非職業的技師の覚え書き

JK1EJPの技術的検討事項を中心に記録を残します。

QRPGuys Z Tuner(2)組立

部品の仕分け

QRPGuys Z Tunerの組立準備として、まず部品の仕分けを行いました。ヨーグルトのカップを再利用したパーツボックスに順番に入れて行きます。不足部品はありませんでした。余剰部品として、長ネジが一本多いような・・・?

電子部品よりもネジ、コネクタ、トロイダル・コア等が存在感を放っています。

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Sorting parts for QRPGuys Z Tuner kit

カップは固定されていないため、ひっくり返したら大変です。期待通り、一度ひっくり返してしまいました。

シャーシ組立

回路基板の他に、基板材で作ったフロントパネルとガセット(三角板)2枚が供給されます。これらをハンダ付けで組み立て、シャーシとします。

最初に、回路基板とフロントパネルをはんだタック(点付け)で仮組します。マニュアルには、はんだ収縮を考慮して角度91~92°の開きでタックするように細かな指示がありますが、タックしただけでは角度を固定する強度は出ないため、90°の治具(箱など)に添わせる仮組で十分でした。角度よりも 面合わせ(flush)の方が重要です。

角度決めに関しては、続くガセットのタックの方が重要です。位置決めする爪は無いため、テープで仮組して回路基板とフロントパネルの双方にタックします。ガセット2枚をタックするとフロントパネルの角度は90°に固定されます。検査して問題が無ければ、タック部に大量のはんだを供給して線付けします。面積が広いためコテの温度が重要です。370~420度℃で行いました。

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Chassis assembly

SWR測定ブリッジ回路の組立

電子部品はSWR測定ブリッジ回路を構成する部品だけです。これらの小物部品を先に組み立てます。

2W 51Ω抵抗は適宜品種入れ替えがあるのでしょう。基板の穴間隔は広めに取ってあるのですが、この品種は寸法が大きく、空中に浮かせざるを得ませんでした。

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Assembly of SWR measurement bridge circuit

高周波電圧差を増感?するFT37-43トロイダルコイルは小さい径のため、写真で巻き数を確認するようにマニュアルに指示がありました。確かに写真で確認すると楽です。

テンションを掛けて密に巻いたつもりでしたが、写真で見るとコア外周の密着が甘いことも分かります。しかし、インダクタンスを実測するとtoroids.infoによる計算値よりも10%以上大きくなりました。

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Comparison of calculated and measured values of FT37-43 toroidal coil inductance

コイルの線材をはんだ付けするための穴はタップも含めて基板の適切な位置に開いています。コアはネジとワッシャー、ナットで基板に固定する方式のため安心です。

Tuner部の組立

ポリ・バリコン

ポリ・バリコンも品種が変遷しているようです。マニュアルには2種類のポリ・バリコンについて、3本のリードの出る位置を基板に合わせて改造する説明があります。同梱されていたポリ・バリコンは3本のリードがそのまま基板の穴に入りました。

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Polyvaricon trimmer adjustment and assembly

ポリ・バリコンの型式や容量は不明ですが、容量を測定したところ、AMラジオ用の二連(160+60pF)ポリ・バリコンのようです。千石電商で扱いのあるCBM-223F-1F4と外観は同じです。

二連ですが容量を増すためか並列接続して使います。Tunerとしての容量変化比を最大にするためか、トリマは付加容量最小の位置に調整します。マニュアルは単なる工作指南書に終始し、「なぜそうするのか」の説明が一言足りないのが残念です。大袈裟ですが、設計図書で重要なのは最終成果物の回路図だけではなく設計思想の記載です。思想が分からなければ技術は伝承され得ません。単に安価にするためにキットを購入している訳ではなく、仕組みを知りたいために購入しているのですが・・・。

トロイダル・トランス

バリコンの次は、いよいよトロイダル・トランスの製作です。最初に線材の切り出しを慎重に検討します。大径20AWGのエナメル線は予備の保有がないため、思い違いをすると(継接ぎで)見た目が残念なトランスになってしまいます。

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Cut out three 20 AWG enamel wires for winding on a toroidal transformer

マニュアルにはインチで線長が指示されているためcmに変換し、誤植や誤解があるといけないためtroids.infoの計算結果と照合します。マニュアルの指示線長はtroids.infoの計算値よりも長く、余裕を見ているようです。それでも支給全長183cmが10cm以上余る計算です。実際の支給全長はさらに余裕の218cmでした。

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Checking the number of windings of the toroidal transformer

同色のエナメル線3本を同色のT106-2コアに巻くため、巻き数のチェックが大変です。中央のタップを目印に確認します。主巻線は16回巻きのため片側に8本、合計16本、これは容易に確認できます。高インピーダンス用二次巻線の12回巻きを重ねると片側に14本、合計28本。さらに、低インピーダンス用二次巻線の6回巻きを重ねると片側に17本、合計34本。重ね巻きを実施する度に写真を残すことが重要です。写真で所々墨が付いたようになっているのは、マジックでマーキングしたためです。

大径20AWGのエナメル線の被覆を燃やすのは大変です。ストリッパが欲しくなってきました。

インダクタンスを実測するとtoroids.infoによる計算値よりも10%前後大きくなりました。低インピーダンス用二次巻線のインダクタンスは63.3%も大きくなりましたが、LCRメータ(Peak Atlas Model LCR40)の測定レンジが1uH~10Hのため、測定範囲を超えたことによる誤差と思われます。

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Comparison of calculated and measured values of toroidal transformer inductance

FT37-43と同様に、コイルの線材をはんだ付けするための穴はタップも含めて基板の適切な位置に開いています。コアはネジと基板材ワッシャー、ロックナットで基板に固定する方式のため安心です。ロックナットはかなりトルクを要しました。

完成

以上で完成です。やはり長ネジが余りました。テストは後日・・・。

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Assembly completed