非職業的技師の覚え書き

JK1EJPの技術的検討事項を中心に記録を残します。

Teensy(7)Keiths' SDRのコンパイル

前回(Teensy(6)開発環境VisualTeensyの導入)Teensyの開発環境が構築できたところで、Keiths' Teensy SDRのコンパイルを試みました。

Keiths' Teensy SDRコードの選択

Keiths' Teensy SDRはハードウェア・モジュールの自由度が高く、開発途上にあるため、コードには幾つかのバージョンがあります。

Keith OMがアップしているコードはkeithsdr@groups.ioのFilesフォルダにzip形式でアップロードされています。ファイル名を見ると、主にディスプレイの種類ごとにアップロードされているように見えます。コードに占めるUIの比重が大きくなっていると想像されます。今日、UIのコードが肥大化するのはどのAppでも同じです。Keiths' Teensy SDRでは市販のSDRのように、タッチスクリーンによる操作もサポートしています。

これとは別に、ハードウェア・モジュールの選択問題を一気に解決してくれるRS-HFIQとのUSB接続機能の開発を主導しているK7MDL局Mike OM開発のコードがGitHubにアップロードされています。GitHub上でWikiやREADME.mdを直ぐに読むことができます。当局はRS-HFIQを使いたいため、Mike OMのコードをgit clone(複製)することにしました。まだまだコードの更新が頻繁にあるため、git pull(更新内容取り込み)できるようにしておいた方が良いでしょう。

K7MDL局のKeiths' Teensy SDRコード

ソースファイル

git clone(複製)したKeiths' Teensy SDRのソースコード一覧を下記に示します。30個のファイルから構成されています。備考に記載した役割は、ファイルのヘッダ部分だけを読んで判断した暫定版です。今後、IQ信号の処理連鎖を追いかけて更新したいと思います。

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List of K7MDL2/KEITHSDR source files (provisional interpretation)

メインコードのファイル名SDR_RA8875.inoについた「RA8875」はディスプレイのコントローラの名称です。Mike OMのコードではRA8875とRA8876が選択可能です。ただし、このコントローラを搭載したディスプレイならどれでも稼働するという訳ではないようです。実績のあるEastRising Technology Co.,Limited製の4.3 inch TFT LCD Display Capacitive Touchscreen w/RA8875 Controllerか、もしくは7 inch w/RA8876をBuydisplay.comから選ぶのが無難なようです。しかも細かな選択オプションがあって、InterfaceをPin Header Connection-4-Wire SPIに指定し、Power Supply (Typ.)をVDD=5.0Vに指定するのが良いようです。詳細はkeithsdr@groups.io、Wiki、README.mdをご参照ください。当局もまだ稼働させていないため確かなことは言えません。

脇道に逸れますが、Buydisplay.com(深圳市)はB2BとB2Cの区別のないディスプレイ専門総合マーケットプレイスの様相です。このように、B2BとB2Cの区別なく1個からでも500個以上でも売るという場が日本には無いように思います。

閑話休題、SDRコードの中核は信号処理ですが、制御関連のファイルの数が多いことに気づきます。無線機操作の利便性を追求すると、そのためのコードを開発する必要が出てきます。タッチ・イベント・ブローカのUserInputがその例です。

なお、SDRの場合はソースコード上でオフバンド対策をする必要があると思いますが、SDR_Data.hに定義された周波数バンドの構造体定義を日本向けに変更すれば良いようです。

プロジェクトファイル

git cloneしたソースコード以外のファイルを下記に示します。

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List of K7MDL2/KEITHSDR project files (provisional interpretation)

この中で重要なのはmakefileです。Mike OMのPCの設定と当局のPCの設定は大なり小なり異なると思われるため、修正が必要になります。

.vscodeフォルダ配下のファイルはIDEとしてのVS Codeの使い勝手に係わるファイルと思います。ただし、VS Codeのことをまだ良く知らないため確かなことは言えません。

コンパイルの試行

事前準備

先ずは開発環境を整え検証するために、コンパイルを通すことを試みました。以下に試行錯誤の過程を記録します。VS CodeやVisualTeensyに造詣が深ければ、もっと良い方法があるかも知れません。

Keiths' Teensy SDR一式をフォルダごと複写します。当局のPC環境を調べるためにVisualTeensy.exeを起動して複写したフォルダのOpenとSaveを実行し、元のmakefileをディフォルトの新規makefileで書き換えます。このmakefileに当局のTeensy開発環境の設定が反映されています。ただし、Keiths' Teensy SDRをビルドするための情報はこのmakefileからは消えてしまいます。書き換えられても支障が無いように、事前にフォルダごと複写しました。

次に、新規makefile(当局環境版)と元のmakefile(Mike OM版)を比較して、必要な修正を適用します。新規makefileが複雑なのに比較して元のmakefile(Mike OM版)はシンプルです。Mike OMがmakefileに造詣が深く、自動生成に飽き足らず自ら書き下しているのではないかと思われます。したがって、元のmakefile(Mike OM版)の方を複写して書き換えて行きます。

VS Code上のVisualTeensyのプロジェクトとAruduino(+Teensyduino)は疎な関係であり、makefile内に記述したパス設定によって連携します。そのパス関係は下記のようなイメージになっています。

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Image of path connection between Visual Teensy project on VScode and Arduino

VisualTeensyのプロジェクト生成時にAruduinoのパスを設定しましたが、Aruduinoに適用したTeensyduinoの場所までは知らないようです。皆がディフォルトパスでTeensyduinoを導入する訳ではないため致し方なしというところでしょうか。

makefile(Mike OM版)に適用したパス変更は以下の通りです。

  • BUILDER_BASE(Arduinoへのパス)を修正。
  • HARDWARE(Arduino\hardwareへのパス)を修正。
    (*)Teensyduinoの適用によって配下にteensyフォルダが追加されています。
  • TOOLS(Arduino\tools-builderへのパス)を修正。
  • LIBRARIES := -built-in-libraries=(Arduino\librariesへのパス)を修正。
  • LIBRARIES := -libraries=(ローカルなArduino\librariesへのパス)を修正。
    (*)Aruduinoのインストール時に作られるDocuments配下のローカルフォルダを使用するのが一般的ですが、他のフォルダでも構いません。Keiths' Teensy SDRをBuildするために集めたライブラリを置くフォルダを作り参照します。
  • その他のLIBRARIES指定。
    (*)自環境に合わせて増やす、あるいは削除します。
  • UPL_PJRC_B(Arduino\hardware\toolsへのパス)を修正。
  • UPL_TYCMD_B(TyToolsへのパス)を修正。
    (*)UPL(Uploader)はどれか1つで良いものと思われます。

.vscode/c_cpp_properties.jsonの"includePath"等のパス設定もmakefileの設定に合わせて変更します。VS Codeのインテリセンスがデバックを支援してくれると思います。

.vscode/tasks.jsonの"command"はVisualTeensyによってプロジェクトを自動生成すると"VisualTeensy_v1.5.0 / make.exe"になりました。Mike OMは"GnuWin32 / bin / make.exe"を使用していますが、このままVisualTeensyのmakeとしました。

ライブラリ収集

makeが動くようになったところで、エラーを吐かせて解決して行くモードに入ります。Keiths' Teensy SDRのRadioConfig.hの設定は複製したままにし、唯一"#define USE_RA8875"文のみコメントを外してONにしました。

  1. Teensyduinoの標準ライブラリだけではSDRのBuildに足りていないため、エラーメッセージが足りないライブラリを教えてくれます。
  2. そのメッセージをクリックすると、VS Codeのインテリセンス機能?によってソースコードの該当箇所(ライブラリのinclude文)にジャンプします。
  3. 親切なことに、ソースコードのコメントにGitHubのURLが書いてあるため、足りないライブラリのGitHubリポジトリを開きます。
  4. git cloneでユーザーローカルのArduino\librariesフォルダにライブラリを複製します。このフォルダはmakefileにパスを設定済みです。zip downloadよりもgit cloneの方が一連の繰り返し作業が速いと思います。ライブラリの更新にも迅速に対応できます。

以上をひたすら繰り返します。当局の環境に足りないために複製したライブラリを以下に示します。Keiths' Teensy SDRが様々なContributorsの貢献の上に築かれていることを気付かせてくれます。

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Libraries downloaded to the user local folder
最後のエラー

ライブラリがそろえばOKかと思えば、タッチ関数が無い旨のエラー('class RA8875' has no member named 'touched')が複数出てきました。全てタッチスクリーン関係です。

結論から言うと、Teensyduinoによって導入されたRA8875ライブラリの設定ファイル(RA8875\_settings\RA8875UserSettings.h)を変更する必要がありました。

タッチスクリーンを使用する場合は、RA8875UserSettings.hの中の以下のコメントアウトされた定義文のどちらかを有効にする必要があります。
//#define USE_RA8875_TOUCH//resistive touch screen
//#define USE_FT5206_TOUCH//capacitive touch screen

Mike OMと同じようにBuyDisplayの4.3 inch TFT LCD Display Capacitive Touchscreen w/RA8875 Controllerを使用する場合は後者を有効にします。

少し混乱する話になります。RA8875はディスプレイコントローラですが、抵抗膜方式タッチスクリーンのコントローラ機能も混載しています。抵抗膜方式タッチスクリーンを使用する場合はRA8875で足りるため前者を有効にします。

BuyDisplayの4.3 inch TFT LCDは静電容量式タッチスクリーンを採用しているため、RA8875に加えて専用のタッチスクリーン・コントローラFT5206を搭載しています。よって、この場合は後者を選択します。ちなみに、iPhone等も静電容量式タッチスクリーンです。

Mike OMのREADME.mdやWikiをよく読むと、選択の必要があることが書いてあるのですが、Teensyduinoによって導入されたライブラリの奥深くに設定すべき場所があることに気付きませんでした。

以上でコンパイルを通りました。これから、RadioConfig.hの設定をRS-HFIQに合わせ込みたいと思います。

Teensy(6)開発環境VisualTeensyの導入

日乗

「タ」は夜明けの空を飛んだ/岩井 三四二 | 集英社 ― SHUEISHA ―』(下写真の左)を読了。「タ」は夕暮れの夕ではなく、カタカナのタです。この本の存在は、JA1XRQ局OMのブログ「XRQ技研業務日誌」で紹介されていたことにより知りました。この題名から、無線関係の歴史小説と類推するのは困難ですね。帯を見て無線関係の本と気付きます。

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電信の歴史については、CQ出版モールス通信【オンデマンド版】通信の原点=CW その魅力/運用法/歴史』(上写真の右)の歴史の章に通史として分かり易くまとめられています。日本の無線電信の黎明については3ページ程度に要約されているため、『「タ」は夜明けの空を飛んだ』で行間を埋めることができました。

当時、無線機の開発に苦労したのは原理が分かっていなかった点に加えて、測定器が無かったことに尽きると思われます。現代はNanoVNAやTinySAといった安価な測定機に恵まれています。火花方式から進化した現代の先端無線機であるSDRの開発に、当局も挑戦したいと考えています。遅々と進んでいませんが・・・。

Keiths' Teensy SDR

以前紹介したKeiths' Teensy SDRプロジェクトはハードウェア・モジュールの選択組合せの自由度が高いのですが、そこが一般のキット(余分なものも足りないものもない)よりも敷居が高い点でもあります。円安の今(ここ当分?)、個別のハードウェア・モジュールを別々のベンダから購入すると、送料も高くなってしまいます。

蛇足ですが、日本は電子部品のBtoC(一般消費者向け販売)の水準は一定のレベルにあると思いますが、ハードウェア・モジュールのBtoCの水準は低いと感じます。Keiths' Teensy SDRのハードウェア・モジュールは全て海外(北米、欧州、中国)から取り寄せることになります。ただし、完成製品としての日本の無線機のレベルの高さは知られているとおりです。質の高いキットを頒布して下さるOMの方々もおられます。日本のメーカはBtoBのビジネスしか足場が無いことと、スタートアップが育たない点が彼我を分けているように感じます。

閑話休題。Keiths' Teensy SDRのハードウェア・モジュールの選択組合せの敷居を低くしてくれるのが、フルセットのRFバックエンドを提供してくれるRS-HFIQです。Keiths' Teensy SDRプロジェクトでは、ハードウェア・モジュールをRS-HFIQにした開発も最近進んでいるようです。

RS-HFIQは1台で基本的なハードウェア・モジュール(BPF、LNA、QSD、QSE、Amp、LPF)を網羅するため、その他に必要なモジュールはTeensyマイコン開発ボード、オーディオボード、タッチディスプレイ、エンコーダ、電源ぐらいで済むようです。

TeensyとRS-HFIQの接続方法として下記2案(Option(2)とOption(3))が考えられますが、Teensy 4.1のUSBホスト機能を利用してRS-HFIQ搭載のNanoを制御するOption(2)の方式で開発が進んでいるようです。

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TeensyとRS-HFIQの接続形態

VisualTeensyの導入

Keiths' Teensy SDRプロジェクトの開発環境はArduino IDE(+Teensyduino)ではなく、VisualTeensyがディファクトになっている様子のため、当局も導入を試みました。

VisualTeensy

VS Code EditorをTeensyの開発環境にするため、「VisualTeensy」という命名になっています。GitHubから最新v1.5.0のzipファイル(VisualTeensy_v1.5.0.zip)をダウンロードしました。zipファイルを展開すればインストール完了です。

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Release v1.5.0 · luni64/VisualTeensy · GitHub

TyTools

TyToolsはTeensyマイコンボードをUSB経由で管理するユーティリティです。Teensyマイコンボード開発元のPJRC社から提供されるTeensyduinoにボード管理機能もあるため、TyTools導入は必須ではありませんが、Keiths' Teensy SDRプロジェクトではディファクトになっている様子のためインストールしました。

こちらも、GitHubから最新v0.9.7のzipファイル(TyTools-0.9.7-win64.zip)をダウンロードして展開すればインストール完了です。

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Release TyTools 0.9.7 · Koromix/tytools · GitHub

テスト

VisualTeensyプロジェクトの生成

解凍したフォルダの中にある実行ファイルVisualTeensy.exeをダブルクリックすると、 (Teensyduino適用済みの)Arduinoの場所を聞いてきます。Arduinoのフォルダを設定するとGUI画面が開きます。

GUIのSettingsタブを見ると、設定したArduinoフォルダのパスが見えます。ここで設定しても問題ないようです。

その他に、Uploaderの欄にTyToolsフォルダのパスを設定します。Uploaderは4種類も選択肢があるようです。

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VisualTeensy GUI(Settings)

GUIのProjectタブで、Teensyマイコンボードのバージョンを選択します。Keyboardに日本語レイアウトがなかったため、US Englishとしました。

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VisualTeensy GUI(Project)

テスト用に空のフォルダ(ここでは「Test」)を作成して、File->Openでそのフォルダを指定します。続いて、File->Saveでプロジェクトを生成します。プロジェクトの実体は下記右のディレクトリとファイル群です。

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生成されたプロジェクトファイル群

すると、自動的にVS Code Editorが開きます。ここで、VisualTeensyはお役目終了です。

コンパイル

自動生成されたプロジェクトのソースコードは「Lチカ」(LED点滅)でした。メニューバーの「Terminal -> Run Build Task -> Build」を選択すると、コンパイルを実行し、問題なく終了しました。クロスコンパイルの結果は下記右下に表示されています。ARMプロセッサ用のelf(Executable and Linkable Format)ファイルやFlashに書き込むHEXファイルが出来ていることが分かります。

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VS Code Editor(Compiling)
アップロード

続いて、メニューバーの「Terminal -> Run Build Task -> Upload(TyCommander)」を選択すると、TyToolsの一部であるTyCommanderが起動します。

最初に下記左のTeensyボード選択画面が開きます。TyCommanderは複数のTeensyボードを同時に管理できるからです。

Teensyボードを選択すると下記左の管理画面が開き、HEXファイルのアップロードが自動的に実行されます。アップロードが終了するとボードリセットが自動的に掛かり、Lチカが起動しました。

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TyCommander GUI (Left: Board selection, Right: Board management)

Tool間の連携も取れており、TyCommanderによるアップロード結果はVS Code Editorにフィードバックされ、GUIの右下に表示されます。

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VS Code Editor(Uploading)

FPGAも含めて幾つかの組込みボードを触った経験から判断すると、USBケーブルをつなぐだけでコンパイルから起動までワンストップで実行できるため、大変お手軽です。USB経由でTeensyボードからPCのターミナルに対してprint文を実行できるはずなので、クロス開発であることを意識せず、PCアプリ開発の要領でTeensyアプリの開発が出来そうな予感がします。

次の課題はKeiths' Teensy SDRのコード読解です。uSDXのコード読解には挫折しました。Keiths' Teensy SDRはどうでしょうか・・・。ContributorsのOMが複数人おられるようなので、アイディアを共有できるように書かれていると期待しています。

QRPGuys Z Tuner(2)組立

部品の仕分け

QRPGuys Z Tunerの組立準備として、まず部品の仕分けを行いました。ヨーグルトのカップを再利用したパーツボックスに順番に入れて行きます。不足部品はありませんでした。余剰部品として、長ネジが一本多いような・・・?

電子部品よりもネジ、コネクタ、トロイダル・コア等が存在感を放っています。

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Sorting parts for QRPGuys Z Tuner kit

カップは固定されていないため、ひっくり返したら大変です。期待通り、一度ひっくり返してしまいました。

シャーシ組立

回路基板の他に、基板材で作ったフロントパネルとガセット(三角板)2枚が供給されます。これらをハンダ付けで組み立て、シャーシとします。

最初に、回路基板とフロントパネルをはんだタック(点付け)で仮組します。マニュアルには、はんだ収縮を考慮して角度91~92°の開きでタックするように細かな指示がありますが、タックしただけでは角度を固定する強度は出ないため、90°の治具(箱など)に添わせる仮組で十分でした。角度よりも 面合わせ(flush)の方が重要です。

角度決めに関しては、続くガセットのタックの方が重要です。位置決めする爪は無いため、テープで仮組して回路基板とフロントパネルの双方にタックします。ガセット2枚をタックするとフロントパネルの角度は90°に固定されます。検査して問題が無ければ、タック部に大量のはんだを供給して線付けします。面積が広いためコテの温度が重要です。370~420度℃で行いました。

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Chassis assembly

SWR測定ブリッジ回路の組立

電子部品はSWR測定ブリッジ回路を構成する部品だけです。これらの小物部品を先に組み立てます。

2W 51Ω抵抗は適宜品種入れ替えがあるのでしょう。基板の穴間隔は広めに取ってあるのですが、この品種は寸法が大きく、空中に浮かせざるを得ませんでした。

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Assembly of SWR measurement bridge circuit

高周波電圧差を増感?するFT37-43トロイダルコイルは小さい径のため、写真で巻き数を確認するようにマニュアルに指示がありました。確かに写真で確認すると楽です。

テンションを掛けて密に巻いたつもりでしたが、写真で見るとコア外周の密着が甘いことも分かります。しかし、インダクタンスを実測するとtoroids.infoによる計算値よりも10%以上大きくなりました。

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Comparison of calculated and measured values of FT37-43 toroidal coil inductance

コイルの線材をはんだ付けするための穴はタップも含めて基板の適切な位置に開いています。コアはネジとワッシャー、ナットで基板に固定する方式のため安心です。

Tuner部の組立

ポリ・バリコン

ポリ・バリコンも品種が変遷しているようです。マニュアルには2種類のポリ・バリコンについて、3本のリードの出る位置を基板に合わせて改造する説明があります。同梱されていたポリ・バリコンは3本のリードがそのまま基板の穴に入りました。

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Polyvaricon trimmer adjustment and assembly

ポリ・バリコンの型式や容量は不明ですが、容量を測定したところ、AMラジオ用の二連(160+60pF)ポリ・バリコンのようです。千石電商で扱いのあるCBM-223F-1F4と外観は同じです。

二連ですが容量を増すためか並列接続して使います。Tunerとしての容量変化比を最大にするためか、トリマは付加容量最小の位置に調整します。マニュアルは単なる工作指南書に終始し、「なぜそうするのか」の説明が一言足りないのが残念です。大袈裟ですが、設計図書で重要なのは最終成果物の回路図だけではなく設計思想の記載です。思想が分からなければ技術は伝承され得ません。単に安価にするためにキットを購入している訳ではなく、仕組みを知りたいために購入しているのですが・・・。

トロイダル・トランス

バリコンの次は、いよいよトロイダル・トランスの製作です。最初に線材の切り出しを慎重に検討します。大径20AWGのエナメル線は予備の保有がないため、思い違いをすると(継接ぎで)見た目が残念なトランスになってしまいます。

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Cut out three 20 AWG enamel wires for winding on a toroidal transformer

マニュアルにはインチで線長が指示されているためcmに変換し、誤植や誤解があるといけないためtroids.infoの計算結果と照合します。マニュアルの指示線長はtroids.infoの計算値よりも長く、余裕を見ているようです。それでも支給全長183cmが10cm以上余る計算です。実際の支給全長はさらに余裕の218cmでした。

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Checking the number of windings of the toroidal transformer

同色のエナメル線3本を同色のT106-2コアに巻くため、巻き数のチェックが大変です。中央のタップを目印に確認します。主巻線は16回巻きのため片側に8本、合計16本、これは容易に確認できます。高インピーダンス用二次巻線の12回巻きを重ねると片側に14本、合計28本。さらに、低インピーダンス用二次巻線の6回巻きを重ねると片側に17本、合計34本。重ね巻きを実施する度に写真を残すことが重要です。写真で所々墨が付いたようになっているのは、マジックでマーキングしたためです。

大径20AWGのエナメル線の被覆を燃やすのは大変です。ストリッパが欲しくなってきました。

インダクタンスを実測するとtoroids.infoによる計算値よりも10%前後大きくなりました。低インピーダンス用二次巻線のインダクタンスは63.3%も大きくなりましたが、LCRメータ(Peak Atlas Model LCR40)の測定レンジが1uH~10Hのため、測定範囲を超えたことによる誤差と思われます。

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Comparison of calculated and measured values of toroidal transformer inductance

FT37-43と同様に、コイルの線材をはんだ付けするための穴はタップも含めて基板の適切な位置に開いています。コアはネジと基板材ワッシャー、ロックナットで基板に固定する方式のため安心です。ロックナットはかなりトルクを要しました。

完成

以上で完成です。やはり長ネジが余りました。テストは後日・・・。

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Assembly completed

QRPGuys Z Tuner(1)SWR測定ブリッジ回路の検討

QRPGuys Z Tunerの概要

運用周波数帯域が異なるFT8とCWを短縮アンテナを用いて運用するために、”QRPGuys 40m-10m Multi Z Tuner”の製作に着手しました。外観と回路図を下記に示します。

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QRPGuys 40m-10m Multi Z Tunerの外観(組立マニュアルより)

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QRPGuys 40m-10m Multi Z Tunerの回路図(組立マニュアルより)

回路は、SWR測定ブリッジ部とTuner部から構成されています。

SWR測定ブリッジ

SWR測定ブリッジはアンテナのインピーダンス不整合時にLEDが点灯し、SWRに比例して明度が変化し、整合時に消灯する仕組みです。

Tuneモードではトランシーバ終段の負荷はSWR測定ブリッジになるため、終段を保護する役割も果たします。アンテナのインピーダンスを抵抗Rxに見立てて、電圧反射係数とSWRを試算した結果を下記に示します。

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アンテナ・インピーダンスによる電力反射係数とSWRの変化

ブリッジを構成する抵抗が51Ωのため多少の誤差は出ますが、アンテナ・インピーダンスが50Ωの時に電圧反射係数はゼロ、VSWRは1.0になります。

アンテナ・インピーダンスが10Ωに低下してもブリッジの合成インピーダンスは38Ωに抑えられ、VSWRは約1.3までしか増加しません。「短絡」しても合成インピーダンスは34Ωに抑えられ、VSWRは約1.5までしか増加しません。

アンテナ・インピーダンス増加の影響はもっと緩やかです。100Ωに上昇してもブリッジの合成インピーダンスは61Ωに抑えられ、VSWRは約1.2までしか増加しません。アンテナ付け忘れの「解放」でも合成インピーダンスは102Ωに抑えられ、VSWRは約2.0までしか増加しません。これがブリッジのVSWR最大値になります。

LTspiceシミュレーション

SWR検出回路にもトロイダル・コア(FT37-43)が搭載され、巻き数比5:20のコイルを巻いて、中間タップにアンテナ負荷を接続しています。その役割は検出感度の増感、すなわち高周波電圧の不平衡差分の増幅にあると考え、LTspiceで確認しました。

アンテナ・インピーダンスに対する感度

アンテナ・インピーダンスに見立てた抵抗Rxの値を25Ω、37.5Ω、50Ω、75Ω、100Ωとステップ変化させて、LEDを点灯させるコンデンサC1のチャージ電圧(タグC1_2~C1_1間の電圧)をシミュレーションしました。7MHz給電電圧は振幅10Vとしました。電力は1Wの想定です。

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アンテナ・インピーダンスに対する感度

電力送出から3~5ms程度でコンデンサC1への充電は完了し、過渡応答は収束します。スタートの25Ωで2.2V弱、ここから整合を進めたつもりの37.5Ωで1.4V程度に低下し、整合させたつもりの50Ωで0VになりLEDは消灯します。逆方向に不整合させたつもりの75Ωで約1.7Vに上昇し、100Ωで2.2V強に戻りました。LEDがSWRインジケータとして働くことが確認できました。

37.5Ωと75Ωでは、コンデンサC1の充電が間に合わずにノコ波状の脈動が見られます。この周期を肉眼で感知することはできないと思いますが、整合付近では周期が伸びて僅かな点滅が発生するかもしれません。

トロイダル・コイルの誘起電圧

コイルに一方向の高周波電流が流れるだけなら、巻き数比(5:20)の二乗に比例した高周波電圧が誘起されると思います。しかし、ブリッジの電圧差は中間タップから左のL1(5回巻き)に印加されるため、整流ダイオードにつながる右のL2(20回巻き)に誘起される電圧がどうなるかは当局の理解を超えます。そこで、LTspiceシミュレーションで確認した結果を下記に示します。

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SWR測定ブリッジのトロイダル・コイルの誘起電圧

7MHzの高周波電圧のため、塗り絵になってしまいました。緑がインピーダンス不整合によってブリッジに発生した電圧差であるL1電圧(タグANT~C1_1間の電圧)で、±0.8Vの正弦波電圧になっています。一方、赤が右のL2電圧(タグANT~C1_2間の電圧)で、プラス側が約6V、マイナス側が約-3.1Vの非対称な交流電圧になっています。巻き数比の二乗(1:16)の関係は単純には電圧比に反映されていないようです。

C1の充電が完了した平衡状態での交流信号を拡大した結果を下記に示します。

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SWR測定ブリッジのトロイダル・コイルの誘起電圧(時間軸拡大)

L2電圧のプラス側は対称な半波になっているように見えますが、マイナス側は歪んでいます。プラス側はダイオードD2に電流が流れない方向の誘起電圧と思います。

マイナス側の約3.1VがダイオードD2のアノードに印加される最大電圧で、ダイオードD2(1N4148)の電圧降下を0.6Vとすると、C1_2の最大電圧は2.5Vと推定されます。L1の電圧も考える必要がありますが、L2電圧とL1電圧の位相はずれていてL2が-3.1Vの時にL1は-0.4Vのため、C1に印加される最大充電電圧は2.1V(= 3.1 - 0.6 - 0.4)と推定されます。

シミュレーション結果はLEDを駆動するC1電圧=2.2V弱(黄色)を示しているため、このロジックで合っているのではないかと思います。マイナス側のL2電圧が歪んでいるのは、LED駆動で電流を消費したC1の満充電まで電流を取られるためと推定しています。

トロイダル・コイルの巻き数の感度

トロイダル・コイルFT37-43は設計値の25回巻きで内周は満杯になります。さらに増感しようと重ね巻きをするとネジ止めが不可になります。そこで、10回巻き(5:5)に減らして感度がどこまで下がるかをシミュレーションしました。

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SWR測定ブリッジのトロイダル・コイルの巻き数変更時の誘起電圧

巻き数の二乗比は1:16から1:1に変更したことになるため、ダイオードD2のアノードに印加されるL2電圧(図中の赤)のマイナス側は-3.1Vの16分の1の-0.2Vになるはずです。シミュレーション結果では、立ち上がりの過渡応答こそ大きな電圧が生じていますが、線形ロジックで予想した通りの-0.2Vに収束しています。プラス側は6Vから0.375Vになると予想されますが、0.3V程度になっていることは確認できます。

C1の充電が完了した平衡状態での交流信号を拡大した結果を下記に示します。

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SWR測定ブリッジのトロイダル・コイルの巻き数変更時の誘起電圧(時間軸拡大)

予想外のことですが、L2電圧の周波数が7MHzではなくなっています。4倍の28MHzほででしょうか。さらに複雑なことに、振幅は7MHzで変調されているように見えます。反射電圧と混合して、ミキサのような挙動を示しているのでしょうか。

L2電圧の挙動が複雑なため、C1に印加される最大充電電圧の推定は難しいのですが、シミュレーション結果は五分の一の0.4V強に収束しています。LEDが明るすぎる場合にはL2の巻き数を減らせば良いことが確認できました。

Penntek TR-35(0)調査

The WA3RNC Online Store

WA3RNC局John Dillonさんが主宰するThe WA3RNC Online Storeにて、興味深いCW QRPトランシーバキットPenntek TRシリーズが販売されています。

拠点がPennsylvaniaにあることから、Penntekというブランド名あるいは会社名はPennsylvania Technologiesから取っているのではないかと推測しています。

Online Storeには下記3機種が掲載されていますが、現時点で販売中なのはTR-35のみとなっています。TR-25はTR-35の前身で製造中止、TR-45Lは販売準備中です。

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TR-45Lの大型アナログメータはWeb上でも人気があり話題になっています。ディジタル全盛時代に魅力的なデザインと思います。

TR-35は移動用ということで、搭載する4バンドの中に波長が短い17mが入っています。TR-45Lは固定局用ということで、17mが外れて80-75mが入っています。4バンドという制約はLPFのフットプリントに起因していると思われます。

追記(2022/06/16)

TR-45Lは5バンド(80-75m、40m、30m、20m、17m)に設計変更された模様です。

Penntek TR-35

過去に組み立てた、あるいは調査したQRPトランシーバ(QCX-mini、AFP-FSK、RS-HFIQ)とTR-35を、当局の薄学に基づき比較してみました。回路図や組立マニュアルはOnline Storeからダウンロードできます。

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TR-35はポータブル筐体にも係わらず、4バンド(40/30/20/17m)を搭載していることが際立っています。一般的に、LPFのトロイダルコアが大きなフットプリントを占めるため、多バンド化が困難になるからです。

LPF

特徴的なLPFはコイル4段x2式(40-30m用、20-17m用)の構成です。ただし、最終段コイルL26は全バンド共用です。さらに、各コイルが並列コンデンサを備えた楕円関数フィルタ(共振回路の極を利用してカットオフ周波数付近の減衰特性を急峻にするフィル タ)の構成です。すなわち、ウェーブトラップが3段x2式+1=7組搭載可能な構成です。ポータブルでこのように奢ったLPFは初めて見ました。

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TR-35のLPF

終段はB級なので、強度の大きな高調波が発生すると思われます。40-30m用LPF(図中の青)は、10MHzは通過させるが14MHzは遮断する必要があります。20-17m用LPF(図中の赤)は、18MHzは通過させるが28MHzは遮断する必要があります。これらの要請から、急峻なフィルタ特性が必要になったものと思われます。機会が有れば、LTspiceでフィルタ特性を調べてみたいと思います。

なお、キットを選択してもコイルは予め線材をコアに巻いた状態で供給されるようです。QCXのように調整測定機能を備えていない代わりに、再現性や調整がクリティカルな部分は予め調整して供給されるようです。SMD部品も実装済みです。

BPF

受信部のBPFはバンド毎に備えています。RS-HFIQのBPF回路網とよく似た構成になっていて、FETスイッチでPINダイオードに電位差を印可してRF的にActiveな回路を切り替える方式です。フットプリントが大きくなるリレーは搭載していません。

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TR-35のBPF

RS-HFIQのBPFより素子数は多く、可変コンデンサを搭載しており、通過帯域を微調整可能になっているようです。おそらくSMD搭載済み、調整済みで提供されると思います。

RF Gain調整用の可変抵抗がBPFの入力に設けられています。この可変抵抗は全面パネルから独立したノブによってアクセス可能で、下記のUI訴求ポイントの1つになっています。

復調回路

復調回路は、AFP-FSKと同じSA612(ギルバートセルによるモノシリック Double-balanced mixer and oscillator)アナログICを採用しています。ただし、IF用とBFO用に2式搭載しています。

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TR-35の復調回路

前段のIF mixerと後段のBFO mixerの間に4段の水晶ラダーフィルタ(図中の緑)を入れてイメージを抑圧しています。水晶ラダーフィルタのコンデンサの接地回路にトランジスタスイッチを入れて、通過帯域のNarrow/Wideを切り替える工夫があります。QSDダウンコンバータを用いるQCXとは異なるアナログ方式のため、比較の興味を駆り立てられます。

後段のBFO mixer入力から前段のIF mixer入力にAGC(図中の青)を掛けられるようになっています。イヤホンやヘッドホンによる運用ではAGCがあると安心です。

UI(User Interface

TR-35の訴求ポイントは「全ての機能にノブとスイッチを用意した操作性」となっています。ノブによって直接調整可能な項目は、Keyer速度、TXパワー、RXゲイン、ボリューム、そしてチューニングです。サイドトーンのボリュームは基板上で予め調整する必要があるようです。

チューニング用の光学式エンコーダは回転スイッチ式ではなく、連続回転するタイプのようです。写真で見ると小型な部品に見えますが、是非触ってみたいものです。

参考資料

TR-35は新しいモデルのため、まだレビューは少ないようです。AE5X局が「Thoughts on the Penntek TR-35 QRP transceiver kit」という題名のレビューを2022/3/10にブログに掲載しています。自身で購入した上でのレビューですので、良い点、悪い点を述べた公平な内容になっていると思います。

ARRL QST誌(December 2021)に「WA3RNC TR-25 40/20-Meter CW Transceiver Kit」という題名で、前身のTR-25のProduct Reviewが掲載されています。ラボでの性能評価結果も掲載されているため、参考になるかと思います。Online StoreにPDFへのリンクがあります。

補記:注文方法

注文方法を調べてみました。支払いはPayPal、郵送オプションはちょっと心配になるUSPS一択でした。ところが、国名リストをプルダウンしても「US」しか出てきません。何の注意書きもありませんが、北米国内販売しか想定していないようです。

問い合わせフォームがありましたので「日本からTR-35を注文できますか?」と聞いてみました。直ぐにJohnさんから返信がありました。「 以前、TR-35をFedEXで日本に発送しました。Webサイトから直接注文することはできません。 日本の住所を連絡してくれれば、TR-35とFedExの見積もりをメールで返信します。 見積もりに了解なら、Paypal請求書を送ります。」とのこと。既に日本からTR-35を注文した方がおられるようです。

AFP-FSK Transceiver(5)LPFのトランジェント解析

AC解析によってLPFの性能は検討できますが、LPFに入力される高調波の強度が不明なため、スプリアス規格を満たすかどうかまでは分かりません。そこで、LPFと共に電力増幅回路をLTspice回路図に組込み、トランジェント解析を試みました。

LPFのLTspiceトランジェント解析モデル

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LPFのトランジェント解析モデル(40mの例)

LOのSi5351A(購入機はMS5351M)の出力はそのままコネクタ経由で基板上を引き回されているため、浮遊容量等により矩形パルスがダンピング変形していると思いますが、緩衝増幅や励振増幅の役割を果たす74HC02(購入機は高速版の74AC02)によって再び矩形パルスに成形されると考えました。そこで、トランジェント解析モデルでは74HC02の出力をパルス電源によって置き換えました。何れにせよ、電力増幅のBS170はスイッチング駆動のため、どのタイミングでゲート電圧のThresholdを切るかという問題になると思います。

実は、標準ライブラリの中に無い74AC02のLTspiceモデルをトランジェント解析モデルに一度組み込んでみたのですが、「括弧が足りない」旨のエラーが発生したため、使用を断念しました。

N-MOSFETのBS170のLTspiceサブサーキットモデルは<http://ltwiki.org/files/LTspiceIV>の中に見つかりました。シンボルは標準で備わるnmosのシンボルを流用しました。Zener Diodeの1N4756Aも同様です。サブサーキットモデルのため、シンボルのテキストファイルの中で「SYMATTR Prefix X」として「X」を指定することがポイントです。また、ライブラリパスの登録が上手く行かないことがあるため、回路図の中に直接「.lib ・・・」Directiveを記述しました。

チョークコイルL1は回路図に巻き数しか記載がないため、<https://toroids.info>でインダクタンスを計算しました。

トランジェント解析結果(40m)

40mのBS170のVgs(Gate-Source Voltage)、Vds(Drain-Source Voltage)、Id(Drain Current )のトランジェント解析結果を以下に示します。

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40mのトランジェント解析結果 - BS170のVgs、Vds、Idの関係

Vdsの傾きがゼロになる変曲点の谷でVgsがONになり、スイッチングしていることが分かります。フライホイール回路を最適化した理想的なE級増幅であれば、この変曲点のVdsはゼロボルトになっているはずですが、解析結果は12Vでした。トランジェント解析モデルに反映できていない浮遊容量等によって、実回路ではゼロボルトでスイッチングするのかもしれません。

あるいは、LPFのコイルL3がフライホイール回路のコイルを兼業しているため、最適化できていないのかもしれません。組立マニュアルには、出力の最適化のためにコイルL3の巻線間隔を微調整するように指示があります。

LPF入力のVdsとLPF出力のVant(空中線電圧)のトランジェント解析、およびそのFFT結果を以下に示します。

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40mのトランジェント解析結果 - LPF入力のVdsとLPF出力のVant(空中線出力電圧)の関係

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40mのトランジェント解析結果 - LPF入力のVdsとLPF出力のVant(空中線出力電圧)のFFT

LPFによってVantは正弦波に近くなります。FFTの結果を見ると、LPF入力のVdsの第二高調波(14MHz)は基本波(7MHz)に対して6dBc小さいだけの強度を持っていますが、LPF出力のVantの第二高調波はLPFによって抑圧され、52dBcの強度となってスプリアス規格を満たします。LPFの抑圧能力は46dBc(= 52 - 6)となり、前述のAC解析結果より大きな値となっていますが原因は不明です。

一方、第三高調波(21MHz)の強度は44dBcもあります。これが、ウェーブトラップを第二高調波に最適化していない理由かもしれません。この仮説が正しければ、コイルL2に加えてコイルL3に対してもウェーブトラップを二重に設ける必要があるかもしれません。過去に調査したRS-HFIQにその実例があります。

Vant(空中線電圧)とIant(空中線電流)のトランジェント解析結果を以下に示します。

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40mのトランジェント解析結果 - Vant(空中線電圧)とIant(空中線電流)の関係

これより、空中線パワーは1.9Wになります。奇しくも、先に組み立てた13TR-FT8トランシーバと同じパワーの予測になりました。両者の電力増幅回路の構成は似ているため、不思議ではないのかもしれません。

ただし、AFP-FSK Transceiverは5Wと紹介されているため、E級増幅の最適化が反映されていないことを意味しているのかもしれません。同じBS170を3並列で用いたQCXの場合は、5W前後が得られていました。

組立マニュアルには、出力の最適化のためにフライホイール回路のコイルL3の巻線間隔を微調整するように指示があります。回路図にコイルL3のインダクタンスの設計値の記載はありません。そこで、シミュレーションの利点を生かして、出力に対するコイルL3の感度を調べました。

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フライホイール・コイルL3の最適化シミュレーション

https://toroids.info>から巻数の指示に対するコイルL3のインピーダンスは1.3[μH]でした。シミュレーション探索の結果、最適インピーダンス1.6[μH]で3.1[W]が得られることが分かりました。まだ5[W]には届きませんが、コイルL3の調整で出力が変わることは事前に分かりました。

この時のVgs、Vds、Idの関係を下記に示します。

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トランジェント解析結果 - BS170のVgs、Vds、Idの関係(L3=1.6[μH])

Vdsの傾きゼロの変曲点は2V以下になりましたが、Vgsのスイッチングより後方に移動してしまいました。Vgsのスイッチング時のVdsは8Vであり、従来の12Vよりは小さくなっていますが、さらに改善の余地があります。タイミングを合わせるためには、コイルL3の調整だけでは自由度が足りないように思えます。

コイルL3を1.6[μH]にするためには、巻数を18回から2回増やしてコイルL2と同じ20回にする必要があります。巻線間隔の微調整だけでは達成できない値と思います。やはり、浮遊容量等の解析モデルに反映できていないパラメータの効果を含めて、実測で確認する必要がありそうです。

共振現象を応用するE級増幅回路が微妙なバランスの上に成り立っていることが分かりました。QCXと同じく、組立後の出力が思わしくない場合には調整能力(根気)が問われるキットと思います。

トランジェント解析結果(30m)

30mのBS170のVgs(Gate-Source Voltage)、Vds(Drain-Source Voltage)、Id(Drain Current )のトランジェント解析結果を以下に示します。

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30mのトランジェント解析結果 - BS170のVgs、Vds、Idの関係

Vdsの傾きがゼロになる変曲点の谷より少し遅れてVgsがONになり、スイッチングしていることが分かります。フライホイール回路を最適化した理想的なE級増幅であれば、この変曲点のVdsはゼロボルトになっているはずですが、解析結果は15Vでした。

LPF入力のVdsとLPF出力のVant(空中線電圧)のトランジェント解析、およびそのFFT結果を以下に示します。

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30mのトランジェント解析結果 - LPF入力のVdsとLPF出力のVant(空中線出力電圧)の関係

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30mのトランジェント解析結果 - LPF入力のVdsとLPF出力のVant(空中線出力電圧)のFFT

LPFによってVantは正弦波に近くなります。FFTの結果を見ると、LPF入力のVdsの第二高調波(20MHz)は基本波(10MHz)に対して0.4dBc小さいだけのほぼ同じ強度を持っています。LPF出力のVantの第二高調波はLPFによって抑圧され41dBcの強度となりますが、スプリアス規格には届きません。第三高調波(21MHz)も42dBcの強度を持っています。

Vant(空中線電圧)とIant(空中線電流)のトランジェント解析結果を以下に示します。空中線パワーはわずか1.06Wになりました。

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30mのトランジェント解析結果 - Vant(空中線電圧)とIant(空中線電流)の関係

トランジェント解析結果(20m)

20mのBS170のVgs(Gate-Source Voltage)、Vds(Drain-Source Voltage)、Id(Drain Current )のトランジェント解析結果を以下に示します。

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20mのトランジェント解析結果 - BS170のVgs、Vds、Idの関係

Vdsの傾きがゼロになる変曲点の谷でVgsがONになり、スイッチングしていることが分かります。フライホイール回路を最適化した理想的なE級増幅であれば、この変曲点のVdsはゼロボルトになっているはずですが、解析結果は10Vでした。

LPF入力のVdsとLPF出力のVant(空中線電圧)のトランジェント解析、およびそのFFT結果を以下に示します。

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20mのトランジェント解析結果 - LPF入力のVdsとLPF出力のVant(空中線出力電圧)の関係

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20mのトランジェント解析結果 - LPF入力のVdsとLPF出力のVant(空中線出力電圧)のFFT

LPFによってVantは正弦波に近くなります。FFTの結果を見ると、LPF入力のVdsの第二高調波(28MHz)は基本波(14MHz)に対して強度が大きくなっています。LPF出力のVantの第二高調波はLPFによって抑圧され50.2dBcの強度となり、スプリアス規格をボーダーライン上で満たします。一方、第三高調波(42MHz)は43.1dBcの強度を持ち、スプリアス規格を満たしません。第二高調波(28MHz)に最適化したウェーブトラップをLPFに備えた影響かもしれません。第三高調波(42MHz)に最適化したウェーブトラップをLPFに増設すると改善するかもしれません。

Vant(空中線電圧)とIant(空中線電流)のトランジェント解析結果を以下に示します。空中線パワーはわずか0.56Wになりました。

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20mのトランジェント解析結果 - Vant(空中線電圧)とIant(空中線電流)の関係

LPFのトランジェント解析のまとめ

トランジェント解析によって、E級増幅回路のタイミング可視化の可能性があることが分かりました。ただし、一般的なことですが、シミュレーションの精度を確保するためには、リアルを反映したモデルの構築が必要です。

今回のモデルが十分な精度を有しているかどうかは、出来上がった回路を測定してみないと判断できません。しかし、推定される出力パワーが小さ過ぎるため、どこかに瑕疵か齟齬が有ると考えるのが妥当なような気がします。

例えば、リアルでもこれだけ効率が悪ければBS170が発熱し、FT8の15秒の連続送信に耐えられないと思われるのですが、特に放熱の仕掛けをキットは持っていません。前のバージョンではQCXのようにBS170を基板に密着させて放熱していたようですが、今回のバージョンではBS170は起立しています。5W出力で発熱しないことを前提にした設計になっているため、リアルの効率は高いと推測しています。

AFP-FSK Transceiver(4)LPFのAC解析

日乗

ワクチン3回目接種に行きました。当局居住地の自治体では「18歳以上×6か月経過者」のフェーズになっています。前回は最速で受けられる大手町の大規模接種センタにしましたが、今回は自治体の大規模接種センタにしました。大規模接種センタのワクチンは何れもモデルナでした。

会場までの市中は混雑していましたが、会場内は空いていました。待ち行列に並ぶことなく、各ブースに直行です。この時点での6か月経過者には年配者が多いため、やはりファイザーに需要が偏っているのでしょうか。

システムは大手町と同様です。多くの人員が配置され、接種ブースまで何回も丁寧に案内されました。唯一の違いは、接種ブースがカーテンで完全に目隠しされていることです。冬の着込んだ服装で肩を露出するための配慮でしょうか。

 

さて本題ですが、QRPGuys AFP-FSK (Audio Frequency Processed - Frequency Shift Keying) Digital Transceiver III のLPFの性能を事前に探るために、LTspiceシミュレーションを試みました。今回はAC解析の結果をご紹介します。次回にトランジェント解析の結果をご紹介したいと思います。

AFP-FSK Transceiver のバンド・モジュール

AFP-FSK Transceiver はバンド依存のフィルタ部をモジュール化し、バンドによってモジュールを差し換える仕様になっています。モジュールはバンド毎に値の異なる抵抗をIDとして搭載し、差し換えによって自動的に切り替えたバンドを認識する仕組みになっているようです。

バンド・モジュールを下記に示します。

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バンド・モジュール:左側にLPF、右側にHPF、右端にバンドIDの抵抗を搭載
(組立マニュアルの図に追記)

バンド・モジュールは左側のLPFの他に、右側にRx信号線につながるコンデンサC25とインダクタL4を搭載します。当初、これらの役割が判然としませんでした。最初は、インピーダンス整合を図るハイパス型Lマッチ回路と推定しました。受信回路のインピーダンスは出力インピーダンス∞のFETスイッチの後段に付くR1によって51Ωになると思われます。これに対して、混合器SA612Aの入力インピーダンスは1.5kΩ以上です。しかし、51Ω - 1.5kΩのLマッチ設計法の検算をしても素子値が合いません。

廃版となった前バージョンのDSB Digital Transceiver II のホームページを調べたところ、バージョンⅠからⅡへの変更点として以下が挙げられていました。

  • a high pass filter to help with BCB interference in troubled environments
  • replaced the relay with solid state switching
  • added a zener diode for atmospheric surge suppression
  • designed a multi-band 160m-17m VFO as an easy plug-in option

使途不明の回路は、放送局からの混信を受ける局向けのHPFだったということが分かりました。Rx信号は前述のLPFを通過するため、合わせてBPFを構成することになります。送信パスのLPFのAC解析に加えて、受信パスのBPF(LPF+HPF)のAC解析も併せて検討しました。

LPFのLTspice AC解析

LPFのAC解析モデル

AFP-FSK Transceiver のLPFは、コイル2個5素子のLPFにウェーブトラップのコンデンサ1個を加えた構成です。コイルのフットプリントは大きくなるため、小型化を志向するQRP機ではこの構成が多く見られるようです。

LPFのLTspiceモデルを40mを例に下記に示します。入力側に出力抵抗50Ωの交流信号電圧源を配置し、アンテナ電圧を評価しました。

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LPFのLTspice AC解析モデル(40mの例)

コイルL2およびL3のインダクタンスの設計値は回路図に記載が無いため、toroids.info(https://toroids.info/T37-6.php)から計算しました。上図左上に40mバンドの結果を表示しています。

ウェーブトラップのコンデンサC21の40mバンドの設計値は68pFですが、感度および改良の指針を得るために、2つの値を追加して比較しました。

LPFのAC解析結果(40m)

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40m LPF の LTspice AC解析結果

オリジナル設計値のC21=68pFでは、第二高調波14MHzの抑圧能力は-40.6dBcと推定されました。LPF入力段において基本波に対する第二高調波の強度が-10dB以下であれば、LPFの出力段では「50dB低い値」(5Wに対しては50μW以下)となり、スプリアス規格(スプリアス領域における不要発射の強度の許容値)を満たします。

この抑圧能力はQCX+とほぼ同じです。発振からLPFまでの送信機系統図もほぼ同じであることを考えると、AFP-FSK Transceiver もスプリアス規格に対してボーダーライン上のキットになる可能性が高くなりました。

オリジナル設計では第二高調波より右側の離れた位置にトラップ周波数が設定されています。普及価格のコンデンサは5%程度の公差を持っているため、ドンピシャのトラップ周波数を再現することは困難になります。キット販売元としては、北米の規制を満たす抑圧能力に対して無調整の再現性を重視しているのかもしれません。

規制の厳しい日本のユーザ個人としては、裏面にコンデンサを並列に追加調整することによってC21を80pF程度に追い込めば、スプリアス規格を満たせそうです。外付けのLPFまでは必要にならないということで一安心です。

LPFのAC解析結果(30m)

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30m LPF の LTspice AC解析結果

オリジナル設計値のC21=47pFでは、第二高調波20MHzの抑圧能力は-34.1dBcと推定されました。LPF入力段において基本波に対する第二高調波の強度が-16dB以下でなければ、スプリアス規格を満たせません。

30mバンドも、オリジナル設計では第二高調波より右側の離れた位置にトラップ周波数が設定されています。30mは40mより調整が厳しいですが、C21を62pF程度に追い込めばスプリアス規格を満たせそうです。

LPFのAC解析結果(20m)

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20m LPF の LTspice AC解析結果

オリジナル設計値のC21=33pFのままで、第二高調波28MHzの抑圧能力は-63.0dBcに到達すると推定されました。LPF入力段において基本波に対する第二高調波の強度が同じでも、スプリアス規格を満たせます。

20mバンドは、オリジナル設計で第二高調波とトラップ周波数がほぼ一致しています。コイルのインダクタンスのばらつき等の影響がなければ、無調整でスプリアス規格を満たせそうです。40mおよび30mと比較して設計思想に一貫性がないようですが、20mバンドに何か問題があったのでしょうか。

LPFのAC解析結果のまとめ

40mおよび30mのLPFは設計値のままでは、日本のスプリアス規格(スプリアス領域における不要発射の強度の許容値)に対してボーダーライン上の性能になる可能性が推測されました。20mのLPFはスプリアス規格を満たせそうです。

スプリアス規格を満たすためには、ウェーブトラップの周波数を決めるC21の調整が有効であるとの指針を得ました。

トロイダル・コイルを巻いた後にLPFを構成する素子のパラメータを実測して、LTspice AC解析を再試行する必要があると考えます。

バンドが高い周波数帯になるにつれて、LPFの挿入損失が増えることも分かりました。

BPFのLTspice AC解析

BPFのLTspice AC解析モデル

BPF(LPH+HPF)のLTspice AC解析モデルを、40mを例に下記に示します。アンテナ側に出力抵抗50Ωの交流電圧源を配置して周波数を掃引し、受信側SA612Aの入力インピーダンス1.5kΩのIN電圧を評価しました。

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BPF(HPF +LPF)のLTspiceモデル(40mの例)
BPFのAC解析結果(40m)

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40m BPF の LTspice AC解析結果

HPFのコンデンサC25が設計値100pF(緑色)のままでは通過帯域の中心が8MHzとなり、7MHzで通過損失が発生することが分かったため、C25の最適化のために150pF(青色)と220pF(赤色)の評価を追加しました。

C25=150pFの時に通過帯域の中心が7MHzとなり、最適値であることが分かりました。なぜ100pFで設計したのでしょうか。実測すると浮遊容量などの影響で特性が異なるのでしょうか。北米の放送局の周波数がよほど近接しているのでしょうか。

BPFのAC解析結果(30m)

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30m BPF の LTspice AC解析結果

HPFのコンデンサC25が設計値68pF(緑色)のままでは通過帯域の中心が12MHzとなり、10MHzで通過損失が発生することが分かったため、C25の最適化のために120pF(青色)と180pF(赤色)の評価を追加しました。

C25=120pFの時に通過帯域の中心が10MHzとなり、最適値であることが分かりました。

BPFのAC解析結果(20m)

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20m BPF の LTspice AC解析結果

HPFのコンデンサC25が設計値47pF(緑色)のままでは通過帯域の中心が17MHzとなり、14MHzで通過損失が発生することが分かったため、C25の最適化のために100pF(青色)と150pF(赤色)の評価を追加しました。

C25=100pFの時に通過帯域の中心が14.3MHz付近となり、適正値であることが分かりました。

BPFのAC解析結果のまとめ

HPFのコンデンサC25の設計値が、どのバンドでも過小であり、通過帯域の中心が高域側にずれ、受信周波数で通過損失が発生することが分かりました。

HPFを構成する素子のパラメータを実測して、LTspice AC解析を再試行する必要があると考えます。