非職業的技師の覚え書き

JK1EJPの技術的検討事項を中心に記録を残します。

室内ロングワイヤーアンテナはSWR1.0の夢を見るか(8)

厳しい残暑が続いていますが、朝晩に秋の気配を多少は感じられるようになってきました。この夏の室内LWアンテナx10Wの成果を刈り取るべく、成果物の収集に取り組んでいます。

WAC Award

申請

WAC(Worked All Continents)アワードはIARUの発行ですが、申請先はARRLになるようです。JARL会員の場合はJARLが代行申請してくれます。e-QSLは認められていなとのことですが、ARRLが運営するLoTWは使用可能です。今回は全てLoTWのデータをQSL(交信証明)として使用しました。

JARL様式のアワード申請書を使用」との指示がありますが、電子申請ページから申請する場合は、ページ入力自体が申請書に該当するため、QSLカードリストのファイルを準備するだけで済みます。

QSLカードリストの様式は特には指定されていないようでしたので、JARL発行アワード用のExcelリストを使用しました。1列目の「都道府県市郡番号」は空欄とし、備考に「大陸名」を記入しました。欄外に、各大陸のLoTW QSO Detailの画像をQSLとして貼り付けました。

このExcelファイルを電子申請ページからアップロードして完了です。後は申請手数料を振り込んで吉報を待ちます。

着荷

2023/07/10に申請したところ、約2か月後の2023/09/09にJARLから届きました。オンデマンドの処理ではなく、月次バッチ処理になるようです。リードタイムはこれより早くなることも遅くなることもあると思います。

特記は3つまで申請可能ですが、選択可能な特記は「CW」だけでした。「室内LWアンテナx10W」が心の中の特記です。

PDF全盛の時代ですが、物理的実体のある厚紙のアワードはフレームに入れればお蔵入りすることもありません。サイズは約 21.6 x 28.0 cmでした。四切(25.4×30.5 cm)のフレームなら入りそうですが、写真用の四切フレームは余白が大きくなってしまいます。A4(21.0 x 29.7 cm)のフレームでは縦寸法が少し不足しますが、賞状用のA4フレームの品揃えの中から上手く選定すればギリギリ入りそうです。

Indonesia Award 2023

SES

8月12日に聴き慣れないコールサインが聴こえてきました。8から始まるため、記念局のコールサインと思い、該当する記念イベントを調べようと聴き耳を立てていたところ、「8J」でも「8N」でもなく「8H」でした。新しいプリフィックスの発給か?と思い、調べたところ、日本の記念局ではなく、インドネシア独立78周年を記念したIndonesia Award 2023の特別イベント局(SES:Special Event Station)であることが分かりました。8月17日が独立記念日のため、8月12日から20日までQRVしていました。

しかし、Rulesがインドネシア語で記載されているためAward参加規程が良く分かりません。Languageメニューはあるのですが、英語や日本語を選択してApplyしてもWebページが反応しません。参加登録や参加番号の交換は特にはないようでしたので、普通に交信すれば良いと判断しました。

Chaser

SES数局と交信した後に「Search Chaser」ページから自局のコールサインを入力すると、参加登録をしていないのに氏名が出て来て少し驚きました。QRZ.comと連携しているのかもしれません。

背景緑の数字はSES各局のログに記録されている各Band x Mode毎のQSO実績を表し、数字はQSO回数ではなく獲得点数(SES局数 x Band別配分点数)です。SES x Band x Modeの初回のQSOのみ有効です。この規則が後述の問題を引き起こすことになります。

背景青の数字は、こちらのログを「Chaser Logger」ページからUploadして、SESのログと照合が取れた結果を表しています。ログはADIF形式でUploadしますが、タグ(列名)の構成は下記INFOに示されている通り、LoTWとは異なります。

INFO: 
(前略)
3. ADIF Minimal berisi informasi: <CALL>, <STATION_CALLSIGN>, <QSO_DATE>, <TIME_ON>, <MODE>, <FREQ>, <BAND>,
<RST_SENT>, <RST_RCVD>, dan untuk mode satelit: <PROP_MODE>, <SAT_NAME>, jika tidak lengkap maka akan terjadi Error.
(後略)

インドネシア語のINFOなので、Uploadに2回試行錯誤しました。SESのコールサインのタグ<CALL>に加えて、交信時に使用した自局のコールサインのタグ<STATION_CALLSIGN>が必要です。固定局/移動局のコールサイン等の複数のコールサインに対応するためと思われます。

さて、10m CWの背景青の数字が0点であることが分かります。これが自力では救済できないUnconfirmed問題です。

Unconfirmed

「Search Chaser」ページを下方にスクロールすると、ログの詳細を見ることができます。

上側の「Logged QSO」は、SESのログに対してUploadした自局ログの照合結果を示します。2行目の8H78I x 10mがUnconfirmedと判定されています。自局のログには存在していないため、この判定結果は当然なのです。

こちらのログには記録されているのにSESのログには記録されていないケースは、室内LWアンテナx10Wでは起こり得る問題です。しかし、これは逆のケースです。SESのログには記録されているのに、自局のログには記録されていません。Hamlogから手書きログまで追跡しましたが発見できません。困ったことに「コールバックが取れなかったあのケースかな・・・」というような記憶もないのです。可能性の1つとして考えられるのは、モールスコードが類似した他局のコールサインのミスコピーです。初日のこの日に8H78I x 20mで交信しているため、OPが同じ人であれば当局のコールサインが耳に残っていた可能性はあり得ます。

下側の「Unconfirmed Chaser Log QSO」は、こちらのログには記録されているのにSESのログには「1st QSO」として記録されていないケースです。最終日に近いこの日はコンディションが良く、余裕を持ってコールバックを確認できたため、確実にSESのログに記録されていると思います。しかしながら、8H78I x 10mは初日に1st QSOしたと見なされているため、それが連鎖してUnconfirmedとされてしまいました。Awardに対してUnconfirmedでも、QSO自体はConfirmedにして欲しいところです。LoTWのように相互ログ照合にすれば、このようなUnconfirmed連鎖問題は起きないと思うのですが・・・。

eQLS

照合が取れたQSOに対してはQSLボタンが表示され、eQSLがダウンロードできます。ボタンがWebページに表示される状態になっても、しばらくの間は動作しなかったのですが、9月10日にダウンロードできるようになっていました。

この美しいeQSLのデザインはSES各局共通のようです。WRTC 2022開催記念局やイタリア赤テント記念局II1ITRのeQSLと同じように、二次元バーコードによる交信証明機能を備えています。しかしながら、9月10日の時点ではまだ動作しませんでした。

Map

QRZ.comのMapから、交信できたSES各局の位置をプロットしてみました。

コンテストで比較的容易に交信できるフィリピンやブルネイ、そして今年DXペディションがあった東ティモールに囲まれるエリアになります。室内LWアンテナx10Wでは聞こえても届かないということが何回もありました。

Statistics

SES各局のQSO集計分析結果が公表されていました。興味深い分析結果を引用します。

左側がモード別のQSO数、右側がバンド別のQSO数です。FT8の割合が50%を軽く超えています。次にSSBが来て、両者で90%近いのではないでしょうか。アワードを狙うにはFT8が必須のようです。
バンド別では40mの割合が高いようですが、当局の環境では都市ノイズが多くNGです。10mの配点が高いのですが、QSO実績から見ると難しいバンドではないようです。もっとも、DX局だけで統計を集計し直すと傾向が変わってくるかもしれません。

RSGB IOTA Contest

7/29-30開催のRSGB(RADIO SOCIETY OF GREAT BRITAIN )IOTA Contestに参加しました。

その結果がWebにUpされました。(https://www.rsgbcc.org/cgi-bin/hfresults.pl?Contest=IOTA%20Contest&year=2023

室内LWアンテナx10Wの順位は、1,878局中1,539位でした。上を見るとキリがないのですが、下を見ても約300局いることに驚きました。

さらに驚いたのは、コンテストで時々交信する米国西海岸のkWコンテスト局のNT6〇が1,548位だったことです。Multsは当局と同じ11、QSOsは当局より1つ少ない13です。当局もこのコンテストでは交信していません。コンディションが悪くて、北米からのパスが開けていなかったのでしょうか。あるいは、珍IOTA局の呼び回りで参加していたのかもしれません。

海外のコンテストは基本的にログ全数照合のようです。交信数15のログを提出したのですが、1つ不成立で14交信が認められました。この照合結果が分かることは重要です。このコンテストで初めてニュージーランドの局と交信できたのですが、頑張って2つのバンドで交信しました。不成立は1つだけなので、少なくとも1つのバンドの交信は成立したことを意味します。ニュージーランド局のQRZ.comを見るとLoTWにログをUpする旨が書いてあるため、首を長くしてLoTWの照合を待っています。

SASE

3通のSASEをリクエストしていた中で、VK9DX(Norfolk Island)からのQSLカードが一番早く到着しました。

4月のQSOですが、机の引き出しの中で行方不明になったGSの発掘とSASEキットの印刷に手間取りました。重い腰を上げて7月25日に日本からSASE発送、8月30日にオーストラリアからSASE返送、9月11日に日本に到着のリードタイムでした。おそらく、Norfolk Islandから定期的にSydneyに戻って、届いたSASEを一括で処理しているものと思います。返信封筒には料金別払いのスタンプが押され、切手は貼られていませんでした。

DX局の紙QSLカードは両面印刷のものが多いように思います。表面に写真とコールサインを配置し、裏面にその写真の説明書きとQSLデータのシールを貼付するというスタイルです。

この裏面の説明書きを読むことが、紙QSLカードを入手する楽しみの1つです。Norfolk Islandの別宅シャック?の来歴が説明されていました。また、表面の写真については「セブンスデー・アドベンチスト教会の感謝祭における近隣の農作物の展示」との説明書きがありました。QRZ.comの写真を見た時には市場の写真かと思っていたのですが、言われてみれば売り子の姿が見えません。QSLカードを入手することにより思い違いを正すことが出来ました。

Norfolk Islandのセブンスデー・アドベンチスト教会は、切手の図案にもなっているようです。

Norfolk Islandの感謝祭についてのブログも見つかりました。

4月のQSO以来、VK9DXの信号を聞いたのは僅かに1回だけです。室内LWアンテナx10Wでは奇跡のQSOだったのかもしれません。

室内ロングワイヤーアンテナはSWR1.0の夢を見るか(7)

IC-705のUSB接続の回り込み防止

USB接続の切断問題

PCとIC-705のUSB接続について、24MHz帯以上の周波数バンド(24MHz帯、28MHz帯、50MHz帯)で送信をするとUSB接続が切断し、回復させるためににはPCの再起動が必要になる問題がありました。USB接続が切断しても、FT8モードと異なりCWモードではIC-705の動作に影響はありませ。しかし、気付かずに放置するとコンテストロガーがIC-705の周波数を拾えなくなるため、バンド別の重複チェックを間違える等の問題が発生していました。今回、一応の解決を見たため、その対策手段を報告します。

なお、IC-705に接続しているノートPCは、処理速度を最も律速すると思われるメモリ帯域へのコスト配分を優先して8MB+8MBのデュアルチャネル構成にし、その代わりにCPUをAMD Ryzenにしてコストを低減しました。そのため、USB通信機能を提供するチップセットIntel PCとは異なります。今回の問題に対する影響は不明ですが、USB接続におけるコモンモードノイズの問題は特定のチップセットに限定されることのない一般的な問題と思います。

USBケーブルのコモンモードノイズ対策

高い周波数バンドでUSB接続がフリーズするのは、高い周波数でのコモンモードノイズの低減性能が不足しているためと思われます。そこで、USBケーブルを巻くフェライト・コアの大型化を試みました。

対策前はUSB接続を最短で行うことを狙いに、0.15mの2重シールドUSBケーブルを採用しました。ケーブルが短いため、コモンモードノイズ対策としてクランプコア(ZCAT1518-0730)を3個だけ嵌めていました。

ZCAT1518-0730のインピーダンスの周波数特性を、メーカのホームページから引用して下記に示します。一番下の赤色の曲線がZCAT1518-0730の特性です。

7~50MHzの周波数帯域でインピーダンスは28~61Ω程度です。コアを3個嵌めているため、合計のインピーダンスは表示値の約3倍になります。インピーダンスには、正弦波電流の微分係数としての周波数が繰り込まれます。そのためか、周波数が高いほどインピーダンスは大きくなっています。高い周波数帯域でコモンモードノイズが問題になるのは、インピーダンスが小さくなるからではなく、USBチップセットの切断感度がその帯域で高いためと推測しています。

コモンモードノイズ対策を強化するために、手持ちのUSBケーブル(1m)を手持ちのフェライトトロイダルコア(FT240-43)に13回巻きました。USBケーブルがもっと長ければ巻き数を増やせます。反対にトロイダルコアはもっと小さくても、コネクタ付きで13回巻けると思います。巻き方は定番?の対角巻き(W1JR巻き)とし、入出力線間の容量結合を防止しました。コアの両側に線が出た方がPCとの接続取り回しも容易になります。

https://toroids.info/FT240-43.phpで計算したFT240-43の13回巻きのインピーダンスを下記に示します。7~50MHzの周波数帯域でインピーダンスは約8K~57KΩとなり、クランプコア(ZCAT1518-0730)3個の場合の95~311倍に増えています。特に問題になっている高い周波数帯域でのインピーダンス増加が著しいと言えます。

対策後のUSB接続の様子を下記に示します。スモールファクタが特徴のIC-705が巨大なイアリングを付ける格好になってしまいました。

対策後にIARU HF ContestおよびRSGB IOTA Contestで、室内LW(8m)アンテナが整合可能なHFバンド(3.5MHz~28MHz)を運用しましたが、28MHzバンドを含めて一度もUSB接続は遮断しませんでした。IARU HF ContestではQRV可能な全てのHFバンドで日本のHQ(Headquarters)局と交信することができました(下記LoTW QSL参照)。

80Mではラジアル性能の不足で信号が特に弱かったと思いますが、一回で取ってもらえました。見通しの良い同じ神奈川県内とは言え、さすがHQ局と思った次第です。

また、フィールドデーコンテストで50MHzバンドを運用し29局と交信しましたが、こちらも一度もUSB接続は遮断しませんでした。オールバンドで参加したため、重複チェックが必須でしたが問題は生じませんでした。開局当時に使用していた5エレ八木に比べると、室内LWアンテナはかなり性能が劣る印象でしたが、関東全県を含む14マルチを50MHzバンドで達成することができました。Eスポの恩恵にはあずかれなかったと思いますが、(おそらく)スキャッターによって中間スキップエリアの三重県および奈良県と室内LWアンテナでも交信することができました。

以上のコンテスト参加による検証により、フェライトトロイダルコアの最適化(寸法縮小)に課題が残るものの、USB接続遮断の問題に対しては一応の解決を見たものと考えています。コモンモード電流を実測して定量的に議論したいところですが、USB延長ケーブルの手持ちがないため、またの機会にしたいと思います。

WiFi接続の課題

元々は宅内遠隔運用のために、PCとIC-705はWiFiで接続する計画でした。WiFi接続が遮断するため、USB有線接続に一時的に避難していただけです。そのUSB有線接続の問題がようやく解決し、室内LWアンテナを活かしたオールバンド(3.5MHz~50MHz)の宅内移動運用が恙なくできるようになりました。

次は初心に戻って宅内遠隔運用環境を整えるために、WiFi接続の問題を解決する必要があります。USB有線接続遮断とWiFi接続遮断の原因は異なると推測しています。USB有線接続遮断はPC側(のチップセットのノイズ耐性)の問題と思われるのに対して、WiFi接続遮断はIC-705側(のWiFiマイコン?のノイズ耐性)の問題と推測しています。理由は、FT8運用テスト時にWiFi接続遮断によってIC-705が送信状態でフリーズし、物理ボタンを含めた一切の操作を受け付けなくなったからです。この時は、電源ケーブルを抜き、さらに電池パックを外して送信を止める必要がありました。なお、タイムアウトタイマー(初期設定5分、最短3分)によって送信は自動的に止まるはずですが、3~5分も送信状態放置では他局に迷惑が掛かります。

マイコンのノイズ耐性が原因と推測するに至った珍しい?室内電波障害が一度発生したため、次に紹介します。

室内電波障害

思いも寄らず、パンを焼くトースターに電波障害が発生しました。室内LWアンテナを設営できる部屋は窓が大きな居間になるため、下写真に示すようにダイニングテーブルに移動して運用しています。

写真左側にフレームインしている黒い物体がトースターです。その近くをLWアンテナの引き込み部分が通過しています。トースターの上部隅にLWが載っている日もあります。トースターの筐体は板金でできているため、室内LWアンテナではなく室内LW+Toasterアンテナになっているかもしれません。AH-705は性能が良いためか、LW+Toaster込々で整合してしまいます。LWがToasterと接している日の方が、苦手な24MHz帯の整合が速いような気がします。

ある日、CW Keyingをすると、トースターのタイマーダイヤルの周囲に円周状に配置されているLED群が突然全灯点滅を開始しました。明らかに、内臓マイコンがエラーを訴えているように見えました。トースターには主電源スイッチがないため、コンセントを抜き差しすると、マイコンがリセットされたためか、LED点滅は止まりました。トーストも焼けます。

トースターのACケーブルは2芯のためアースには落ちていません。モータを使う機器ではないためフレームグランドも取っていません。板金筐体に飛び込んだ電波がマイコンのグランドにノイズとして入り込み、暴走したのではないかと推測しています。発生したのは一度限りで再現性はありません。

ただ、IC-705のWiFiマイコン?にもノイズが飛び込むかもしれないと想起させる経験でした。ちなみに、IC-705のアースを建屋躯体に落としてもWiFi切断防止の効果はありませんでした。IC-705のWiFi機能を直接使用するのではなく、下図のようにUSB有線接続のローカルPCからWiFi接続してみると問題の切り分けが進むかもしれません。今後の宿題です。

ローカルPCからWiFi接続しても切断するようなら、WiFiルータ等に電波障害が発生している可能性があります。ただし、今のところ他の機器のWiFi接続に障害は発生していないため、その可能性は低いと考えています。

WAJAの進捗

前回報告時(2023-06-25)には、workedできていない都道府県が1つ(香川県)、加えてconfirmedできていない都道府県が3つ(秋田県三重県京都府)ありました。

その後、オールJA5コンテストに参加したところ、電子QSLにより香川県の3市1郡のworked & confirmedが一気に達成できました。さらに、フィールドデイコンテストでも新たに香川県の1市をworked & confirmedできました。また、秋田県三重県の電子QSLによるconfirmedも進みました。

残っているのは京都府のconfirmだけとなりました。京都府に対しては3局との交信実績があり、その中の1局は記念局です。記念局の紙QSLカードJARL転送は優先的に処理されるとの希望的観測がありますが、それでも1年以内に届けば幸運というところのようです。CQ誌9月号の特集は「電子QSL最新事情」とのことですので、電子QSLの普及が進むことを期待します。

追伸:

来年の京都コンテストとJARL転送のどちらが速いかと思っていたところ、お盆帰省中と思われる京都の局と8月に新たに交信でき、電子QSLによってconfirmedできました(ありがとうございます)。中間スキップのエリアの中で、福井県京都府のスキップが最も厳しく、都市ノイズが多い7MHz帯ではぎりぎりの信号レベルでしたが、RFゲインを絞りノイズから信号を浮かび上がらせることによって何とか交信できました。

これで室内LWアンテナ架設から約半年強で、海外WAC (Worked All Continents)アワードに続いて、国内WAJA(Worked All Japan prefectures Award)が完成しました。

DXの進捗

前回報告時(2023-07-17)のDX Entity数は、LoTW Syncを取ったClub Logから見てworked 32、confirmed 26でした。その後、worked 46、confirmed 34まで増えました。しかし、workedの増加率144%に対して、confirmedの増加率は131%に留まり、両者の差が拡大する傾向があります。

パワー不足以外の主な原因は、室内LWアンテナの耳の悪さによるミスコピースルー(空耳)と、電子QSL未対応の2つです。前者に対しては(1)AFフィルタによるノイズ低減を、後者に対しては(2)紙QSLカードのリクエストを推進することにしました。

AFフィルタによるノイズ低減

室内LWアンテナ☓10Wでは、こちらからDX局への信号強度が弱いため、ミスコピー管理が重要になります。室内LWアンテナの耳の悪さによるミスコピースルー(空耳)を改善するためには、入力段の低雑音プリアンプの導入、および出力段のAFフィルタの導入が、外付けで取り得る手段になるかと思います。まずは安価な方のAFフィルタを試してみることにしました。

IC-705(のHF帯は)はダイレクト・サンプリング SDRのため、IFフィルタはFPGAによるディジタル信号処理で実現されているようです。IFフィルタの帯域は3段階から選択でき、CWモード用の狭帯域はディフォルトで250Hzに設定されています。さらに、TWIN PBT(Pass Band Tunning)機能によって50Hzまで狭めることができます。

目的信号の周波数が既知で固定なら、IFフィルタの帯域を狭くした方がS/Nが向上するはずです。実際、250HzまではS/Nの向上を実感できます。しかし、TWIN PBTによってさらに狭くすると、私の耳には却って聴き難い音になってしまいます(個人の感想です)。

TWIN PBTは名前の如く、Low Pass FilterとHigh Pass Filterを2段階に組み合わせて狭帯域のBand Pass Filterを実現しているものと思います。FPGAに実装されていれば、フィルタを増やしたことによる信号遅延は最小のはずです。何かディジタル信号処理による副作用が出ているのでしょうか・・・。搬送波自体はモノトーンですが、CW信号の立ち上がりと立下りの信号形状を綺麗に構成するためには、250Hz以上の周波数成分が必要ということでしょうか・・・。

以上をAF段の外付けフィルタで確認したいと思い、ボードを手配中です。デモを聞く限り、S/Nの向上は素晴らしいものがありました。

OQRSによる紙QSLカードのリクエス

ARRLお膝元の北米ではLoTWの普及率が高いようですが、全世界で見ると国内と状況は似ており、電子QSL未対応のDX局も多数あります。そこで、紙QSLカードのリクエストも推進することにしました。

Direct(SASE)を出す前に、OQRS(Online QSL Requests System)に対応しているDX局にはOQRSリクエストを出します。Club LogのOQRS以外に、QSLマネージャーが独自のOQRSを主宰している場合もあります。まず、下記3枚がOQRSで届きました。

OL750HOL

前回紹介したチェコ共和国の「ホリショフ市創立750周年記念局」のQSLカードです。LoTWでconfirmedできていましたが、カードの所有欲が湧いてきたため、Club LogのOQRSをクリックしてしまいました。右のQSL(交信証明)面にはシールが貼られ、割り印とサインがありました。

GR2HQ

IARU HF Contestで交信したEnglandのHQ局のQSLカードです。HQ局のQSLカードは1 Wayのビューロー経由で送られる例が多いようですが、こちらのHQ局のQRZ.comにはQSLマネージャにリクエストするように指示がありました。室内LWアンテナでは、いつでもEnglandと交信できる訳ではないため、QSLマネージャ独自のOQRSにリクエストしました。右のQSL(交信証明)面にはシールが貼られています。証明印は割り印になっていませんが、シール自体が証明書(カードは台紙)なので問題ないと思います。

CT9ABV

こちらもLoTWでconfirmedできていましたが、1st AfricaにしてWACアワード獲得における唯一のAfricaとの交信であるため、記念に紙QSLカードをClub LogのOQRSでリクエストしました。リードタイムは約2か月でした。OPはドイツの方々なので、マデリア諸島から本国に帰国されてからのQSL発送処理になっていると思います。切手にはDEUTSHLANDの文字が見え、消印はBriefzentrum(ドイツポストの地区センター)でした。

右のQSL(交信証明)面の下部に写真の説明書きがありました。ボトルは当初予想したマデイラ・ワインではなくPonchaとのことでした。

ポンチャはマデイラ島の伝統的なアルコール飲料で、アグアルデンテ・デ・カナ(サトウキビの絞り汁から作られた蒸留酒)、ハチミツ、砂糖、オレンジジュースまたはレモンジュースで作られています。一部の品種には他のフルーツジュースが含まれています。
https://en.wikipedia.org/wiki/Poncha、自動翻訳)
マデイラではポンチャが風邪を治すと言われており、風邪のような症状がある場合はポンチャを飲むことが推奨されています。
(同上)

・・・ということで、紙QSLカードを手にすることで、行きつけのPoncha barでマスクを付けた両人がPonchaの前で記念撮影をして、その写真をMadeira Is.のQSLカードのデザインとする深意を理解することができました。

ダイレクト(SASE)による紙QSLカードのリクエス

OQRSは便利ですが、全ての局が対応している訳ではありません。昔ながらのSASEによるダイレクト・リクエストも必要になります。OQRSで送料を払った上でSASEが必要という合わせ技もあります。

ベストな組み合わせとされている無地の角型8号封筒、洋型2号封筒、QSLカード、+α(GS等)を材料にしてSASE kitを印刷し組み立てます。近所で地味な無地の洋型2号封筒を見つけるのが難しく、5色組み合わせの派手な封筒しかありませんでした。目立たない方が良いのですが、致し方ありません。

送料が不明なため、近所の郵便局に持ち込み、計量してもらいました。送料OQRS別払いで+αがないと130.0gで90円でした。この重さがボーダーラインで、超えると110円になりました。もちろん、SASE kitに使用する封筒の材質で変わってきます。

最後のスマートレターはJARL転送用の封筒です。180円で国内はがき大のQSLカードの束が2式、2cmの厚さまで入ります。合計で4cmになるため、電子QSLで照合できなかったQSLカードを一気に送付できます。(溜め込んで申し訳ありません。)

II1ITR記念イベントの調査(続報)

イタリアのTEAM - LA TENDA ROSSA(赤テントチーム)記念局の対象イベントの調査続報です。95年前の北極探検飛行船「イタリア」号墜落事故についての映画「SOS北極 レッド・テント」を視聴し、radio amateursの重要性を証明した出来事について調査しました。

ニコライ・シュミット

radio amateursの重要性を証明した「ロシアVokhma村のアマチュア無線家ニコライ・シュミット」は登場しました。先入観で壮年~初老のアマチュア無線家を想像していたのですが、映画に登場するニコライ・シュミットは青年でした。

Rigは真空管式の受信機です。無線家というよりSWL(Short Wave Listener)として登場しています。アンテナは子供たちが揚げるタコに取り付けたLWです。子供たちに指示を出してタコの場所を移動させて感度最大点を探しています。そして遂に墜落した「イタリア」号のSOSと墜落座標を受信します。

その後、無線で救助隊基地に知らせるのではなく、電報局まで馬を飛ばして(おそらく)有線で電報を打っています。やっぱり送信機は無いのかな・・・。

最後は、SOS受信者の自負から出港する救助船に飛び乗ろうとして間に合わず、跳ね橋の上で泣き崩れるところで登場場面は終了しています。

どこまでが史実でどこからが映画の演出か分かりませんが、確かに救助に重要な役割を果たしたradio amateurs(SWL?)の「ロシアVokhma村のアマチュア無線家ニコライ・シュミット」は登場しました。

アニリン

もう一つの疑問も氷解しました。記念局のチーム名にも映画の題名にもなった象徴的な「赤テント」の由来です。救助隊への目印となるように、アニリン(合成染料)でテントを赤く染めたことが「赤テント」の由来ですが、そのアニリンはどこから来たのかが疑問でした。

飛行船の高度を計測するために、アニリンを入れたボーリングボール大の球が使用されていました。球を飛行船から自由落下させ、地表に激突して赤い染料が飛び散るまでの時間を計測して高度を算出する場面が映画で描かれていました。目視で地表激突を認識するためにも、風の誤差を抑制するためにも、大量のアニリンが注入された球を飛行船に多数搭載していたものと思われます。これで、テントを染めるのに十分な量のアニリンを確保可能です。

以上、II1ITR局との599BK交信後の余韻を十分に楽しむことができました。

室内ロングワイヤーアンテナはSWR1.0の夢を見るか(6)

2023年2月より、室内LWアンテナx10Wの性能確認のための交信を週末に実施しています。前回、国内CW交信の実績をまとめました。今回は、DX CW交信の約5か月間の実績をまとめます。

DX交信実績

室内LWアンテナx10Wにより、下記の32エンティティと6月までに交信できました。電子QSL(LoTW)が得られているのは26エンティティです。

室内LWアンテナに強く入感するコンテストステーションを中心に交信できました。今後は新しいエンティティのためにベアフット局(裸足局?=リニアアンプ無し=それでも100W!)と交信する必要が増え、EUを除く新エンティティを得ることが徐々に難しくなって行くと予想されます。EUは国が多く、局所的なパスが開ける毎に異なるエンティティとつながる印象です。そこが599BK方式でも、電波の不思議を感じさせる面白さです。サイクル25のピークに向かう今後数年でDXCC100に到達できるでしょうか・・・。

CQ WPX到達度

LoTWのCQ WPX Accountの集計が分かり易いため、下記に示します。左のバンド別の集計で、40mバンドと30mバンドは全てJA局との交信によるプリフィックス数です。20m以下のバンドはJA局およびDX局との交信が混在したプリフィックス数です。

JA局のプリフィックス数が多い利点を生かして、DXCC100到達よりもCQ WPX300到達の方が速いかもしれません。

WAC到達度

6大陸(AS、OC、EU、AF、NA、SA)と交信すると得られるWAC (Worked All Continents)アワードを、室内LWアンテナx10Wの最初の目標にしていました。AN(南極)が要件に入っていないため、達成の可能性はあると考えていました。

お膝元のAS(亜州)と接するOC(大洋州)、NA(北米)、EU(欧州)は、DXコンテスト参加により比較的容易に交信できました。課題はAF(阿州)とSA(南米)でした。上記CQ WPX Account集計右側が大陸別プリフィックス数になります。最後まで残ると予想していたAF(阿州)は「僥倖」があり、1局だけですがConfirmedできました。残るはSA(南米)となりました。

AF僥倖の経緯は以下の通りです。コンテストに参加しても、室内LWアンテナの耳にAFは一向に聞こえてきませんでした。WACは無理か・・・と考え始めたある日、9J(Zambia)が強く入感しました。Zambiaに行ったことはありませんが地誌を調べたことがあったため、HamLogのZambiaヒットで直ぐにAFのエンティティであることに気付きました。アフリカ大陸南方中央に位置する海岸線を持たない国です。地誌を調べた思い入れもあり是非交信したいと思ったのですが、世界中から呼ばれるため、室内LWアンテナから出て地球を半周する10Wの微弱電波に順番が回ってくることはありませんでした。

良いコンディションが続いていたのでしょうか・・・、日を経ずしてCT9(Madeira Is.)が入感しました。プリフィックスから最初はPortugal(EU)かと思ったのですが、調べてみるとPortugal自治州のMadeira Is.はAF大陸に属する別エンティティでした。日本からの大圏地図によるとMadeira Is.はPortugalの先の大西洋上に位置しますが、緯度はモロッコカサブランカ辺りと同じになるようです。アフリカど真ん中のZambiaとは異なりますが、AFには変わりありません。

Portugalとも交信実績が無かったためEUのCTであったとしても交信したいところですが、AFのCT9ならWAC達成のために是非交信したいエンティティです。しかし、Madeira Is.からはEUがローカルで、障壁のない大西洋の向こうはNA東海岸です。CT9も世界中から呼ばれるため、Zambiaと同じく順番が回ってくることはないかな・・・と諦めかけていました。

ここからが僥倖です。JAが数局交信に成功したところで地球の裏側のJAとパスが開けていることにCT9ABV局が気付いてくれたのでしょうか・・・、途中からフェードアウトするまでJA指定のCQになりました。最後のチャンスと呼び続けていると、遂にリターンコールがありました。ビックガンの陰に隠れながらも、室内LWアンテナx10Wの電波がちゃんと届いていたようです。しかし、このアンテナには耳の性能にも課題があり、サフィックスが正しいことはしっかりと聞き取れたのですが、プリフィックスの「K」がQSBに沈んでしまい、ちょっと確信が持てない終わり方になってしまいました。「まさかJK1がJA1にミスコピーされていないだろうなあ・・・」と悶々としていると、LoTWに吉報が届きました。

Club Logでも確認できました。最初はOQRS不可だったのですが、数日してOQRS受付可に変わりました。おそらく、OPの方が本国に戻られたのだと思います。LoTWでConfirmedできているのですが、1st AFの記念に下記のQSLカードをリクエストしました。AFを感じさせる配色です(個人的感想です)。コロナ禍対応のお二人の前に写っているのは、おそらく島の産業のひとつであるマデイラ・ワインかな・・・。

交信の記念にマデイラ諸島について調べてみると、良く知られた二人のポルトガル人の出身地であることが分かりました。一人は歴史上の人物のクリストファー・コロンブス、もう一人は現代のサッカー選手クリスティアーノ・ロナウドです。以前、ロナウドが実家に帰って家族と過ごしている様子をTVで放映していましたが、マデイラ諸島でロケしたのかもしれませんね。

追伸:WAC完成

7月に入ってからのIARU HF Contest(2023/7/8~9)にて、SA(南米)3局の信号を室内LWアンテナでも確認できました。WAC完成のための貴重な機会と捉えて、果敢無謀にパイルに参加しました。しかし、SAからの高速打鍵のCW信号は大陸伝搬特有の残響のようなQSBを伴い、リターンコールの確認に苦戦しました。こちらからの微弱CW信号では「E」がノイズに埋もれてしまい、「EJ」が「J」や「EO」にコピーされる例があるため気が抜けません。その際には「E-空白-J」を送信しますが、これで上手く行くケースと、却って混乱を招くケースがあり、未だベストプラクティスを見いだせていません。

それでも挑戦の甲斐あり、PV2(BRAZIL)との交信をLoTWでConfirmedできました。2月初旬に室内LWアンテナを架設してから、約5か月強の週末運用で達成できました。早速、LoTWのQSO Detailの画面コピーをExcelリストに張り付けて、JARLに代行申請を依頼しました。

このコンテストでは、6大陸の中で唯一AFの局のみ確認できませんでした。もし、AFの局とも交信できていればOne-Day WACも可能でしたが、やはりAFとの交信には「僥倖」が必要なようです。

AN(南極)

7大陸目のANはWACの要件に入っていませんが、昭和基地の8J1RLとも何時か交信したいところです。室内LWアンテナの指向から鬼門と思っていたVK(Australia)との交信実績も少しづつ伸びて、南東部のVK3(Victoria州)まで届きました。次の目標は南東海上のVK7(Tasmania州)、そしてその次はいよいよANです。

8J1RLの信号を聞いたことはありませんが、他国の南極基地(Vostok?)の信号が入感したことはありました。当然、パイルになっており交信は出来ませんでしたが、可能性がゼロでないことは確認できました。

DX記念局との交信

前回、国内の記念局との交信について言及しましたが、DXにも記念局があります。室内LWアンテナx10Wで交信可能なDX局は主にコンテストステーションになりますが、DX記念局とも交信の機会がありました。

上記CT9ABV局と交信できた日はEU方面のパスが開けていたようです。CT9ABV局交信と前後して深夜早朝にEUの記念局と続け様に交信することができました。なお、交信成功以上に失敗(交信未達)の記録も重要なため、手書きログを残しています。

国内のように記念局専用のプリフィックスは無いのですが、一風変わったコールサインが目印(耳印)です。特に、コールサインに2文字以上連続する数字が含まれている場合は、国内記念局と同じく、記念行事の開催年や経過年数(周年)を表す記念局のコールサインの可能性があるようです。

DB23SOWG

QRZ.comを調べると以下の情報がありました。

Special Event Call operated by DARC Team SES

Special Olympics World Games 2023 in Berlin,  SDOK: SOWG23

https://www.qrz.com/db/DB23SOWG

ドイツのJARLに相当するDARC(The Deutscher Amateur Radio Club e.V.)の記念局のようです。「オリンピックはパリのはずでは・・・」と短絡的に考えながら調べると、「2023 年スペシャルオリンピックス夏季世界大会」が2023年6月13日~25日にベルリンで開催されていたことを知りました。

JARL記念局と同様にQSLカードはビューロー経由で送って頂けるようです。

II1ITR

コールサインに「I」が3文字も含まれており、高速打鍵では目(耳)が回りそうです。QRZ.comを調べると以下の情報がありました。

After being “ON AIR” in 2013 and 2018, the “Red Tent Team – II1ITR” maintains its own identity and continues over the years to keep alive the memories of 95 years ago event, which has proved how significant radio and radio amateurs are.

The Award is established on the occasion of the “95th Anniversary of the Red Tent”.

https://www.qrz.com/db/II1ITR

イタリアのTEAM - LA TENDA ROSSA(赤テントチーム?)が、ある出来事の95周年記念局を運用しているようですが、これだけでは詳細は不明です。95年前にradio amateursの重要性を証明した何があったのでしょうか?

簡単には検索できませんでしたが、wikipediaの「ウンベルト・ノビレ」のページに95年前の出来事の情報がありました。

1928年、ファシスト政権からの国家援助によって新たな飛行船を設計、完成した飛行船イタリア号で二度目の北極探検を計画する。

・・・

5月25日、「イタリア」号は北東島までわずか30kmを切った地点で海氷に墜落する (スヴァールバル諸島の東端)。

・・・

16名の隊員と共に北極点到達という大きな望みを持って出発したノビレだったが、しかし極点到達後の事故はいち早く世界中に配信され、北半球中の救助隊が動き始める。生存者たちは飛行船の無線機でSOSを発信、さらにアニリンでテントを赤く染めて目印とし、救助を待った。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%83%B3%E3%83%99%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%8E%E3%83%93%E3%83%AC

救助隊への目印となるように、アニリンでテントを赤く染めたことが「赤テント」の由来であることが分かりました。また、無線機でSOSを発信したことが墜落の一報につながったと推定されます。radio amateursの役割の記述はありませんでしたが、いち早くSOSを受信したのではないかと想像されます。

wikipediaの「イタリア (飛行船)」のページに、ロシアのアマチュア無線家の記述がありました。

 5月25日 - イタリア号、流氷上に墜落。#ビアージ通信士が無線機を掘り起こし、ラジオマストを立ててSOS送信を開始。
5月31日 - イタリア号生存者との無線の接触が中断。原因は気象状況に加え、無線監視の維持および定時送信の継続を怠った母船「#チッタ・ディ・ミラノ」号の怠慢であった。#マルムグレン、#マリアーノ、#ザッピの3名が救援を要請するため、徒歩で出発。
6月3日 - イタリア号のSOS信号を、ロシアのVokhma村のアマチュア無線家ニコライ・シュミットが傍受[7]。
6月5日 - ノルウェーパイロットが初めてイタリア号捜索飛行を実施。翌週にはノルウェースウェーデンフィンランド、ロシア、イタリアのパイロットも捜索救難飛行を開始。
6月8日 - 流氷上のイタリア号生存者とイタリア捜索隊の乗る#チッタ・ディ・ミラノの無線接触が確立。捜索活動継続。

・・・

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%82%BF%E3%83%AA%E3%82%A2_(%E9%A3%9B%E8%A1%8C%E8%88%B9)#CITEREFSolomon,_Cala-Lazar2008

引用地図の3回目の飛行経路(北極点到達⇒遭難)が、eQSLカード右中央下の地図と同じであることが分かります。

このeQSLはhamaward.cloudからダウンロードできました。WRTC 2022開催記念局のeQSL配信と同じ仕組みです。イタリアではhamaward.cloudが一般的なのでしょうか。なお、WRTC 2022開催記念局は1ポイントでもAward(参加賞)を発行してくれましたが、赤テント95周年記念局はAwardに30ポイント必要であり、1ポイントでは遠く届きませんでした。

一般的にeQSLが紙QSLに及ばない点として品質(解像度)を挙げることができますが、hamaward.cloudのeQSLは十分な品質を備えています。加えて、二次元バーコードによる交信証明機能も備えています。双方向のQSL交換システムではなく、1-Way配信システムだから成立しているものと思います。

95年前の飛行船「イタリア」号墜落事故は映画になっていました。

通販A社にレンタルアップの中古DVDが出品されていました。この記念局交信も何かの縁と思い、クリックしてしまいました。邦題名には「SOS」が付されていますが、果たしてロシアVokhma村のアマチュア無線家ニコライ・シュミットは登場するでしょうか・・・。

OL750HOL

プリフィックスの「OL」がサフィックスの末尾にも山びこのように再出現し、聞き間違い?を疑ってしまうコールサインでした。750 years Holysov town(ホリショフ市創立750周年)記念局でした。

プリフィックスの「OL」はチェコのエンティティを表し、サフィックスの「HOL」はHolysovの頭3文字を表しています。なお、Holysov市の公式HomeページではTownではなくCityとなっています。

www.mestoholysov.cz

750年前の1273 年は、日本では鎌倉時代中期で翌年が蒙古襲来です。調べてみると、ホリショフが言及された最初の下記文書が起源の根拠になっているようです。

ホリショフについて最初に文書で言及されたのは、1273 年の教皇グレゴリウス 10 世の証書です。

https://en.wikipedia.org/wiki/Hol%C3%BD%C5%A1ov

「証書」が何を指すのかまではwikipediaでは分かりませんでしたが、何らかの権益の証書ではないかと推測します。上記Holysov市の公式Homeページに具体的に説明してありました。

1273年5月23日、教皇グレゴリウス 10 世の特権が文書化され、チョテショフ修道院の全土地所有権の範囲が決定されました。

https://www.mestoholysov.cz/750-let-vzniku-mesta-holysova/ms-11930/p1=11930

その他DX局との交信

室内LWアンテナx10Wで交信可能なDX局は、主にコンテストステーション、次いでクラブ局が運用する記念局になります。その他にペディション局との交信例も若干ありますので、その例を最後に付け加えます。

4W6RU

RUDXT(Russian DXpedition Team)による東ティモール(Timor Leste)からのQRVです。東ティモールは「世界で最も若い独立国家の一つ」ということで、いつもUP指定のパイルになっていました。

室内LWアンテナx10Wの性能評価ということで、聞こえてきたら数回トライしてみるを繰り返していたところ、ある日15m CWでリターンコールがありました。

既に7万弱のQSO数に至っている模様で、パイルも小規模になっていたのかもしれません。7万QSOの一角に入ることができました。FT8のQSO数が多いようですが、CWのQSO数を知りたいところです。

V31XX

30m CWにV31XXのCQが聞こえてきました。HamlogにV31XXを入力するとBelizeと出てきますが、Vで始まるエンティティは世界中に遍在しているため、何処のエンティティなのか地理的位置は不詳でした。信号の強度から、東アジアかオセアニアかと思ってしまった次第です。UP指定なのでパイルになるエンティティということは分かりました。

VK9DX(Norfolk Is.)の時と状況は似ており、次々とピックアップされて行きますが、スコープ上にパイルの山は見えません。これは、ハイパワー局がまだ参加していない初期状態であることを示していると思います。

V31XXがどの周波数をピックアップしているか分からないため、適当(適切に当たりを付けての意)にSplit設定をして呼びます。すると、プリフィックスサフィックスの最初の「E」までコピーされ、再送要求がありました。「E-空白-J」作戦で再送したところ、無事にピックアップしてもらえました。RSTは579のリアル?レポートをもらいました。室内LWアンテナx10Wでも交信に必要な強度の電波は出ているようです。

その後にDXクラスターにアップされ、スコープ上にパイルの山が出来ました。こうなると599オーバのハイパワー局に埋もれて、室内LWアンテナx10Wでは交信不可になります。

さて、無事に交信が終了したためBelize学習タイムです。Belizeは思いも寄らず、メキシコの向こうのカリブ海に面した中南米の国でした。(WACではNAです。)

北米大陸を地表反射で横断してくると思われるのに、特有のQSBの無い聞き取りやすい信号でした。QSLカードの写真を見るとスーパーステーションであることが分かります。(QSLはダイレクトのみとのこと。Green Stampを探さねば。)

機会を捉えて相手の設備に助けられれば、室内LWアンテナx10WでもDX交信は可能であるというのが中間結論です。

このスーパーステーションは下記のお値段で売りに出されているようです。後継者が見つかると良いですね。

v31xx.com

室内ロングワイヤーアンテナはSWR1.0の夢を見るか(5)

2023年2月より、室内LWアンテナx10Wの性能確認のための交信を週末に実施しています。国内CW交信の約5か月間の実績をまとめます。DXの実績は次回まとめます。

WAJA到達度

WAJA(Worked All Japan prefectures Award)アワードの到達度を下記の日本地図に示します。今回もオリジナルの日本地図が作成できるジェネレイター」を利用させて頂きました。緑がConfirmed(QSL入手済み)、青がWorked(交信済み)、赤が未交信の都道府県です。入手済みのQSLは全て電子QSL(hQSL、eQSL、LoTW)です。

難しいと感じていた富山県がConfirmedでき、WAJA完成か?と思ってリストアップしてみると、香川県が未交信でした。秋田県三重県京都府とのQSO数も少なく、Confirmedが遅れています。

香川県とのQSOは7月開催のオールJA5コンテストに期待します。秋田県はオール秋田コンテストが9月開催予定と思いますので、年内のConfirmedに期待が残ります。しかし、京都府は京都コンテストが来年2月開催予定、三重県はオール三重33コンテストが来年5月開催予定と近々にはコンテストの開催は無いようです。移動局の出現とEスポの発生を願ってワッチを続けます。

WAJAの他、JCC/JCG/AJAの集計のためにも、国内アワード到達度集計ソフトを作る必要がありそうです。

POTA達成度

POTAハントには苦戦しています。POTA AWARDは、まだ、Bronze Hunter(10公園ハント)です。次のSilver Hunter(20公園ハント)には2公園足りていません。

室内LW+ATUによって、バンドは40mから6mまでフル活用しています。POTAのスポット情報を見て聞きに行っても聞こえないことが多いため、バンド間をQSYしながらワッチして運よくアクティベーション局が見つかったらハントするという効率の悪いスタイルです。

県別の内訳を下記に示します。144公園を擁する大票田?の東京に対して僅かに1/144公園しかハント出来ていないことが響いているように思います。

東京は都立公園が多くあるのに対して、QTHの神奈川県は政令指定都市の市立公園(横浜市立、川崎市立、相模原市立)が多く、県立公園が少ないためにPOTAの対象が34公園に留まっていることが響いているのではないかと勘繰っています。純粋に室内LWアンテナx10Wの地力が小さいことが理由かもしれませんが・・・。

以前、JARL中央局との40mバンドの交信で苦労した話を書きましたが、都内方面に向けては近隣の建物が直接伝搬波の障壁になっているのではないかと推測しています。障壁を飛び越えるために、これからのEスポ発生に期待したいところです。

例えば、下図は台風とそれに連なる前線が日本列島を通過した6月3日の天気図です。天気図との関係は不明ですが、この日、日が射した関東上空には強力なEスポが発生し、6mバンドで西日本や中国の局と交信することができました。POTAも埼玉県の1公園を40mバンドでハント出来ました。この日は近隣建物の障壁を飛び越えることができたと思います。

翌日、「電波の日」特別運用を休日に繰り越したJARL中央局と15mバンドで交信できました。交信に苦労した前回の40mバンドと異なり、S9+10dBで強力に入感し容易に交信することができました。イオノグラフの確認を忘れましたが、その日もEスポが発生していたのではないかと推測しています。

記念局との交信

室内LWアンテナx10Wの性能確認とは直接の関係はありませんが、記念局との交信も楽しみの1つです。

記念局の定義

総務省のホームページによると、記念局とは以下の定義になるようです。

いわゆる記念局※は、行事等にふさわしい特別な呼出符号(コールサイン)が指定されたアマチュア局を運用することにより、行事等を記念すること及びその意義を広めることができるものであって、かつ、アマチュア無線に対する理解の増進、アマチュア無線の健全な普及、発展等に寄与できる相当の公共性を有するものです。
※行事等の開催に伴い臨時かつ一時の目的のために運用するアマチュア局

https://www.tele.soumu.go.jp/j/others/amateur/confirmation/memorial/

記念局との交信はコールサイン以外の情報は得られない599BK方式で終了し、その「行事等」の情報を記した紙QSLカードが届くのはかなり先(1年先?)になってしまいます。そこで、交信した後にその対象になった「行事等」の情報をWeb等で調べることが記念局交信の楽しみ方になります。

室内LWアンテナx10Wで交信できた記念局の例を幾つかピックアップします。

8N1789FM

湘南ビーチFM開局30周年記念局です。サフィックスの「789FM」は、逗子・葉山コミュニティFMラジオ「湘南ビーチFM(JOZZ3AB-FM)」の周波数789MHzを表しています。このブログ記事は、湘南ビーチFMインターネットラジオを聞きながら書いています。

記念アワードの発行もあり、サフィックスの構成要素から、7 賞(3 バンド)、8 賞(3 モード)、9 賞(3 運用ポイント)、FM 賞(三浦半島 30 局)の3つの賞があります。現在、HFのCWにしか出ていない当局が狙えるのは7賞もしくは9賞になります。東京方面と異なり三浦半島方面に建物障壁はないため、6月に9 賞(横須賀市、逗子市、三浦市)を「10MHz、CW」特記にて達成することができました。7 賞(3 バンド:7MHz、10MHz、14/18/21/24/28/50MHz?)も射程内です。

記念アワード発行履歴は公開されています。やはり、9 賞(3 運用ポイント)の獲得者が最多のようです。当局は28番目、「10MHz、CW」特記では2人目でした。

記念アワード獲得を機会に、湘南ビーチFMの開業時の出力が0.25W(現在は20Wに増力)であったことを知りました。放送局と言えばkW出力と思っていただけに驚きです。20Wでも湘南海岸全域をカバーできるということですね。

逆に、アマチュア無線は優遇されているということかもしれません。室内LWアンテナx10Wでもアフリカまで届く(次回報告)のですから、上(kW局)ばかり見ないで電波障害に気を付けながら性能確認を続けたいと思います。

8j7WICHI

何を記念した局なのか予想の付かないコールサインでした。記念局の由来を調べると、サフィックス「WICHI」は鳥潟右一博士の名前から取られていることを知りました。「無線の父・鳥潟右一没後100周年記念事業」の一環としての記念アマチュア無線局とのことでした。

博士の出身地である秋田県大館市の常設記念局ですが、主に運用されているのは武蔵野通研アマチュア無線クラブによると思われる移動局8j7WICHI/1です。秋田県との交信実績が少ない当局としては常設局とも是非交信したいところです。

「無線の父」という言葉で疑問が湧きました。『「タ」は夜明けの空を飛んだ/岩井 三四二 | 集英社 ― SHUEISHA ―』を読んで以来、無線の父は木村俊吉教授と思っていたからです。

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記念事業の一環として記念講演会が大館郷土博物館主催で開催されるとの情報を得て、疑問を解消すべくオンライン枠に申し込みました。

講演会を聞いての感想として、無線電信の父が木村俊吉教授、無線電話の父が鳥潟右一博士と勝手に解釈しています。

鳥潟右一博士が開発を主導した「TYK式無線電話機」は、検波に用いるコヒーラーこそ天然鉱石に置き換えていますが、連続した火花放電を発信源に用いて音声信号で変調するという驚きの構成です。「TYK式無線電話機」は真空管(の先祖)の勃興によって短命に終わりましたが、その真空管の国産を主導したのも鳥潟右一博士です。火花放電から真空管への時代の変遷がつながる講演内容でした。

講演録画は後日公開されるとのことでした。

 

室内ロングワイヤーアンテナはSWR1.0の夢を見るか(4)

日乗

自作リグ運用を目標にSDRを学び中ですが、サイクル25に間に合いそうにないため、サイクルピークに向けて市販リグ運用の機会を増やしています。CW技能の向上と室内LWアンテナの試験が当面の運用目標です。

太陽周期に連動してピーク時に運用し、ボトム時に技術を向上するサイクルが一般的な傾向となっているようです。個人的にもそのサイクルになりそうです。

Keith's SDRの動向

マイコン版SDRのKeiths' SDR(K7MDL版)の更新サイクルが速くてフォローが間に合わないため、PC版SDRのQuiskでSDRの基本を学び中です。IQバランス校正の自動化機能実装で足踏みをしています。

Keiths' SDRの代表的なRFフロントエンドのRS-HFIQにはCWモードのハードウェアサポートがないため、IQ信号でCW送信波を生成する必要があります。そのためIQバランスの影響が気になります。

Keiths' SDRのフォーラムのチェックは続けています。CW信号生成ライブラリがBob Larkin OMによってKeiths' SDRのベースになっているOpenAudio_ArduinoLibraryに実装され公開されました。radioCWModulator_F32という名称です。コードを見たところ、このライブラリは文字列を受け取ってCWオーディオ信号のガウスフィルタ適用Sin波を生成するもののようです。キーパッドやCAT接続によるPCキーイングで必要になるライブラリです。IQ信号生成前の処理ライブラリですが、Keiths' SDRに取り込まれるかどうかチェックを続けたいと思います。

DXによる室内LWアンテナの性能確認(つづき)

最近のコンデションが今一つの15mバンドを聞いていたところ、弱いCW信号が浮かび上がってきました。40wpm以上と思われる超高速のCW信号です。この速度になると短点の分離は不可能で、短点変調オーディオ信号の長さを感じ取るしかありません。

CQ DE VK9DXと打っているような気がしました。続けてUP1と打っています。オーストラリアの局がなぜパイルを見越したUP指定をCQに付けているのか疑問を感じつつ、DXCCリストを調べるとVK9はオーストラリア近くの6つの島々に個別のエンティティー(VK9C、VK9L、VK9M、VK9N、VK9W、VK9X)として割り当てられていることが分かりました。しかし、VK9Dのプリフィックスはリストに載っていません。

QRZ.comで調べると、VK9DXはノーフォーク島(VK9N)の局でした。

プリフィックスの謎はCQ誌2023年2月号で確認が取れました。VK2DX(シドニー)の局長さんがノーフォーク島に転居してVK9DXのコールサインで運用しているとのこと。日本とは異なり、希望したコールサインがもらえるようです。ノーフォーク島について調べると、イギリス海外領土編入(1856年)、オーストラリア領編入(1914年)、自治政府廃止(2016年)の歴史的経緯を辿っており、オーストラリアからは自由に転居できるエンティティーになっているようです。

そうこうしている中にパイルになって来たようです。こちらからはUP1周波数で呼んでいる局の信号は何も聞こえませんが、次々とピックアップされて行きます。パイルの規模が分からないことを幸いとして、怖気づくことなく急いでIC-705のSplit設定をして呼んでみました。CQに早く気付いたことが良かったのか、数回目にピックアップされました。コールサインの再送要求があったため、正確にコピーしてもらえたのか不安でしたが、翌日にはClub Logで確認が取れました。室内LWアンテナと10Wでも、機会に恵まれればパイルに飛び込むことも一概に無益とは言えないことが分かりました。

海底地形を参照すると、ノーフォーク島ニューカレドニアからニュージーランドに至るノーフォーク海嶺の上にあります。ニューカレドニアとは既に交信実績があったため、南方に交信実績距離が伸びたことになります。南方面が室内LWアンテナの死角にはなっていないことが再確認できました。次の目標はニュージーランド、そして南極です。果たして交信できる日は来るのでしょうか。

ALL JAコンテストによる室内LWアンテナの性能確認

目標

DXコンテスト(JIDX-CW、CQMM DX)に続いて、ALL JAコンテスト(4/29 - 4/30)に参加して室内LWアンテナの性能確認を行いました。

当初の目標は唯一交信できていない9エリア局との交信でしたが、ALL JAコンテストの前に9エリアの2局と立て続けに交信でき、室内LWアンテナのAJDは完成してしまいました。そこで、以下を目標としました。

  1. 80mおよび6mバンドでのCW交信実績
  2. One Day AJD

結果

前者は達成できましたが、後者は達成できませんでした。太陽の27日短周期ではボトムに近く、コンディションは良くありませんでした。Eスポの発生もなかったと思います。(他の方のブログを読むと、Eスポが発生していたようです。当局の電波がEスポ層に届かなかっただけのようです。)

自己採点結果を示します。交信局数は182局(重複1局あり)、マルチ(県数と北海道地域数)は71でした。

傾向としては、7MHzバンドでマルチを稼ぎ、50MHzバンドで交信局数を稼いだように見えます。コンディションが良くないときに7MHzバンドでマルチを稼ぐのは順当ですが、スペクトルスコープ上で霧状に見える広域都市ノイズが当局の環境では発生しており、運用し易いバンドではありません。

Eスポが発生していないのに50MHzバンドで交信局数を稼げたのは予想外でした。なにしろ普段は静まり返っており、50MHzバンドでCW信号を聞いたのはこの日が初めてでした。局数が多い1エリアの特典かもしれません。その代わりに1エリアには中間スキップによってHF帯の局数を稼げないというあい路もあり、7MHzマルチと50MHz局数の傾向が出たのは妥当な結果だったのかもしれません。

50MHzバンドにはQSBやノイズが無いため、CQランニング局の信号が弱くても、さらに弱くなるであろう当局の呼び回り信号を取ってもらえる安心感があります。コールサインの再送を要求されることは、CQ連呼中に突然呼ばれてびっくりした時?以外は無かったように思います。

対称的なのは3.5MHzバンドです。6局と交信実績ができましたが、各局長さんが粘り強く拾ってくれた成果であり感謝します。再送要求100%で、しかも複数回の再送が必要でした。DXより難しかったという印象です。8mのLWアンテナから3.5MHzの電波は出てはいるが極めて微弱であり、QSBやノイズ下では符号を取ることが難しいレベルであると判定しました。SWR1.5以下でも3.5MHzバンドは実用的とは言えないと評価せざるを得ません。

詳細分析

時刻別のQSO数を下記に示します。夕食は弁当、朝食と昼食はパンにして、室内LWアンテナを架設してある居間のダイニングテーブルを臨時シャックとして占拠し、長期戦に備えました。

Rate graph of QSOs by time for the ALL JA contest.

時間帯による交信局数の顕著な増減は見られません。細かく見ると、コンテスト開始から翌日の早朝までは13~14局/Hrで推移しています。重複チェックに引っ掛かる比率が小さく、効率的に呼び回り交信ができていたためと思われます。一方、翌日の午後は重複チェックに引っ掛かる比率が大きくなり、10局/Hr程度に落ちています。ここでEスポが発生して新しいエリアが入感するようになれば交信局数が大きく伸びたと思いますが、Eスポの発生はありませんでした。コンテスト終了は21時でしたが、重複チェックに引っ掛かる比率が大幅に増えた20時で切り上げました。

バンド別のエリア交信数を下記に示します。

ALL JAコンテストの前に9エリア局との交信の難しさを感じていましたが、その経験がそのまま反映した結果となり、9エリア局を落としたためにOne Day AJDは完成しませんでした。今回、RBN等は参照しませんでした。狙いに行っても聞こえないことが多く、耳で探した方が良いと考えたためです。局数よりAJDを狙うなら、スポット周波数に張ってQSBのピークを待った方が良いかもしれません。次回の宿題です。

都道府県別の交信実績を調べた結果を下記に示します。「オリジナルの日本地図が作成できるジェネレイター」を利用させて頂きました。緑が交信実績あり、赤が交信実績なしの都道府県です。

Prefectures where QSOs were made in the ALL JA contest.

コンディションが良くないと思った割には、中間スキップを除いて日本全国を網羅している印象です。北陸から中部を経て近畿に至る領域が綺麗に中間スキップになっている様子が分かります。奈良県が取れたのは幸運でした。島根県徳島県、鹿児島県は取りこぼしと思います。

50MHzでは1エリアの他に、2エリア(静岡県伊豆移動と推定)と7エリア(福島県白河移動と推定)の各1局と交信できました。両局とも移動局であり、悪天候の下、標高の高いところに移動してくれたおかげと思います。

IC-705のCAT通信遮断の状況

コンテスト期間中、3.5MHz、7MHz、21MHzではCAT通信遮断は発生しませんでした。28MHzは日によって状況が変わりますが、コンテスト期間中は通信遮断が100%発生しました。50MHzは今回初めて評価できましたが、同じく通信遮断が100%発生しました。

CAT通信が遮断するとバンド切換がコンテストロガー(CTESTWIN)に自動で反映されなくなるため、注意して手動で切換える必要があります。しかし、重複チェックを実行すると切換前のバンドに戻ってしまう現象が発生し、重複チェックを一度失敗しました。これが、交信回数183、ポイント182の理由です。

ハイバンドに対してコアの数を増やす手しかないのですが、50MHzはコンテストの時にしか運用できない状況のため評価が進みません。

室内ロングワイヤーアンテナはSWR1.0の夢を見るか(3)

日乗

今年の猿橋賞(第一線で活躍する女性科学者を表彰する賞)の発表があったことを新聞で知りました。アマチュア無線家にも関係のある研究業績が対象になっていました。

受賞者は武蔵野美術大学の「宇宙気候学」を専門とする宮原ひろ子教授で、対象の研究業績は「太陽活動の変動のメカニズムおよびその気候への影響に関する研究」でした。その内容は(門外漢の私にとっては)驚くべきものでした。

太陽の活動サイクルは11年周期であり、今は記録を取り始めてから25回目のサイクル25のピークに向かっている・・・との認識を様々な情報ソースから得ていました。では、記録を取り始める前はどうだったのでしょうか? 宮原教授の研究業績はそれを明らかにしています。

猿橋賞のホームページの研究業績要旨によると、太陽活動は以下の因果関係によって放射性同位元素である炭素14を増減させるとのことです。

太陽活動 ⇒ 太陽磁場 ⇒ 宇宙線流入量 ⇒ 大気中反応 ⇒ 中性子 ⇒ 窒素吸収 ⇒ 炭素14

これを利用した研究業績の要旨を引用します。

このため植物や湖底の堆積物などに含まれる炭素14の量の測定から、過去の太陽活動の強弱を見積もることができる。宮原ひろ子氏は、長寿命の屋久杉などを使って、年輪を1枚ずつ剥がしてそこに含まれるごく微量の炭素14の量を測定することで、太陽活動の基本周期の長さが長期変動に伴ってどのように変化するのかを前例のない高い精度で復元することに成功した。

その結果は以下となっています。

17世紀から18世紀にかけて黒点がほとんど見られなかった時期にも、弱いながらも活動周期が存在し、その長さが14年程度に長くなっていたことを発見した。この太陽活動が不活発な時期は小氷期と呼ばれた寒冷期にあたる。

中世の温暖期の初期にあたる9世紀から10世紀には、太陽活動は非常に活発で、活動周期が9年程度に短くなっていたことも発見した。

太陽の活動サイクルは11年で固定ではなく、過去の実績では9年~14年程度の変動はあったということになります。まだ僅かに25回しか記録していないのですから、将来どうなるかは太陽のみぞ知るです。もし活動周期が変わったら、アマチュア無線家が一喜一憂するだけでは済まなく、気候に大きな影響があるものと思います。

宮原教授の下記寄稿は、17世紀(江戸時代初期?)のマウンダー極小期について解説しており、国立国会図書館デジタルコレクションで読むことができます。

宮原、「太陽活動に伴う宇宙線変動と気候変動」、プラズマ・核融合学会誌、vol. 90、No. 2 (2014-02-25)

学会誌以外には、例えば以下の書籍(DOJIN文庫) があります。読んでみたくなりました。

宮原著、「地球の変動はどこまで宇宙で解明できるか:太陽活動から読み解く地球の過去・現在・未来 」、化学同人 (2022/12/2)

IC-705通信遮断の対策

Wi-FiによってPCとIC-705をLAN接続しようと試みていますが、送信するとCAT/Audio通信が遮断される問題に悩まされています。コモンモード電流の対策は行いましたが、劇的な改善には至っていません。

以下、追加の対策を講じた覚え書きです。

アース接地

IC-705の小型筐体(おそらくアルミダイキャスト?)が電波を受信してGNDが変動する可能性を潰すために、保安アースを接地しました。

集合住宅の電気配線図は入手出来ていませんが、壁の3Pコンセントにアース端子もあることから躯体に落としたD種接地になっていると思います。

アース線がアンテナになることを防ぐために、クランプコアによってコモンモード電流対策も施しました。

Rig grounding.

結果は、改善も改悪もなく、無くても良いかな・・・という状況です。雷雨の時の保安上はあった方が良いと思いますが。

USB有線接続

無線と有線を切り分けるために、Wi-Fi LAN接続を一旦あきらめ、USB有線接続に切り換えました。

USBケーブルはHDD用に三重シールドケーブルまで市販されていることを確認しましたが、HDD用はUSB2.0 MicroBではなくUSB3.0 MicroB(USB 3.0に追加したSuperSpeed差動信号用の接点が横方向に拡張されている)コネクタになっているため、IC-705 には差し込めません。USB2.0 MicroBの最短15cmの二重シールドケーブルを購入しました。

下の写真にはコモンモード電流対策用のクランプコアが写っていませんが、この短い距離にもコアを2個嵌めました。

Shortest wired connection with 15cm double-shielded USB cable.

結果は、万全ではありませんが改善効果がありました。15m以下のバンドでは通信遮断が起こらなくなりました。しかし、依然として10mでは送信により百発百中で遮断します。他の12mおよび6mの各バンドは今後検証します。

シールド板の設営

上の写真から分かる通り、リグ(IC-705)とATU(AH-705)が同じダイニングテーブルに乗っており、距離が近過ぎるのではなかとの仮説を立てています。電波の強さは距離の二乗に反比例します。

AH-705はプラスチック筐体です。SNSの分解写真を参照しても、内部にシールド塗装は施されていないようです。附属ケーブルは5m2m長であることから、本来は5m程度離して使用することが想定されている(その状況で性能確認がされている)と思われます。

しかし、室内設置では取り回しの自由度は限られます。そこで、リグとATUの間にアルミ板(正確にはアルミニウムはくのレンジパネル)を設営しました。効果は今後評価します。

キーパッドの製作

コンテストでデータを集めて室内LWアンテナを評価していますが、ロガーソフトとリグを接続できないのは不便です。コンテストではQSBの間隙を突いた高速打鍵が必要になることもあるため、メモリーキーヤーの併用が必要になります。IC-705のタッチパネルのメモリーキーヤーは操作性が良いとは言えません。

そこで、物理的なキーパッドを製作しました。抵抗分圧回路の回路図はマニュアルに掲載されています。2チャンネルの電圧を各4種類に分圧して計8種類の状態を作り出す回路です。

部品は全て秋月で揃えました。72×47mmのユニバーサル基板に部品は全て乗りますが、部品配置には余裕がありません。VUJ Lab.さんのVLOGアマチュア無線 IC-705用外部キーパッドの製作」を参考にさせて頂き、部品購入前に慎重に検討しました。

72×47mmのユニバーサル基板の孔数は基板によって異なるようです。最多27×17孔(4隅はネジ穴で欠落)の基板を使用しました。タクトスイッチは出来るだけ多くの色と形状を集め、人間工学的に?押し間違いを防止するようにしました。パドルとキーパッドを並列接続するためには、3.5mmステレオジャックを2個搭載する必要があります。予め2個搭載の配置配線を計画しておく必要があります。下写真から黄色ボタンの上の2個の抵抗配置が少し窮屈になっていることが分かります。

Keypad for operating the memory keyer by means of physical buttons.

IC-705に接続しただけでは反応せず焦りました。メニューで外部キーパッドをON(有効化)にする必要がありました。エッジトリガーを検出してADCによる電圧分圧値読み取り関数に分岐させるかどうかをメニューフラグで決めているものと思います。パドルもキーパッドも正常動作しました。なお、パドルと同じくキーパッドも常に有効なため、画面にメモリーキーヤーを表示する必要はなくなり、スペクトルスコープ等で広く使えます。

DXコンテスト参加によるアンテナ性能の評価

前回のARRL DX CWコンテストでは、北米方面へのパスについて室内LWアンテナを評価しました。今回、JIDX-CWとCQMM DXの2つのコンテストに参加し、他のDX方面へのパスについて室内LWアンテナを評価しました。

View while participating in the DX contest; temporary radio shack on a dining room table.

当日の太陽黒点相対数の推定値を下記に引用します。JIDX-CWよりもCQMM DXの開催日の方が太陽黒点数は3倍程度多かったようです。

Estimated international sunspot number.

宅建物の影響を考えると、NA(北米)およびEU(欧州)方面のパスは開けていて、OC(大洋州)方面は死角になっている可能性が高いとの予測のもと参加しました。結果を以下にまとめます。

JIDX-CW

JIDX-CW(Japan Internatinoal DX Contest - CW)では、DX各局が日本にビームを向けてくれる特典があります。

時刻別のQSO数を下記に示します。合計66局、初日20局、二日目46局のDX局と交信できました。

Rate graph of QSOs by time for the JIDX-CW contest.

コンテストはUTC時刻の朝開始に合わせているため、JSTでは4月8日土曜16:00開始でした。当日は風雨が強く、外は嵐のような様相でしたが、室内LWアンテナは気象の影響を受けずに運用できることが利点の一つです。

一方、室内LWアンテナは架設する部屋を選び、ダイニングテーブルが宅内運用場所であるため、食事時に撤収する必要があることが欠点です。初日は21時過ぎまで粘り、夕食のために撤収しました。

陸別QSO数の内訳を下記にまとめます。室内LWアンテナで交信できた大陸は、NA(北米)19局、EU(欧州)11局、AS(亜州)26局、OC(大洋州)10局でした。交信実績が積み上がらなかった大陸は、SA(南米)、AF(阿州)、AN(南極)の3大陸です。SAは短時間ですが聞こえていたと思いますので、今後チャンスがあるかもしれません。AFとANは見通し無しです。

Breakdown of QSOs by time and continent for the JIDX-CW contest.

NAとASは既に実績がありましたが、EUおよびOCと室内LWアンテナで交信可能なことが今回確認できました。正確に言うと、OCに属するハワイとフィリピンとは交信実績がありました。今回、オーストラリアおよび太平洋諸島との交信実績が新たに積み上がりました。OC方面は建物の死角になると予想していただけに、予想を裏切る嬉しい結果です。

バンド別では、20mバンドが6局、15mバンドが24局、10mバンドが36局となり、HFハイバンドが好調でした。80mと40mも覗きましたが、室内LWアンテナではJA局のCQしか聞こえませんでした。ただし、初めて80mでCW信号が確認できたのは収穫です。

頻繁にバンド間をQSYできる点もLWアンテナ+ATUの利点です。昔(第一次再開局失敗時)は、屋外設置ATUのリレー音のあまりの大きさに驚き使用を躊躇しましたが、室内に置いたAH-705なら騒音の心配もありません。

バンド別のDXエンティティーを下記にまとめます。

DX Entities by band for the JIDX-CW contest.

20mは、ASとNAのみでした。

15mは、ASおよびNAに加えて、OC(フィリピン)およびEUと交信できました。NAには北米東海岸ニューハンプシャー州の局が含まれます。先のARRL DX CWコンテストで逃した東海岸とも今回交信できました。二日目早朝6時に早起きをした成果です。EUは北欧(フィンランドスウェーデン)が良く聞こえていました。ノルウェーが聞こえなかったのはなぜでしょう・・・。

10mは、AS、NA、EUに加えて、OC(オーストラリアおよび太平洋諸島)と交信できました。ただし、オーストラリアはVK6(西オーストラリア州)1局だけで、太平洋諸島も5W(サモア)1局だけでした。やはり、拙宅の室内LWアンテナはOC方面を苦手としているのかもしれません。一方、自宅建物の死角に入らないEUの最遠エンティティーはEA(スペインマドリード)でした。

コンテストではコールサインとコンテストナンバーを交換するだけですが、後で各局のWebページを捲るのが楽しみです。室内LWアンテナに強く入感するようなDX各局のアンテナは、HFハイバンドでは多素子の八木アンテナがベースラインで、クラブ局になるとそれをスタックしたアンテナファームを備えていることが分かりました。最大なものは、10mの6エレ3段スタックの八木アンテナでした。そのような指向性の強いアンテナを日本に向けてもらえたからこそ、室内LWアンテナ×10Wでも交信が成り立ったものと思います。

CQMM DX

CQMM(Manchester  Mineira)DXコンテストは、ブラジル発祥のコンテストで、当初のブラジル国内対象から、南米、アメリカ、ワールドワイドへと対象範囲を拡大してきたコンテストのようです。日本ではパブリシティが少ないため、その存在を知りませんでしたが、HFハイバンドで「TEST MM」が聞こえてきたため、Webで調べて急遽参加することにしました。日本も他のDX局と同じ立場で参加するため、DX局が必ずしも日本にアンテナを向けてくれない場合のベンチマークになると考えたためです。

時刻別のQSO数を下記に示します。合計11局、初日1局、二日目10局でした。計画的に参加の体制を整えていなかったことや、JIDX-CWで交信できなかったDX局を探したという側面もありますが、DX局がアンテナを向けてくれない場合の本来の室内LWアンテナの実力かもしれません。

Rate graph of QSOs by time for the CQMM DX contest.

陸別QSO数の内訳を下記にまとめます。交信できた大陸は、EU(欧州)3局、AS(亜州)2局、OC(大洋州)6局でした。

Breakdown of QSOs by time and continent for the CQMM DX contest.

NA(北米)とは交信できませんでした。アンテナをSA(南米)あるいはEUの方に向けていたのかもしれません。建物の死角になるはずのOC(大洋州)は6局と交信でき、比率が大きくなりました。

バンド別のDXエンティティーを下記にまとめます。この日も10mが好調でした。

DX Entities by band for the CQMM DX contest.

EUは、OH(フィンランド)2局とLZ(ブルガリア)です。やはり、北欧は強く入感します。

OCは、DU(フィリピン)、FK(ニューカレドニア)、KH6(ハワイ)、T8(パラオ)、VK(オーストラリア)と交信できました。太平洋諸島が室内LWアンテナの死角に入らないことが検証できました。

ただし、VKはJIDX-CWと同じくVK6(西オーストラリア州)の局でした。コールサインは異なります。室内LWアンテナからはVKの東側が見えないのか、引き続き検証が必要です。

JARL中央局

室内LWアンテナ+ATUはバンド間を容易にQSYできることが利点の一つです。10mのCQ局探しが一段落して40mにQSYしたところパイルが見えました。DX珍局が40mに出現か?と思って聞いていたところ、JARL中央局JA1RLでした。

「世界アマチュア無線の日」の特別運用を実施していたようです。NYPでは時間切れでJA1RLと交信できなかったため、Up指定のパイルにスプリット運用で果敢に挑戦しました。しかし、3回ほど呼んで諦め、10mのCQMM DXコンテストに戻りました。

パワーは無くとも高速頻繁QSYが身上です。10mと15mの探索を終えて再び40mに戻ってくると、Up指定のパイルは捌け、オンフレでCQを出していました。すかさずコールして交信できました。

ただし、信号は強くなく、DX局と同じくコールサインの再送も必要でした。拙宅から豊島区の方角には建物があります。空は開いているためNA方面のDXには支障がないと思われますが、地表伝搬で交信する場合は障害となる可能性があります。逆に、周囲の建物で散乱されることによって死角になるはずのOC(大洋州)と交信できている可能性も考えられ、前向きに考えれば一概に障害物とは言えません。

JD1(南鳥島

後日、JD1(南鳥島)が17mでUp指定のパイルになっていました。云十年前の開局時に6mで最初に交信したDXがJD1だったため懐かしく、こちらのパイルにも参加しました。5回以上はコールしたと思いますが、10回に到達する前に交信できました。

南鳥島小笠原諸島とは異なりOC(大洋州)に属します。やはり、OC方面は死角にはなっていないようです。

繰り返しになりますが、HFマルチバンドを全天候対応で隈なく迅速に探索できる点が室内LWアンテナ+ATUの利点です。出来るだけ早く珍局を見つけるか、頻繁に戻ってパイルの谷間やQSBの頂上を見つけることが楽しむコツと思います。

 

アパマンハムは、持って生まれた環境という訳ではないのですが、簡単には変えられない住居環境を最大限に享受して楽しみを見つけて行く必要があります。「集合住宅でアマチュア無線局が成立するか」を課題に第二次再開局を模索してきました。HFマルチバンドのCWで少なくとも4大陸のDXは可能であることが分かり、一定の成果は出てきました。ただ、FT8は電波障害が怖く、まだ手が出ません・・・。

室内ロングワイヤーアンテナはSWR1.0の夢を見るか(2)

仮設から永続的架設へ

室内ロングワイヤーアンテナをガムテープで窓のアルミ枠に張り付けて仮設しましたが、2週間程で脱落してしまいました。アルミ枠支柱の表面粗さによって接着力を発揮することが難しいこと、温度変化、結露、紫外線等の環境因子によって接着剤が劣化することが原因と思われます。

そこで、3Mのコマンド™ フック(CMG-SS-CL)によって永続的な架設を試みました。凹凸面には取り付けられないとの仕様でしたが、粘着テープに厚みがあり、アルミ枠支柱の表面粗さ程度でしたら強く接着できました。将来、剥がす際には粘着テープの舌状タブを引き伸ばすことで粘着テープを物理的に塑性変形させて粘着力を弱め、キレイにはがせるとのことです(まだ試していません)。3mmコード用のSSサイズでちょうどアンテナワイヤーを挟み込んで保持でき、テンションを掛けて架設することができました。プラスチックのフック本体も粘着テープも透明なため目立ちません。

Permanent set-up of indoor long wire antenna.

運用実績

交信数

その後、順調にHFマルチバンドでのQSO数を伸ばしています。室内LWアンテナの性能指標の一つとして、QSOの内訳を下記に示します。FT8のQSOを2つ含んでいますが、他はCWです。

AH-705のリレー切換の動作時間が長くSWRも高目になることから、チューニングが最も難しいと思われるバンドは12m(24MHz)です。最近、その12mバンドでもDU3(Philippines)と交信でき、星取表が埋まりました。

交信実績のないバンドは、80m(3.5MHz)と6m(50MHz)を残すのみとなりました。6mはSSBなら聞こえているのですが、CWはまだ聞いたことがありません。80mは強ノイズしか聞こえません。

JAは主に移動局を呼んでいますが、9エリアが残っています。LWに変更してから2エリアは強く入感するようになりましたが、飛騨山脈の先は中間スキップになってしまうようです。無線局数が少ないことも影響しているかもしれません。

問題

しかし、問題が発生しました。FT8の交信数が伸びないことには理由があります。IC-705とPCを接続したところ、送信によってCAT/Audio接続が切断されてしまう現象が多発しました。

また、AH-705にラジアルケーブルを付け忘れて運用したところチューニングできてしまい、その日の最後までラジアルケーブルの付け忘れに気付かないことがありました。別の所をラジアルケーブルの代わりにして回り込みが発生し、コモンモード電流が流れている可能性が高いと思われます。室内で相互に近接して、アンテナワイヤー、ラジアルケーブル、無線機、PCが設置されているため、回り込みが発生する条件が整っているように思われます。

Webを調査すると、IC-705のCAT/Audio接続切断の問題が複数報告されているようです。対策は2つあるようです。1つ目はコモンモード電流の削減、2つ目はIC-705のアース設置です。しかし、コモンモード電流を削減するためには無線機を高周波的にフロートさせるのが基本であり、アース設置は悪手とされているようです。そこで、まずコモンモード電流の削減に取り組みました。

コモンモード電流の測定

RF電流計

見えない敵と戦うのは大変です。そこで、まずコモンモード電流を定量的に測定するためのRF電流計を組み立てました。参考にした文献は下記2点です。

山村著「改訂新版 定本 トロイダル・コア活用百科 」、CQ出版 (2006)

第10章 計測機器

10.3 高周波電流計、pp.404-406

HAM world 2020年11月号、コスミック出版 (2020/9)

片倉著「電波障害とその対策」

第3回 アマチュア無線局のコモンモード徹底対策、pp.106-115

RF電流計は大進無線が頒布販売している「ディジタルRF電流計(高周波電流計)バージョン2 パーツセット」を利用して組み立てました。

大型洗濯ばさみ?の存在感が大きいです。

Distribution parts set of RF current meter.

分割コアは初めからナイロンクランプに接着されていました。配線済みのケーブルに設置できるように、汎用部品として販売されているようです。固定用のナイロン突起部は不要のためカットする例が組立マニュアルに示されていましたが、大型ニッパでも歯が立ちませんでした。見栄えは悪いですが、カットしなくても不都合はありません。

Module assembly of RF current meter.

検波部基板には、ダイオードブリッジによる全波整流回路とRC平滑フィルタが載っています。このパーツセットは数年前に入手しておいたものですが、頒布元のWebページを確認したところ、現行品は表面実装部品になっているようです。リード部品だと芋ハンダで配線することになるため、表面実装部品の方が綺麗に仕上がるのではないかと思います。

大型洗濯ばさみにコアと基板を装着して完成です。

RF current meter completed with core and circuit board mounted on a large clothespin.

検波電圧値から電流値に変換するための校正キットを購入するを忘れました。電流は電圧の約1/10になるようにRF電流計は設計されているとのこと。ただし、電圧が100mV以下になるとダイオードの電圧降下の影響が出て、電流は電圧の1/10よりも若干大きくなるようです。

RF電流の測定

IC-705には下図に示す4本のケーブルが接続しています。ノートPCに接続しているのはDCケーブルだけです。IC-705とPCの間の接続はWiFiです。

RF current measurement points.

IC-705に接続する4本のケーブルの中で、RF電流が最も大きかったのはアンテナ同軸ケーブルでした。同軸ケーブルの外皮がコモンモード電流の帰還経路になっているためと思われます。

以下にRF電流の計測値をまとめます。IC-705の出力は10Wです。電流値は測定電圧の1/10で近似換算しています。

Measured common mode RF current flowing through the outer skin of the coaxial antenna cable.

周波数が低いバンドほどコモンモード電流は大きくなります。周波数が高くなると21MHzで約30mAに収束し、それ以降は減少しません。

コモンモード電流の対策

目標

コモンモード電流は「見える化」できたのですが、対策の要否を検討するためには目標値が必要です。上記HAM world誌の寄稿記事に以下の目安が載っていました。

  • 20mA以上 対策必要
  • 20~5mA  状況により判断
  •   5mA以下 対策不要

現行の無線システムでは全てのバンドで20mA以上になるため、対策が必要との結論になります。

対策

RF電流計と同時に大進無線から購入しておいたコモンモード・フィルタ (フロート・バラン)DCF-RF-40LLQE自作部品セットを組み立てて、IC-705とAH-705の間のアンテナ同軸ケーブルに挿入することにしました。

Common mode filter (float balun) DCF-RF-40LLQE self-made parts set.

DCF-RF-40LLQEの特徴は以下となっています。

  • HF帯無線機ハイパワー500W対応のコモンモードフィルター
  • 大型コアの採用、耐熱同軸 2.5D-QEVを使用し、高性能、高耐圧、低価格を実現
  • 特にHFミッドバンドの特性が良く、1.8~50MHz帯用におすすめ

2つのコア(E04RJ402715)に同軸ケーブルを各13回巻き、コネクタを付ければ完成です。IC705に合わせてコネクタはBNCにしました。

Common mode filter (float balun) DCF-RF-40LLQE assembly with BNC connectors.

コア相互でキャンセル巻きになっていると思いますが、巻き方は特殊です。コアから脱出する同軸が相互に近接しないように、オフセットを持たせることを狙いとした巻き方設計になっていると思われます。

対策後のRF電流の計測値を以下にまとめます。15mと10mは測定電圧が小さくなり過ぎたため、山村OMの書籍の校正カーブを参考にRF電流換算値(*)を修正しています。

Measured common mode RF current flowing through the outer skin of the coaxial antenna cable after countermeasures.

全てのバンドで20mA以下になり、目標を達成しました。80mと6mを除いて5mA以下も達成しました。80mと6mの減衰が小さい結果はフィルタの仕様通りです。

同軸ケーブル以外のケーブルもクランプ式のフェライトコアを用いて対策を行いました。フェライトコアの挿入位置と、40mバンド10Wの結果を下記にまとめます。

Ferrite core insertion position.

Measured common mode RF current flowing through each cable after ferrite core insertion.

全て20mA以下を達成しました。(4)のIC-705用DCケーブルのRF電流が14mAと高目のため、追加対策が必要かもしれません。試しに(6)のACタップに装着したクランプコアを2個に増やしてみましたが効果はありませんでした。

CAT/Audio接続切断防止の効果

インターフェアのリスクは低減できたと思います。しかし残念ながら、CAT/Audio接続切断は相変わらず発生しています。コモンモード電流が原因ではなかったのでしょうか。

WiFi接続の対策

IC-705とノートPCは、宅内リモート運用の免許を得てWiFiで接続しています。ノートPCの内部にコモンモード電流が発生している可能性を切り分けるため、デスクトップPCへの接続テストも行いましたがCAT/Audio接続切断は発生しました。

IC-705はLANの子機にも親機にもなれるため、親機にしてノートPCにWiFiルータ無しで直接接続してみましたがCAT/Audio接続切断は発生しました。子機の場合はPCの接続ソフトで接続し直せば良いのですが、親機の場合はIC-705の再立ち上げが必要になり却って重症です。

CAT/Audio接続切断の原因はPC側やWiFiルータ側ではなく、IC-705の側にあるとの感触です。CAT接続はクリティカルな制御通信として、パケットロス回数の判定しきい値が小さく設定されているのではないかと想像されます。切断したら手動で再接続することになるため、ソフトウェアで粘り強くパケットを再送したり再接続をするようにしてほしいと願うのですが的外れでしょうか。CAT切断によって送信垂れ流しになることもあります。送信遮断のフェールセーフも必要かと思います。

残る対策オプションは、USB有線接続と、保安アース接続の2点です。どちらも、無線機をフロートさせるためにコモンモード電流遮断のコア挿入は必要になるかと思います。