できましたが、地図上の伝播状況で赤色に染まった日本への伝播が突出して良かった点も同じです。ログを見返すと、E6AMと交信した曜日はW8Sの三日後でした。

(3)T2C(Tuvalu)

TuvaluについてGoogle検索をしようとして誤ってMicrosoft Beingで検索したところ、コパイロット(AI)が以下の要約を作成してくれました。

ツバルは、太平洋に位置する小さな島国です。約420マイルにわたって散らばった9つのサンゴ礁と島から成り立っています。人口は約12,000人です。ツバルは英連邦の一員であり、君主が国家元首である議会制民主主義国家です。公用語はツバル語と英語です。

続いて、チャットで「ツバルでのアマチュア無線について教えて」とお願いしたところ、以下の回答が帰って来ました。

ツバルでは、アマチュア無線が行われています。ただし、詳細については情報が限られています。DXpedition Tuvalu T2Cによると、2023年10月10日から30日まで、FunafutiでのDXペディションが計画されています。また、RRDBによると、ツバルにはアマチュア無線リピーターがあります。ツバルは、英連邦の一員であり、議会制民主主義国家であるため、アマチュア無線に関する法律や規制がある可能性があります。詳細については、ツバルの通信省に問い合わせることをお勧めします。

日本語に違和感はないものの、過去の計画を未来形で語るなど時制のコントロールまでは出来ていないようです。

閑話休題、Tuvaluは4つの島と5つの環礁(環状に形成される珊瑚礁)から構成される国です。T2C DXpeditionは、首都が置かれているFunafuti環礁で行われたようです。上記右の地図を見ると、Funafuti環礁は1つの島ではなく、礁湖の周りを取り囲む約30の細長い小島から構成されています。Tuvaluは海抜が低いため、海面上昇によって国の存在が脅かされているとのこと。

T2Cが聴こえる機会は多くありました。バンドスロットを埋めるべく意識したところ、下記の4つのバンドスロット(10m、12m、15m、17m)で交信できました。HF High-Band(10m-20m)の中の20mを除く4バンドです。20mと30mでは、パイルは見えてもT2Cご本尊が聴こえないか、あるいはT2CのCQが聴こえてもこちらの電波が届かないかで、粘りましたが交信には至りませんでした。これで、室内LWアンテナ×10Wのオセアニア方面へのDX能力が決着しました。

交信できたバンド(10m、12m、15m、17m)の伝播状況を下記に示します。W8SおよびE6AMで見てきたように、T2Cの場合も朝は日本と北米への伝播が良い時間帯であり、正午から14時にかけては特に日本との伝播が良い時間帯のようです。

その他のオセアニアDX交信

YJ0TT(Vanuatu)

YJ0TTもDXpedition局ですが、Club LogのExpeditionsページは準備されていませんでした。

複数のバンドで聴こえてはきましたが、唯一12mバンドで午前に交信できました。同じく12mバンドで交信したE6AMおよびT2Cと同じ時間帯です。

H44RH(Solomon Is.)

ガダルカナル島北部に位置するソロモン諸島の首都HoniaraからのQRVです。日本の方が運用されているようですが、詳しい情報は見つかりませんでした。

夕方の15mバンドで偶然にパイルになる前のCQをキャッチしたため、呼んだところ交信できました。室内LWアンテナ×10Wでも、パイルになっていなければ、オセアニアの局とは交信できる確率が高いことを再確認しました。

4W8X(TIMOR-LESTE)

このブログを書いている11月に、春と夏に続いてTIMOR-LESTEへの秋のDXpeditionが始まりました。春と同じチーム(The Lagunaria DX Group)が遠征しているようです。春の4W1Aはコロナで延期した遠征の再開を期した事前調査遠征という位置付けだったようです。まだ11/13までは設営を続けながらのpart-time operationのようです。

このようなDXpeditionの初動段階では一般的にパイルが大きくなり、室内LWアンテナ×10Wでの交信は困難ですが、正午頃に10mバンドで交信できました。10mバンドでT2Cと交信した同じ時間帯です。午後からはパイルが一段と大きくなったことから、上手く機会を捉えパイルが小さい時に交信できたようです。

Club Logでコンファームは翌日になりました。DXpeditionチームで複数の機材を用いて運用している場合、Club Logのタイムスタンプの更新は必ずしも全ての交信を網羅していないようです。YJ0TTの場合もそうでしたが、FT8等のLogでタイムスタンプが更新されて行き、CWのLogは後日アップということもあるようです。設営途中のpart-time operationということも影響しているかもしれません。

翌日、他のDXpedition局で交信不可だった20mに挑戦する機会が到来しました。午前中、信号は弱いのですが4W8XがCQを出していました。誰も呼んでいないことが確認できたため挑戦しました。最初のコールの応答は「?」、次は「JK1?」でプリフィックスまでコピーしてもらえました。ここで、他の強い局がコールしたためリセットです。また、「?」、「JK1?」、再度「JK1?」と続いて、最後に2連続でコールしてコピーしてもらえました。コールバックは空耳コピー(QSBの脳内置換?)気味になってしまったため確信は持てませんでしたが、午後にはClub Logでコンファームできました。室内LWアンテナ×10Wでも、20mバンドの微弱信号がオセアニアDX局に届いていることが確認できました。

日乗

巷では「トランジスタ技術の圧縮」のTV放映が話題になっていますが、個人的にはNHK総合で放映が始まったアニメ「地球外少年少女(The Orbital Children)」に注目しました。

懐かしい既視感があったため調べてみると予感は的中し、「電脳コイル」の磯光雄監督による2作目のオリジナルアニメ作品でした。磯光雄監督自身が原作と脚本を手掛けている他、絵コンテ、原画チェック、CG、撮影(コンポジット)など、ほとんど全ての工程を手掛けているとのこと(地球外少年少女 - Wikipedia)。既視感を感じた訳です。今後の放映が楽しみです。