非職業的技師の覚え書き

JK1EJPの技術的検討事項を中心に記録を残します。

室内ロングワイヤーアンテナはSWR1.0の夢を見るか(10)

2023年11月は先月以上にコンディションが良かった感があります。室内LWアンテナ×10Wでも、先月に引き続きDXpedition局との交信の機会がありました。また、月末のCQWW-DX CWコンテストに合わせて遠征した局との交信の機会もありました。

来年2024年はさらにコンディションが上昇することを期待して、2023年11月実績の覚え書きを残したいと思います。なお、CQWW-DX CWコンテストの結果は別途分析したいと思います。

2023年11月のアジア・オセアニア方面

4W8X(TIMOR-LESTE)

前回、東ティモール民主共和国に遠征したDXpedition局4W8Xと20mで交信できたことを書き残しました。EUのThe Lagunaria DX Groupの独国メンバを中心にした総勢20名の遠征隊がCWモードでもアクティブに運用してくれたおかげで、11月後半の本格運用を通して、室内LWアンテナ×10Wによるバンドスロットハントの新記録を樹立することができました。

HF High-Band(10m-20m)のCW 5スロットを全てハントすると共に、HF Low-Bandも30mと40mのバンドスロットで交信することができました。室内LWアンテナ×10WによるHF Low-BandのDX交信は初めてのことです。

8m長の室内LWアンテナの守備範囲は6m-80mバンドです。短縮率が高くなりラジアル(5m×5本)の電流帰還性能も不足する80mバンドに対しては、国内近距離の交信が精一杯の性能です。一方、6mバンドはXU(Cambodia)と10月に交信できた実績があり、期待がありました。しかし、休日を中心にLive StreamのQRV情報をチェックしましたが、CWによる6m QRVは確認できませんでした。残念ながらパスがオープンしなかったものと思います。FT8の運用はあったようです。

12月2日時点でまだ3名のOP(撤収係?)が残りFT8の運用を続けているようですが、総交信数は141,264回、ユニーク交信数は32,172局に達しているようです。このレコードはClub Log: Expeditionsでトップになっています。ご苦労様でした。帰路ご安全に。

H44WA(Solomon Islands)

米国Western Washington DX Clubの7名の方々から成るDXpedition局H44WAが、11月後半にソロモン諸島ガダルカナル島)からアクティブにQRVしてくれました。HF High-Band(10m-20m)のCW 5スロットは全てハントできました。

米国チームのH44WAは規律を重んじており、B4(重複コール)局に対して効率重視の重複スルー交信をすることなく、長打鍵を費やして「ログをチェックせよ」と注意しているのが印象的でした。

Club LogのLog Searchで"in the log"の確認はできましたが、QSLコンファームはQSLマネージャM0URXのOQRSページから行うように指示がありました。しかし、応答タイムエラーでインターネット接続ができません。ブラウザを替えてもOSを替えても同じエラーがでます。先方のOQRSサーバがリクエスト集中でダウンしているのかとGoogle先生にお伺いを立てましたが稼働中との返答。問題はこちら側のネットワークに内包されていることが切り分けられましたが、ルータのセキュリティ関係だと処置なしです。そこで、携帯の4G経由のネットワークに切り換えたところ接続できました。OQRS自動返信メールも迷惑メールに分類され、システムの挙動が現在のセキュリティ基準に合致しないのかもしれません。QSLマネージャM0OXOも同じOQRSシステムを使用しているらしく、同じ症状がでます。Club LogのOQRSは問題ありません。

XW4DX(Laos)

2023年10月までにインドシナ半島ベトナムカンボジアとは交信できていましたが、2023年11月にラオスと初めて交信できました。東ティモール等の島嶼部東南アジアよりインドシナ半島の国々との交信の方が難しいのは海面反射だけでは届かないためでしょうか・・・。

交信できたのは、仏国メンバ5名のチームによるDXpedition局XW4DXがQRVしてくれたおかげです。米国東海岸とのパスを重視した運用とのことでしたが、12mと15mの2つのスロットで交信できました。

2023年11月の北米・南米方面

南米とは夏のIARU HF Contestにて数局と交信し、PY(Brazil)1局のコンファームができていただけです。しかし、2023年11月のCQWW-DX CWコンテストではPYだけでも7局と交信でき、コンディションの著しい向上が感じられました。コンディションに加えて、CQWW-DX CWコンテスト参加に備えてDX局の事前運用のアクティビティが向上していた点も寄与していると思います。今回はコンテスト前にカリブ海周辺の北米・南米の局と交信した実績について覚え書きを残します。

下記地図に2023年10月下旬から11月に交信できたカリブ海周辺の局を記します。上から、N2IC(US, NM)、XE2X(Mexico)、V31XX(Belize)、TI/KL9A(Costa Rica)、FY5KE(French Guiana)となり、カリブ海(Zone 8)を取り囲む局と交信できました。

V31XX(Belize)とは夏の17mバンドの交信に続いて、秋は12mバンドと10mバンドでも交信できました。秋は気温の低下によって大気(O2)の密度が濃くなり、電離層の密度が高くなってHF High-Band側でのDX交信の機会が増える・・・という理屈通りの体験となりました。

V31XXのQSLはDirect Onlyです。シャックが売りに出されているという情報もあり、夏の交信後にSASEを送り、10月5日にQSLカードを受け取っていました。手書きカードの裏面には記入欄が3つあり、秋の分も記入できたことを考えると、SASEを急ぎ過ぎたかもしれません。

地図に戻ると、最東方のFY5KE(French Guiana)に至っては大圏地図上ではカリブ海を飛び越しています。カリブ海の局と交信するのも時間の問題と期待していたところ、その日は突然到来し、CQWW-DX CWコンテスト直前にZF2MJ(Cayman Islands)と交信できました。ケイマン諸島は3つのサンゴ礁の島から成りますが、Grid Square/EK99IGを参照すると、首都のあるグランドケイマン島からのQRVだったようです。

QRZ.comに、ZF2MJのHome callはN6MJと記載されていました。コンテストに合わせてケイマン諸島に遠征し、コンテストに向けた試験送波の際に交信できたのかもしれません。なお、コンテスト中は見つけることができませんでした。

移動先のプリフィックスにHome callを付けてQRVしていたTI/KL9A(Costa Rica)もコンテスト前に交信できました。ZF2MJと同様にコンテストに合わせてアラスカからコスタリカに移動していたものと推測しています。夏はアラスカ、冬は中米のスケールの大きな2拠点生活の可能性もあります。こちらもコンテスト中は見つけることができませんでした。

2023年11月のアフリカ方面

思い返せば、WAC獲得においてアフリカは最も交信の難しい大陸でした。2023年10月までに交信できていたアフリカの局は、春に交信した大西洋上のCT9ABV(Madeira Islands)の1局だけでした。ところが、2023年11月には反対側のインド洋上の2つの島国と交信することができ、一挙に3エンティティに増えました。室内LWアンテナ×10Wとしては、望外の喜びです。

コンテスト前の某日に聞こえてきたのはS79/G4IRNのCQです。聞いたことのないプリフィックスだったため、Hamlogに打ち込むと「Seychelles」と出てきました。このエンティティ名に見覚えはありますが、それでもどの大陸に属するかまでは把握できていませんでした。兎に角、新しいエンティティであり、CQ連呼中でパイルになっていないため、取り急ぎオンフレで呼んだところ直ぐに交信できました。順調過ぎたため、珍しいエンティティではなかったのかな・・・と交信の後にQRZ.comをゆっくり調べると、アフリカ大陸東側のインド洋上のセーシェル共和国のマエー島からのQRVであることが分かり、すんなりと交信できたことに驚きました。

「載っていないなあ・・・」とDXクラスターを眺めていたところ、交信から10分後にUpされ、それからパイルアップになって行きました。しかし、数分でコンディションが急変してパイルは消滅してしまいました。まさに一期一会の交信でした。室内LWアンテナ×10WではDXクラスターがほとんど役に立たないため、地道にチューニングノブを回してCQを探していたことが功を奏しました。

後で調べると、CQ誌2023年12月号のDX Newsにちゃんと遠征予定が載っていました。UKのメンバー4名からなるチームがCQWW-DX CWコンテストに参加するためにセーシェル共和国に遠征し、コンテスト前は各自のS79/homecallで運用していたようです。

G4IRN JohnさんのブログにCQWW-DX CWコンテスト遠征の報告が載っていました。

QRZ.comの地図でマークされているマエー島の中心部ではなく、北端マシャベの海沿いのコテージ(Les Rocher de Machabee - House by the sea)に宿泊して運用されていたようです。

遠征記の写真集もありました。

そこから、アンテナ群の写真を1枚引用させて頂きます。

コテージの庭に各バンドのアンテナが林立しています。交信できた15mバンドのVDA(Vertical Dipole Array)アンテナは木立の陰に入っている右端のアンテナではないかと推測しています。セーシェルのこのアンテナから出た打ち上げ角の低い15mの電波が遠く日本の室内LWアンテナに届き、逆に室内LWから出た打ち上げ角の高い15mの微弱電波セーシェルのVDAが拾い上げてくれたと想像すると、交信後の感激もひとしおです。

CQWW-DX CWコンテストではS79のコールサインを見つけることはできませんでしたが、同じアフリカ大陸東側のインド洋上の3B8M(Mauritius)と交信することができました。その覚え書きは次回、コンテストの分析と共に記したいと思います。One-day WACが達成できているかどうか精査が必要です。