日乗DX
聞こえない/見えない Jarvis 2024 DXpedition N5J
注目を浴びたN5J(Palmyra & Jarvis Island)との室内LWx10Wによる交信は困難を極めました。なんとか、15m CWと10m FT8で交信でき、ボウズになることは避けられました。送信出力10Wが足りないということは無く、問題は聞こえない/見えないコンディションでした。
CWだけでは交信できない可能性を事前に危惧したため、今回のN5Jに備えてFT8も予め準備しました。FT8(SuperFox mode)の予行テストが行われたK8R(American Samoa)に対しては、乱舞する特徴的な信号をスコープ上で明瞭に視認することができ、交信も容易でした。American SamoaとJarvis Islandは広大な太平洋上で遠く離れている訳ではないため、同じ要領でN5JともFT8によるすべり止め交信は容易にできるだろうと楽観視していました。しかし、いざJarvis DXpeditionが始まってみると、室内LWに見えるのはJA各局の信号ばかりでN5Jの信号は見えない日が続きました。
CWも同じで、室内LWに聞こえるのはJA各局の信号ばかりでN5Jの信号は聞こえない日が続きました。夏休みということで間欠的にワッチを続けていると、ある日15mで599のリズムが空耳に響いてきました。そのまま粘っていると、コールサインが聞き取れる感度までコンディションが上昇してくれました。すかさず、プチパイルの狭間にスプリットをセットして呼ぶと、3回目ぐらいにコールバックがありました。CWチームのOpの方の耳が良いのか、相手の信号が聞こえるコンディションであれば10Wでも届くことが分かりました。
結局、N5Jに関してはCWが先行しましたが、FT8も定期的に確認を続けていると、ある日10mでN5Jの束になったSuperFox modeのRR73が見えてきました。こちらも一時的なコンディションの上昇だろうと予測して、すかさず空きDFに送信マーカをセットしてN5Jをダブルクリックすると、数回目にリターンがありRR73までたどり着くことができました。FT8も見える状況であれば10WでもJarvis Islandに届くことが分かりました。
なぜ、K8R(American Samoa)とN5J(Jarvis Island)とでは難易度に格段の差があるのでしょうか。たまたま7月と8月でコンディションが急変したのか、赤道の向こうのK8R(Latitude 14° 16' S)と赤道直下のN5J(Latitude 0° 21' S)とでは伝搬経路が異なるのか、なぞです。
全く聞こえない/見えない 2024 St. Paul Island DXpedition
その後のCY9C(St. Paul I.)は、全く見えず(FT8)聞こえず(CW)でした。室内LWでも、CY9近隣のVE1(Canada, Nova Scotia州)がFT8で見えた実績はあるため、僥倖を期待しましたが残念でした。
CWとFT8の両輪でDXpeditionとの交信を積み増さないと、室内LWx10WによるDXCC達成は覚束ない状況です。
PCの入れ替え
デスクトップPCの不調
8年使用したデスクトップPCが不調に陥りました。完全に動作が停止した訳ではありませんが、ONのまま放置した後に省電力モードから復帰しようとすると、画面、キーボード、マウスがフリーズしてしまいます。電源ボタン長押しによって強制シャットダウンしてから電源を入れると復活します。
Windows更新、デバイスドライバ更新、ファイル不整合修復等のソフトウェアの対策を行っても回復しません。I/Oもしくはグラフィックボード周りのハードウェアが寿命を迎えた可能性が濃厚です。このデスクトップPCはWindows11の要求仕様を満たしていないため、来秋のWindows10サポート切れまでは延命したいと思っていたのですが残念です。まだ電源投入直後の寿命が残っている間にデータを移行するべく、新しいデスクトップPC調達の検討を始めました。
mini-PCの調達
新旧のデスクトップPCを2台並べて置く都合上、フォームファクタの小さいmini-PCを選択しました。ノートPCから、ディスプレイ、キーボード、電池を取り去ると、専用マザーボード、DRAM、SSD、放熱ユニットが残ります。CPU実装部とDRAM/SSD実装部を専用マザーボードの表裏両側に配置して、その上に放熱ユニットを乗せれば、驚くほどフォームファクタの小さいmini-PCが出来上がります。大手メーカは商品価値に疑義があるのか、mini-PCを商品化していません。原価構成が明瞭であり、付加価値を付けたり差別化することが難しいと感じているのかもしれません。今のところ、中国販売元各社の独断場のようです。
mini-PCの上位グレードは積極的に最新のモバイル用CPUを搭載しています。今回は最新のAI機能搭載のCPUは見送り、1つ前のモデルを選択しました。本格的なAI機能搭載のCPUはTDP(Thermal Design Power:熱設計電力)が大きいからです。発熱は寿命の最大要因と疑っています。なお、Copilot+ PC には40TOPS必要ですが、今回選択したCPUのAI性能は10 TOPSとのこと。
購入後に最初に行ったことは、Windowsのedition(Pro/Home)とOEMライセンスの確認、DRAMとSSDのメーカの確認です。これらの調達部品は原価低減の対象になり易いと思うからです。幸い問題はありませんでした。
次に、HAMアプリの再構築とデータの移行を行いました。PCの速度が向上しているためデータの移行は快適ですが、HAMアプリの再構築には手間取りました。特にLoTWは、証明書がユーザ個人にではなくPCに紐づいているため、証明書の再申請が必要でした。
AI性能は見送りましたが、それでも今回選択したCPUの最大動作温度は100°Cに達します。mini-PCのBIOSは90℃強に抑える温度制御を行っているようです。通常は唸りを上げてファンが回ることはありませんが、アルミ筐体はかなり熱くなります。ゲーム以外の趣味で使用するPCとしては熱過ぎます。TDPの面からも、半導体の微細化は限界に達していると思わざるを得ません。
さらに悪いことに、最近のWindowsのスリープは「モダンスタンバイモード」になっていて、スリープ時もCPUやメモリはアイドル状態で稼働を継続する仕様のため筐体が高温のままになります。これによりスリープ時に32GBの大容量メモリの内容をSSDに退避させる頻度が減る利点はありますが、睡眠中も高温の物体があるというのは心が落ち着きません。長寿命化のためにはもっと積極的に冷やしたい気もしますが、電源が外出しになったmini-PCで最も寿命の短いモジュールは冷却ユニットのファンになると思われるため、回さないほうが賢明な気もします。結局、毎回シャットダウンすることにしました。さて、3年保証ですが寿命は何年になるでしょうか・・・。
QSL
QSLカードの整理
OQRSやSASEにより受領したDX局のQSLカードが溜まってきました。将来のフィールドチェックに備えた整理収納のためにファイリングを思い立ったのですが、通販ではバインダーの選択肢が多すぎて迷います。
そこで、印刷に失敗したQSLカードを1枚持参して近所の無印良品店舗に足を運び、現物合わせをして、リフィール・ハガキポケット(A4/30穴)と「片手で開閉できるバインダー」(A4/8穴リング)を購入しました。
穴の数(8/30穴)が一致していませんが、このバインダーは30穴の中の上下各4穴のみを留める仕様です。中間リングの断捨離により「片手で開閉」を実現しているようです。リングは金属ではなくABS樹脂のため、廃棄時の分別も容易と思われます。ちなみに、リフィールはベトナム製、バインダーはインドネシア製でした。両エンティティともにLoTWでコンファームを完了しており、QSLカードの収納予定が無いことが残念です。
A4リフィール1枚に4枚のQSLカードを収納可能です。QSLカードの表裏両面を参照したいため、裏合わせ2枚(計8枚/リフィール)の収納は止めて1枚ずつ(計4枚/リフィール)収納しました。
一方、国内のQSLカードは枚数が多く、ファイリングでは直ぐに収納が破綻しそうです。昔の図書カードのようなボックス収納が妥当と思い、現物合わせでボックスを探しましたが、寸法の合うものが見つかっていません。できれば環境に優しい紙製のボックスが良いのですが・・・。
SASE発送
LoTWもしくはOQRSに対応していないDX局からQSLを得る手段は、ビューローもしくはDirect郵便(SASE)になります。当該のDX局がビューローオプションを準備してくれているかどうかは、事前に良く調べる必要があります。対応してくれていても、発送したカードに返信が届くのは2年後・・・。
そこで、5月も2式のSASEを発送しました。KP2(US Virgin Islands)局宛とEI(Ireland)局宛です。前回報告した通り、後者のIH(Ireland)局宛のQSLカードには、ダブリンのトリニティ・カレッジ訪問と「ケルズの書」に関するメッセージを添えました。
EI(Ireland)局からのSASE受領
6月にEI(Ireland)局からSASEの返信が届きました。封の中には2枚のQSLカードが入っていました。
写真右のQSLカードのログ記入欄には「My old QSL Card」と記されていました。このカードの裏面は白地になっており、わざわざメッセージカードとして同封してくれました。そこには、室内LWx10Wだったことへの驚き、ダブリン旅行についての返信メッセージ等が記されていました。CW交信はOp名の交換まででしたが、SASE往信によりメッセージ交換が拡大するのも嬉しいものです。
ボローニャ局との交信
前回(室内ロングワイヤーアンテナはSWR1.0の夢を見るか(17))、ダブリン大学訪問の思い出の他にボローニャ大学訪問の思い出のことに触れましたが、その後にボローニャの局ともFT8で交信できました。そのイタリア局のQSLポリシーはLoTW/eQSLだったため、カードによるメッセージ交換はできませんでした。
しかし、その局のQRZ.comに"Web Contacts"という有料会員向けのページがあり、短いメッセージが書き込めるようになっていました。ボローニャ訪問のことを書こうかと逡巡していた当にその時にイタリア局からeMailが届き、"Web Contacts"へのコールサイン追加を依頼されました。もう迷うことなく、「昔のボローニャ訪問を懐かしく思い出しました」とのメッセージを添えてコールサインを"Web Contacts"に追加しました。
再開局が人生の伏線を少しずつ回収しているような気にさせるのは老境の私だけでしょうか。
OQRS受領
K8R(Swains Island)
K8Rは今年'24年7月のAmerican SamoaからのFT8 Super Fox Mode初陣運用で脚光を集めましたが、これは昨年'23年11月のSwains IslandからのCW運用分です。
”RIB DXpedition”と記されていることが目を引きます。冒頭のN5JでもRIBが使われています。調べてみると、「RIB」はRig in a Box の略称でした。The Northern California DX Club で開発されたDxpedition用のGo-boxのことを指すようです。ただしRIBは、電池駆動の QRP/Low-power 空冷Go-boxではなく、発電機駆動の 1.5KW QRO 水冷Go-boxです。詳細については公開されているプレゼンスライド「Testing RIB (Radio In a Box) Technology in a DXpedition Environment 」が参考になります。
上陸の許可を得るために、島の環境に与える負荷を低減することがRIBの目的になっています。島に持ち込むのは、浜辺に建てるバーチカルアンテナ、発電機、RIB等だけになり、環境負荷が大きい人間はボートに退避してマイクロ波リンクを用いてボートからRIBを運用します。さらに、ボートと本国を衛星回線で結んで本国からリモート運用できるようです。FT8だけだなくCWもリモート運用でチームを組んでいるらしいのですが、キーイングの遅延はどうやって制御しているのでしょうか。PCキーイングに徹していると考えるのが妥当ですが・・・。
プレゼンスライドに写真が掲載されている「RIB」はアマチュアの工作レベルを超えているように見えました。Club会員の中にプロのエンジニアの方がいるのでしょうか。要素技術だけあっても、無人で稼働させるシステムにまとめるのは大変です。スライドのSummaryの最後に「IT and networking skills are essential 」と記されているのが印象に残りました。
FW8GC(Wallis & Futuna Is.)
名前の通り2つの諸島から構成されるフランス海外準県ですが、ウォリス諸島側からのQRVでした。
地図で見ると、すでに交信済みのツバル、サモア、フィジーに囲まれる位置になります。2月ということもあり、困難な交信だったと記憶しています。なんとか、17m CWで交信できました。
T32EU(East Kiribati)
キリバス共和国は、太平洋赤道付近の東西の長い領域に点在する島々から構成されています。その東に位置するキリスィマスィ島(IOTA OC-024)からのQRVでした。なんとか、17m CWで交信できました。
キリバス共和国には4つのエンティティがあり、まだ3つ残っています。残り3つのエンティティを積み増せると、DXCC達成に向けて大きな助力となるのですが、聞こえたことはありません。
XU7GNY(Cambodia)
カンボジアとは6m CWと17m CWの交信実績がありましたが、今回10m/12m/15m CWのスロットが埋まりました。
一般に、室内LWx10Wでスロット埋めを狙うのは無謀なチャレンジです。精々、保険のために2スロットを狙う程度です。XU7GNY局は強力に入感していたためスロット埋めに励むことができました。とは言っても、20mより下は逃してしまいましたが・・・。
この後にFT8でもチャレンジしたところ、10mから20mのスロットを埋めることができました。やはり、CWよりFT8の方が交信が容易なのでしょうか・・・。後日、FT8の交信実績が溜まったところで分析したいと思います。
QSLカードは映画のワンシーンのようなデザインでしたが、該当する映画は発見できませんでした。通販大手にパネル写真が出品されていることは発見できました。
JARL QSLカード受領
室内 LW x 10w による本格運用を開始してから1年半が経過したところで、JARLから受け取るQSLカードが一挙に増えて厚さが28mmに達し、初めて大判の封筒で送られてきました。最近は電子QSLの局が大半なため、これをピークに減少していくものと思います。
DX局からのQSLカードも2枚入っていました。'23/4のJapan Internatinoal DX Contestで交信したドイツの一般局と、'23/7のIARUコンテストで交信したタイのHQ局からのQSLカードでした。HQ局には返信不要ですが、ドイツの一般局にはこれから返信します。カードが先方に到着するのは交信から2年半後になってしまうため、郵便で出そうかと逡巡しています。