フォローアップ情報の調査
13TR-FT8トランシーバの頒布開始から時間が経過したため、製作実績が蓄積され、情報が更新されている可能性があると考えました。そこで、13TR-FT8トランシーバ を頒布して頂いたJL1KRA局OMの「CRkits共同購入プロジェクト」ホームページにてフォローアップ情報を調査しました。
ホームページから辿った「新QRP Plaza掲示板」の2021年10月05日(https://bbs7.sekkaku.net/bbs/qrp/page=61)に重要なフォローアップ情報がありました。下記に引用させて頂きます。
「組み立て時ファイナルに使うトランジスタはhfeを揃えてくださいとの追加アドバイスがありました。まだ製作されていない方は性能アップのためにお願いします。」
ホームページの方にも反映されていました。
「まずはじめにファイナル用に使うトランジスターのhfe選定を行ってください。
5%以内に揃えます。」
回路図にも次の図面指示が開発元により付加されたようです。
"Q11-Q13 hFE matched to 5%"
トランジスタの選別
既に局部発振器に2個のTr(2N4401)を消費してしまいましたが、残り11個のTrの選別を行いたいと思います。
BJT(Bipolar Junction Transistor)に対して手持ちのテスタTC1で測定できる項目は、hFE(DC Current Gain)、Vbe(Base-Emitter Voltage)、Ic(Collector Current)の3つになります。3並列で使用するファイナルトランジスタでクリティカルな項目はスイッチング特性(Delay Time等)と思うのですが、いずれにせよ測れないので気にしないことにして、図面指示通りhFEで選別します。
DAY-1
測定は以下の手順をTr個体毎に繰り返します。
- TC1テスタのZIF(Zero Insertion Force)ソケットにTr取り付け
- StartボタンをプッシュしてON
- 項目値の読み取りと転記
- Startボタンを長押ししてOFF
測定結果は下記の通りでした。(中抜きの赤丸3個はファイナルに選別したTr個体ですが、その経緯を順番に説明します。)
TC1テスタは、Icを6.2mAに制御して、その時のVbeとhFEを測定しているようです。hFEのMin-Maxは288-433となり、(Max - Min)/(Max + Min)/2 = 10% となります。図面指示5%を遵守するためには選別が必要になります。
測定値を見ると、Tr個体ごとに異なる値が得られていますが、同じ値が複数のTr個体に対して出現しています。ADCの量子化値が測定精度を決めていて、1bitズレれば測定値が大きくズレる心配があります。
代表個体を選んで繰り返し測定精度を検証しました。上記表のTr個体番号11番を代表として10回繰り返し測定した結果を下記に示します。
初回測定値と同じhFE=433が7回出現し、値が1だけ大きなhFE=434が2回出現しました。1bitのズレが大きな値になる訳ではなさそうだということが分かりました。
一方、値が大幅に小さくなったhFE=393が1回出現してしまいました。平均値に対して8.43%の乖離があります。これでは、1回の測定で5%の選別を行うことはできません。
DAY-2
同じTr個体のhFEの大きな乖離の原因として、最初はZIFソケットへのTrの装着ミス等を疑いました。そこで、翌日に同じTr個体(11番)の再測定を行うと、期待に反してhFE=393が連発しました。TC1テスタの測定誤差なのか、Trの動作揺らぎなのかは不明です。
1回の測定で選別を行うことは危険であることが分かりました。そこで、各個体3回の測定を積み増ししました。
前日と比べると少し変動がありますが、翌日の3回の測定試行の間ではhFEは安定しています。Vbeは前日より高くなっています。前日は晴天、翌日は雨天、気温は少し低く湿度は高くなっていると思います。トランジスタの物性を変動させるほどではないと思いますが・・・。
Trの用途別の回路への割付
合計4回の前日と翌日の測定試行において、安定してhFE最高値433を記録したTrが3個(中抜きの赤丸の4番、7番、10番)あります。これらを3並列ファイナル用Trとしました。
他は自己バイアス回路に用いるならhFEが安定でなくても良い?等を考慮して、自己満足的に以下のように割り付けました。